魔石
「魔石を媒体にすれば、俺でも魔法が使えるんですよね。」
「ん?ああ、そうじゃな。魔石は石自体に魔力がこもっておるから、魔力を持っていないお主でも使えんことはなじゃろう。」
こちらにきてからはや2週間。魔導学院にいながら、一切魔法が使えないことに落胆していた俺であったが、思い返せば魔石という便利グッズがあったではないか。という発想のもと、クローシェンに確認をとってみたところである。
ただ、クローシェンは助手たちとともに『生物を含まない物体の転移を安定化させる。』という研究の真っ最中だったことから、あまり相手にはしてもらえない。
ウェーベルもこちらの世界の解説をしてくれてからよく話をするのだが、ここ数日は「すみません。ちょっと最近忙しいので……」とこちらもあまり相手にしてくれない。
魔法が使えないので仕方ないことだが、一人だけ蚊帳の外にされている気分で、あまり良い気にはならなかったのだ。
「クローシェンさん。その、魔石に興味があるんですが……」
「すまぬの。あまり時間をとってもやれんのじゃ。忙しくてのう……」
流石に申し訳なくなってきたのか、蚊帳の外生活3日目あたりからクローシェンもこのような応答をするようになった。それまでは「実験中じゃ。待っておれ。」だったり「防御魔法が展開できないのは危険だから、実験室の外におってくれ。」など、思いっきりお邪魔虫扱いだったので、これでも進歩したのだろう。
クローシェンがふと、何かに気づいたようにこっちを向き
「そうじゃ。図書館に行くといい。わしがいうことも本に書いてあることも大して変わらんだろう。」
教鞭取ってる奴がそんな調子で大丈夫なのだろうか………とりあえず、図書館に行ってみるか。
研究室から歩いて10分ほどで図書館についた。魔法が使える奴なら飛行魔法を使ってもっと早くいけるのだが、今は仕方ない。
ウェーベルに学内の紹介をしてもらったときはなんの事情か閉まっていたため図書館に入るのは初めてだ。
期待を抱きながら入ってみると、予想以上の広さだった。むちゃくちゃ広い。外から見たらもっと狭そうに見えるのに、中に入ってみたら意外と広い、なんてことは以前からたまにあったが、流石にこれは予想が外れすぎている。
あたりを見回していると、図書館の従業員らしい風貌をした女性を見つけたので、彼女に聞いてみよう。
「すみません。ここってどれくらいの広さなんですか?外から見たらそんなに広くなさそうだったので。」
「空間魔法だよ。あなた、魔導学院にいるのに空間魔法の類を見るのが初めてってことはないだでしょう?」
あはは、そうですね!っと適当に受け流した。ここで下手に返事をして、直感が、魔力がこれっきしもないってことがバレることはまずいと警鐘を鳴らしていたからだ。
「と、ところで、魔石に関する分野の本ってどこら辺にありますか?」
「魔石?突き当たりを左に入って5つ目の本棚だよ。19番の本棚だからね。」
「ありがとうございます。」
指示された場所には魔石に関する蔵書が沢山ある。とりあえず入門編っぽいものを片っ端から読み漁ってみることにした。
丸一日使って、魔石の種類について懇切丁寧に書かれているものから、魔石を活用した魔法の応用まで書かれているものまで読み漁ろうとしたのだが、流石に結構な量だったため、1日では読みきれず、基本的ものを数冊、借りていくことにした。
借りてきた本は誰でもわかるように書かれていたため、俺でも結構わかったし、わかるからこそ楽しくも読めた。
魔石はその名前の通り、魔力のこもった石だ。大きさや品質によって含む魔力量に差があるが、魔法自体と違って魔石には火や水といった種類はない。魔石は地中の魔力を長い期間をかけて吸った石がなるのだとか。土地全体の魔力量が一定以上に多くないと魔石は発生しないらしい。
魔力を自らの代わりに供給するものなので、基本的には手に乗せた状態で呪文を唱えるなどして魔法を使ったり、魔法陣に触れると魔法が発生するという特性を応用して火を起こしてコンロのように使ったり、水を発生させて水道のように使うことが多い。学院内でもこの手の魔道具はよくみかけた。
また、魔石は鉱物の一種らしく、魔石も産地があるのだとか。発掘の際に出てくる削りカスのようなものを魔粉というらしく、魔石も魔粉も衝撃を加えると爆発するのだが、魔粉の方が圧倒的にその威力は上らしい。粉塵爆発的な何かがあるのだろうか。
ただ、魔粉は魔石と違って魔力の供給元としては有能ではない上、そこまで強い衝撃でなくても爆発するようなデリケートで危険な物質だ。そのため、一般的には使われなく、その多くが廃棄させてしまうらしい。日本人としては『もったいない』と言いたくなってしまう。何かいい活用方法でも見つけて、一儲けできないだろうか。
とりあえず、魔石の基本はこんな感じだろう。後は学園の近くにあるクローシェンの家で貸してもらった自分の部屋でゆっくり読むとしよう。
家に帰ったら夕食を作らなければ。一人暮らしだった大家は全く料理ができないため、自分が作らなければいけない。………あのジジイはどうやって今まで生きてきたんだか………
次の話でようやく近代兵器っぽい要素が少しだけ出てきます。
設定がごちゃごちゃしがちかもしれないので、そのうち設定集を出すかもです。




