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残念なお知らせと残念な改良

少し遅れました

すみません…

「ショウくん。残念な知らせがある。」


 最近、最も尊敬する人間の一人となったコルバルに突然呼び出され、彼の研究室に向かうなりそう言われた俺は、少し混乱している。


「えっと、その残念な知らせとはなんですか?」


「うむ。君の持っているその短杖、私の発明品である魔石短杖だが、もう一本作って自分なりに研究してみたんだ。どのようにすればショウくんがより効果的に使えるかをね。」


「はい。それで……?」


「それでだ。やけに発動できる魔法の威力が低いと思ったんだ。いろいろ考えた上で検証してみたんだが、残念ながら当たってしまっていたんだよ。」


「その仮説だが、それは『魔石のカット方法でどんなに魔力還元率をあげても、魔法陣を介さずに使う魔法では、魔石の力を十分に発揮できない』というものなんだ。」


「そ、そうですか……」


 コルバルから伝えられた内容、それは事実上の『魔導士にはなれません宣言』だった。


 正直結構ショックだ。せっかく杖の先から熱を放出できるまでにはなったのに、そこから先はそんなに頑張っても進展はないというわけだ。


 まあ、史上初の挑戦をしているということは、こういったこともあるのだろうとは思っていた。ショックだが、こうなってしまえば仕方がない。なんといってもメインの武器となる銃は既に完成したのだ。銃剣でもつけて近接戦闘に対応できるようになればいい。ただ、銃剣を使うにしてもうまく使えるようになるためには相手が必要になるわけだが。


 そういえば、銃剣作ってなかったな……今度作ろう…


「わかりました。まあ、人類初の挑戦でしたから。できないという結果だけでも十分な収穫ですよ。」


 一応こう言うと、コルバルはそれまでの残念至極といった顔から、救われたような顔になった。


「ありがとう。君からそういってもらえると救われた気分になるよ。実験への協力も、とても感謝しているよ。」


 彼は微笑んで実験協力への感謝を伝えてくる。


「こちらも、ちょっとでも魔法に近いことができてよかったです。ところで、魔法がダメなら近接戦闘ができる方がいいと考えたのですが、剣術関係で誰か知り合いはいませんか?」


 少し考えた後、彼は口を開く。


「いるにいるが、皆この街から離れた場所だね……まあ、思い出してみるから、少し時間をくれるかな?」


「はい。ありがとうございます。」


 魔法は使えなくなってしまったが、代わりのことを始めることに決めた俺は、コルバルの研究室から出た。まあ、これからまだやりようはいくらでもある。ゆっくり考えようじゃないか。



 物質加工研究室に向かう。最近は暇があればここでモシン・ナガン用の弾薬作りをしている。以前は完全にローベルト達か、カトレアに頼りっきりだったが、魔法は使えなくとも魔道具は使えるため、自分の手で作れるように練習したのだ。まだまだ物質加工研究室のメンバー達の腕には到底及ばないが、それでも使える程度のものは作れるようになった。


「だいぶ上達してきたじゃないか。お前やっぱり魔道具加工のセンスあるぞ。」


「へへっ、ありがとうございます。」


 ローベルトは最近、俺の加工技術の上達スピードを見てよく褒めてくれる。あまり図に乗るのはよろしくないのだが、自分でも魔道具の製作に関してはセンスがあると思っている。


「もう嫌だぁぁぁ!!」


 ローブがボロボロになった状態でカールが部屋に飛び込んできた。手にはバラバラになったモシン・ナガンが。この前ローベルトから渡されたカール用のものだ。


「どうした?」


「銃弾に爆炎魔法と加速魔法を施したんだよ!それで発射したら銃本体ごと爆発してこんなになっちゃったんだよ!!」


 涙ながらにそう言われる。


「そのタイミングでかけたんだ?」


「えっと……加速魔法は魔法陣を銃身内に書き入れて、爆炎魔法は元から仕組んでおいたんだ。」


「爆炎魔法の方の発動条件は?」


「一定以上の衝撃。着弾した時に爆発するようにしたんだ。」


「他にその魔法を施した弾薬は残っているか?」


「うん。」


 そうして彼は、未使用の弾薬を差し出した。


 ………そりゃ爆発するわ………


「どうしたの?」


「いや、この魔法、なんで薬莢側にかけてるんだよ……」


「え、薬莢?弾丸となんか違うことあるの?」


 そう。彼は知らなかったのだ。弾薬の構造とその役割を。


 彼は薬莢に魔法を施したほうが、大きいため成功率が高いと考え、実際にそこに発動条件を一定以上の衝撃として爆炎魔法をかけたわけだが、薬莢には撃針が触れた際に魔分が爆発するため、強い衝撃がかかる。その衝撃で魔法が発動し、大爆発を起こしてしまったのだ。


 さらに、彼の魔法の能力は非常に高いものだったため、かけた爆炎魔法も大出力だった故に、結果的にモシン・ナガンが木っ端微塵になるほどの大爆発を起こしてしまった。もしモシン・ナガンがない状態でこの事故が起きていたら、彼は死んでいただろう。


 まさかカールが銃をこんなにも使いたがるとは思わなかったので、そこまで色々教えていなかったのだが……


 「これは……カールにも銃について色々教えないとまずいかなぁ……」


 俺はそう呟くのであった。


 だが、モシン・ナガン自体には強化魔法をかけていたはず……そんな簡単に吹っ飛ぶものなのか……?

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