編入試験(2)
諸用で更新が遅れました。すみません。
「あなたの発明品は、魔法に関連する機能を使っていますか?」
「魔粉を関連品とするなら、使っています。」
モーゼス右手の魔道具が青く光る。試験官は納得した様子で頷く。
「分かりました。次に、あなたの発明品は、どのような用途で使われることを想定しますか?」
!!
これはまずい。本当のことを言うと絶対に一番右にいる軍人が興味を持ってしまう。だが嘘を言えば……すぐにわかってしまうだろう……
どうする?何かいい言い逃れ方は……
「どうしましたか?何か言いにくいことでも?」
「い、いえ!はは……これは、その、効果的な利用法があります。例えば、道が塞がっている時、塞いでいるものを破壊して通るためにこれを投げ入れれば爆発で塞いでいるものは吹っ飛びます……」
魔道具は黄色く光る。なんで!?別に嘘ではないじゃないか!
「他にもありますね?黄色は隠し事をしている時に出るんです。別に人を殺してしまう能力を持っていようが、我々は憲兵ではないので取り締まったりはしませんよ?」
「え、ええ……まあ、自衛のための実力って言いましょうか。非常時に自分の身を守るための防衛措置として敵に投げれば効果が得られる、というか……」
俺が使った言い訳は、自衛隊と同じものだ。戦力ではなく実力、非常時にのみ使える防衛能力として作られたといえば、ある程度言い訳が効くだろう。
「つまり殺傷能力があると言うことですね。」
「は……はい………」
殺傷能力と言われて仕舞えばそれでおしまいだ。嘘をつけばすぐわかってしまうし、もう言い訳のしようがない。あーあ、だめだこりゃ。
「分かりました。次に、あなたはなぜ、ここで学びたいと考えたのですか?」
「世界中どこを見ても存在しなく、あったら便利だと思うものがたくさんあって、それを実現したく思っています。しかし、それをするためには高い魔法技術や物体の加工能力が必要になり、計画を形にすることが、他の場所では不可能だと思ったからです。」
「分かりました。」
その他にもいろいろなことを聞かれ、無事…とは言えないが、口頭試問は終わった。終始レイセスの目がこちらを貫いていたことは言うまでもない。
「では次に、実技試験を始めます。」
メンバーはそのまま、屋外の運動場にやってきた。他にも何人かが屋外で試験を受けている。皆魔石ではなく、直接自分の魔力で魔法を使っている。皆いかにして高い出力を出すかで争っている感じがする。
「ではイジェーラさん。あなたの魔道具は攻撃型で、射程は30メートルほどで構いませんね?」
「はい。」
「では、あなたの魔道具を使用して、3分以内にあちらの的を破壊してください。……用意…………始め!」
初めの合図とともに破壊を始める。おそらく的までの距離は40メートルくらい。こちらの提示した射程より長いのは試されているのだろう。
最初の数発は手前で爆発。狙いを定めてもう一度。体力測定のソフトボール投げのイメージで投げていく。
30個は用意していたが、連投していたら開始1分で既に半分を使ってしまった。外れた分だけ的の周りの土がえぐれている。まあ、これだけでも威力の証明にはなるだろう。
もう完全に武器と見做されてしまった以上、躊躇はない。
ふと審査員の方を向くと、着弾して爆発するごとに驚くローブ姿の3人と、実に興味深そうに見ている軍人の姿がある。
狙いを定める。ピンを抜き、投擲!
放物線を描きながら、的に吸い込まれるように手榴弾は飛んでいく。
凄まじい爆発音とともに的が砕け散る。
「や、やめ!」
少々引き気味に試験終了の合図を出すモーゼス。
「的の破壊を確認しました。実技試験の結果は、試験終了後、我々4人による話し合いの結果で判断されます。試験結果は2週間後に通知します。試験結果の通知をスムーズに行うため、それまではクライス市から長期間離れることのないようにお願いします。」
「分かりました。」
「イジェーラさん、お疲れ様でした。」
「ありがとうございました。」
試験終了。とりあえず自分ではいい結果に終わったと考えている。緊張からか普段より疲れた。さっさと帰って今日は休もう。
帰るための支度を終え、歩き出すと
「イジェーラくん。話がある。」
そう。レイセスだ。
「君、技官として軍に入るつもりはないかね?その魔道具の技術があれば、給与は弾むだろうし、我が王国軍も強化される。」
「は、はぁ……」
困惑した雰囲気を出しておく。
「それに君、あのイジェーラ退役技術大佐のお孫さんだろう?推薦書にはコルバル退役技術中佐の名前もある。君なら軍内部でもいい人脈が作れるはずだ。」
イジェーラ退役技術大佐?それに、コルバル退役技術中佐?
理解が追いつかない。どういうことだ?
「イジェーラ大佐やコルバル中佐は素晴らしい人だった。なぜ退役してしまったのだろうか……で、どうだい?」
「え、えぇと……」
「やめんか(やめなさい)!レイセス!」
聞き覚えのある声。だが、いつもと違ってものすごい気迫を伴っている。
「全く……目を離せばこれだ……軍部は我々と我々に近しい人間には我々の許可なく関わらないと決めたはずだ。取り決めを反故にする気かね。レイセス大尉?」
声の主はクローシェンにコルバルだった。
気に入っていただければブックマーク、評価お願いします。励みになります。




