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閑話 イジェーラ・コルバル定例会議 その1

 わしの名前はクローシェン=イジェーラ。クライス魔導学院で召喚魔法の研究をしておる。これでも、召喚魔法界隈では結構著名な学者として知られておる。


 今日はわしの学生時代からの長い付き合い、腐れ縁とでもいうか。そんなもう一人の老人との定例会議を行うため、いつもの会議場所『カフェ・イレアン』にきている。


 わしらは雨の日以外、いつもテラス席に座るようにしている。そのほうが気分がいい。


 あの老人バカは毎度数分遅れてくるので、自分は先に茶を頼んで飲んでいる。何気にこの一人の時間が好きでもあるんじゃがな。


 そういえば、この『茶』という飲み物、今では我々の主な飲み物として人々に愛されているが、実はこの地域が原産ではない。400年ほど前に遥か東方のある国から商人が持ってきたらしい。また、最近は『コーヒー』なる黒い飲み物も流行っているが、何か不吉な感じのする色なので、わしは好まん。


「やあ。クローシェン。」


 いつもの通り遅刻してきた。今は午後1時12分。今日は12分遅刻か。まあ、少しだからいいかの。


「毎度毎度遅れよって……研究の時だけは1時間も前に来るくせに。お主はいつもそうじゃったのう。モリス。」


 そう、目の前にいる老人とは、10年ほど前から『魔石の権威』とかいわれて調子に乗っているダメ人間、モリス=コルバルである。


「相手がわしだから遅れても大丈夫だが、ショウは元いた世界のマナーで1分でも遅れたら相手に謝罪するそうじゃよ?少しは見習え」


 嫌味そうに言っておこうかのう。


「ハッハッハ!それはすまなかったな。彼と会うときには遅れないように留意しておこう。」


 だいたいいつもこのような調子で会話が始まる。


「おい君。コーヒーを1つ。」


 モリスは店員に向かって明るい声でそう注文する。此奴は新しいものが好きだ。だからこうして最近はずっとコーヒーを飲んでいる。


「さて、今日は何を話すかね。」


「きまっとるわい。そんなの」


「「ショウ=ヒラオカについて」」


 だろうな!と言って二人で笑う。


「彼には驚かされてばかりだ。魔力がゼロの人間なんて初めて見たよ。それにあの武器。設計図を見せてもらったときには武器嫌いの私でも息を呑んだね。」


「ほっほっほ!召喚して正解じゃったかのう?」


「彼が召喚されたのは偶然だろう?」


 その通りである。彼にはなんでもお見通しなのだ。これがわしとあやつの違いなんじゃろうなぁ。


「そういえば彼、魔導学院の編入試験を受けるそうではないか。」


 そうじゃったな。推薦書の一つでも書いてやるか。


「我々で推薦書を書かんか?絶対受かるぞ。」


 ニヤニヤしながらこっちを見ている。悪い顔だ。


「ふん。わしはコネが嫌いじゃよ。」


「なんだ。愛弟子に対して推薦書も書いてやらんのか?入学してからも推薦書は重宝するだろうに。」


「わしの愛弟子は一人!ウェーべルだけ………いや、ショウもじゃのう………」


 ショウの場合は愛弟子というよりは家族なんじゃがな。


 実際、奴が来てからわしは家での生活が楽しくなった。彼が来る以前は、21で結婚して35年間連れ添った妻を亡くした13年前から家の中では時が止まっていたような感覚じゃったからな。あやつが来たおかげで時が進み始めた。


 子供も2人いたんじゃが、一人は事故で7歳の時に、もう一人は戦争で亡くなってしまった。


「どうした、クローシェン?」


「いや、なんてことはない。帰ったらショウに何を夕飯に作ってもらうか考えていたんじゃ。」


「それはいいな。私もぜひご馳走になりたいものだ。」


「お主は先に家の掃除をせい!」


 この後、2人の老人は夕方になるまで話し込んで、最大の友と別れたのである。


 さて、家に帰ったら推薦書に何書くか、決めるとするかのぅ………

クローシェンとコルバルの過去について、閑話で触れていこうと考えています。


二人の過去についての話が終わったらまた別の登場人物の過去についても触れようと思っています。

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