カールの煽りと手榴弾
神聖ローマ皇帝だったり、スペイン王だったりしそうな名前をもつ貴族の長男の少年、カールことカール=アル=ヴェライスは、自分に惚れている。
「ショウは魔法が使えないなんて、かわいそうだね〜あ〜かわいそ〜」
「煽るために研究会に入ったなら、即刻やめてもらうぞ?」
「魔法が使えない方がいけないんじゃないかぁ」
俺、ショウ=ヒラオカは今、カールに………煽られている。
初めのうちは流していたが、散発的な煽りが始まって既に1時間が経つ。それも俺が魔法を全く使えないと知った4日前から毎日のように続いている。あまりのクソガキ加減に流石に腹が立ってきた。
「なんなら、ぼ・く・が、魔法の指導をしてあげてもいいんだよ〜?僕は魔法が超〜上手に使えるから!」
『ふざけるな!クソガキ!大口叩いてるくせに実際の実力はそうでもないんだろ!バーカ!!』
とでも言ってやりたいところだが、このような反応をしたらこちらもクソガキになってしまう。さらに彼の実力は本物なのがまた腹立たしい。驚くべきことに彼は魔法において、所属する学年である1年生で第2位なのである。これは色々なところで耳にすることなのでおそらく間違っていない。しかし、2位のクソガキと対照的に、1位の情報は全く耳にしない。どういうことなのだろうか。
「僕とは違って魔法が使えn」
「いい加減にしないとコルバルに言いつけるぞ?怒りを買いたくなれば魔法より先に年上への礼儀を学ぶんだな!」
ヒィッ!と怯えた声を出すガキ。そう、彼の天敵は彼の研究室の教授、モリス=コルバルなのだ。
研究以外だとダメ人間を極めている彼からは想像がつかないが、彼、魔石の権威であると同時に超強力な魔導士なのだそうだ。俺はそんな人間に直接魔法を教わっているのである。なんと豪華な。
……まあ、使えないものは使えないんですけどね……
「カールくん、いい加減にしなよ……」
「う……ご、ごめん……」
カトレアからの批判で一気に冷めるカール。こいつ、やたらとカトレアには弱いんだよなぁ……なんか弱みでも握られてんのか?
ガキが黙ったことだし、自分の目の前の状況を説明しよう。
まず、今目の前にあるのは、ローベルトらに作ってもらった上部がカットされた長球状の薄い鉄板大小1つずつと、それの蓋、魔粉、片方の尖った細い鉄の棒だ。
これらを使って、手榴弾を作ろうと考えている。
魔粉の衝撃を与えると大爆発を起こすという性質を最大限に利用したものである。
安全ピンで鉄の棒を固定しておき、外すと小さい方の球の中で棒が自由に移動できるようになる。
着弾の衝撃で鉄の棒が内側の球を貫き、外側の球にパンパンに詰まっている魔粉に結構な勢いで当たるようにする。そうすると棒と魔粉の衝突した勢いで魔分に着火し、手榴弾が爆発するというメカニズムを考えている。
球は3種類の厚さが用意されている。
自分の考えた通りに部品を組み上げていく。結構苦労して組んでいくとこになるであろうと考えていたが、ローベルトたちの一級レベルの加工技術によって正確に成形された鉄板は、まるでアタリの組み合わせのパズルのように綺麗にはまっていく。彼らの加工技術には感服してしまう。
さて30分ほどで3種類全てのタイプを組み終えた。あとは屋外で実験をしよう。実戦では釘をさらに内蔵して殺傷力を高めようと考えているが、今入れてもただ危険なだけなので、今回は入れていない。
まず1つ目。一番薄いやつだ。
結果から言うと、こいつが一番完成品に近かった。地球の人間が考えるであろう手榴弾の姿そのものだった。
2つ目。薄くもなく、厚くもないやつである。
こいつも爆発したのだが、少し爆発が小さい。おそらく外壁が厚すぎるのだろう。
3つ目。3つの中で一番壁が厚いパターンだが、こいつはまず内壁が厚すぎて着火しなかった。論外だ。
結果的に1つ目の試作品を採用して、改良していくことにしよう。
次に、この実験を一緒に見ていた研究会2人の反応である。
まずカトレア
「魔法が使えない人もこれだけの殺傷能力があるものが使えると言うことを考えればすごいと思うけど………これに関しては、魔法の方が射程も威力も上かな」
と苦笑い。これに関しては魔法の方が上なのはなんとなく予想がついていたため、特にこれといった衝撃はないが、こう直接いわれるとやはり何かくるものがある。
次にカール
「こんなもの必要ないじゃん!魔法が使えない連中なりにがんばりましたみたいな感じだけど、魔法に勝てるわけないよ!」
と腹を抱えて笑いながらこっちを煽っている。いちいちムカつくガキだ。手榴弾投げつけてやろうか。
それぞれの反応を見ていると、カトレアが
「ショウくん。これを使って魔導学院入れば?イジェーラ博士とか、コルバル博士の推薦も入れれば多分魔道具枠で編入って形で入れると思うけど。」
ここ、魔導学院は魔法枠と魔道具枠という2つの入学枠、いわばコースがある。入学してしまえばそこから先は違いはないのだが、これはある代の学長が、魔法が使える者しか魔法という学問に触れられないのはおかしいと言ったことで、『魔道具を作れて、魔法学を学ぶ意欲のある生徒を入学できるようにしよう』と考えられた制度である。
正式にここの学生となれれば、この世界での学歴は保証される。そして学歴がつくことである程度身元が保証される。こんなに嬉しいことはない。さらに、ローブが着れていかにも魔法使いっぽい!
「それいいかもな。クローシェンに相談してみるわ。」
こうして、編入試験を受ける運びとなったのだ。
いい感じのサブタイトルが思いつかなかった……




