物質加工研究室 (2)
「使う素材は強化魔法付与の鉄でいいか?」
「はい。」
「ここは木材で、こっちはどうする?」
「そこも鉄でお願いします。」
ローベルトは俺に、材質やパーツ、詳しい構造、それに必要な時間と費用など、細かい事項のすり合わせを行なっている。
「加工自体はそこまで時間がかかるわけではなさそうだな。溶かしても津kルえそうだから、この研究室にある鉄板の廃材を使っても十分いけるだろう。」
本当はアサルトライフルのように連射できるようにしたかったのだが、連射をするための機構がよくわからなかった上に、現状では弾薬も量産できるわけではないため、諦めた。
金属の加工技術は非常に高いことが分かったので、初めは再装填の手間がかかるが低い金属加工技術でも制作可能な前装式を想定していたが、後装式でも大丈夫そうだ。装填の手間が省ける。
「ローベルト先輩、ショウさん。仕上がりましたよ。私の家で買っている鳥の模型です。」
シルビアさんが手に鶯のような未塗装の鳥の模型を乗せてやってきた。
細部まで作り込まれていて、塗装した上で遠目から見れば本物と見間違えてしまいそうだ。羽の一本一本まで作り込まれていることが完成度の高さを窺わせる。
「す、すごいですね。毛並みまで再現できるなんて。」
驚きながらそう感想を述べると
「ありがとうございます。実はそこ、結構頑張ったんです。」
ここまでの精度なら、意外と簡単な構造をしている銃器なら、完璧に作れそうだ。
その後、シルビアさんが金型の作成に協力してくれることが決定し、シルビア、ローベルト、俺の3人で深く語りあった。ウェーベルがずっとぼーっとしていて申し訳なかったので、後で何かお返しをしよう。
「じゃあ、要綱がまとまったので、後日、正式な設計図面を持ってきますね。」
「わかった。そういえば、うちの研究室に一人、物理と魔法を組み合わせ方によってより強力な威力を発揮できる武器を作ろうとしている2年がいるんだが、今度会ってみるか?ちょうど今は買い出しに行っていていないんだ。あぁ、そろそろ帰ってくるかもしれん。」
「じゃあ………」
待とうとローベルトに伝えようとしたその時、目的の人物が帰ってきた。
「ただいま帰りました。」
その声にふと扉の方を向くと、そこには明るめの茶髪を持ったショートカットの女子生徒が立っていた。
「「えっ……………?」」
「あなた、この前助けてくれた人……ですよね?」
「あ、やっぱり、あの時の人でしたか……」
そう、そこにいたのは、街歩きをしたときにひったくりに遭っていたあの女子生徒、その人である。
「ここの魔分が衝撃で爆発して、筒を通って高速で目標に到達……すごい威力ですね!これだったら騎士様の鎧くらい簡単に貫通しちゃうんじゃないですか?」
この人、カトレアと言ったか……大まかな設計図を見ただけでどこまでの貫通力があるってわかるのは凄すぎなのでは?
「私は今まで、筒から金属を発射するなんて発想には至らなかったので、ずっと弓の強化にこだわってました……すごいです……」
この世界の武器ではないので、気づかなくて当然です。はい。
「いやぁ、まさか二人が既に知り合いだったとはな。だったら簡単だ。目的が同じなら、共同で研究したらどうだ?なんなら、興味ある人を集めて研究会を作ってもいいと思うが。」
人様の研究室からそんな簡単に引き抜いてしまっていいのだろうか。
「流石に、他の研究室から引き抜くなんて気が引けますよ……」
「ん?うちは研究室ではないぞ?うちは研究会だ。よくみろ。研究室なら活動中に教授がいないわけないのに、ここには教授がいないじゃないか。」
そういえばそうだ。大学とはだいぶ違う制度だが、この学校の研究室は教授が主催して開催して、その助手を生徒が務める形であり、活動する際は必ず教授がいなければいけないのだ。
ローベルトの話を聞くと、ここは研究『会』といって、部活やサークルに近い感じだそうだ。あくまで学生主体の活動であり、特に教授がいる必要もないというものだ。その代わり、管理や責任は全て学生の中で決められた代表が追うことになり、その任についているのがローベルトというわけだ。
「そうだったんですか。でも、研究『室』に研究『会』ってややこしい名前ですね。」
「ハッハッハ!確かにそうだな。あえて研究会って名乗ってない団体もあるくらいだから、みんなそう思っているんだろうな!」
「で、どうだ、ショウ。共同研究は。」
「カトレアさんがそれを望むなら、私としては一向に構いません。」
俺はカトレアさんに目をむけ、判断を仰ぐ
「私は、この『銃』ができるところ、見てみたいです。」
こうして、とても可愛い共同研究者ができたのである。惚れないように注意せねば。




