物質加工研究室(1)
昨日、ウェーベルからの知らせを聞いた俺は早速今日、俺は金属加工について話し合いをするため、彼を伴って金属加工の研究室へ向かっている。一般的に研究室は研究棟にあるのだが、この研究室はなぜか研究棟ではなく、学生棟にあるらしい。
「ここですね。」
ウェーベルが指差した部屋の上には『物質加工研究室』と書かれていた。
てっきり金属専門なのかと考えていたが、どうやら他の物質の加工も研究していると見える。
「ローベルトさん。ウェーベルです。連れてきましたよ〜」
ウェーベルがローベルトなる人物を呼ぶと、奥からガタイのいい男子学生が出てきた。
「おう、よくきたな。ウェーベルと、君がショウだな。よろしく!」
差し出された手を握る。瞬間、手に激痛が走る。
「いたたたたたたたたたたたたッ!?」
「おお、すまない。これでも俺は武闘派でな。握力がちと強いんだ。」
武闘派なのは見りゃわかる。それにしても異常な握力だ。片手でりんご潰せるとかそういうレベルじゃねぇよ!なんなら、ソフトボール潰せそうだわ!
「これでもじゃないですよ……ローベルトさんはいつもそうじゃないですか。気をつけてください。」
ため息まじりにウェーベルが指摘する。こいつもいつも辛い目にあっているんだろうなぁ………
さあさあ、と言われるままに研究室の中に入っていく。中は他の研究室と比べて広く、いろいろな場所が補強されているのか、鉄板のようなものが剥き出しになっていたりする。何か足りない気もするが、まあいいか。
「お〜い!ミセット!お茶持ってきてくれないかぁ〜?」
奥の方から、はい!ちょっと待っててください!と返事が返ってくる。
「さて、早速だが、ショウ。君はどんなモンが作りたいんだ?」
カバンに入れておいた大まかな設計図を取り出し、机の上に広げる。
「金属の弾を小爆発によって高速度で遠距離まで飛ばすのか……つまり内部では弾丸発射時に相当な圧力と熱が発生するな。だとしたら相当な強度が必要になりそうだが………まあ、強化魔法を使えばいけるか………ん?」
独り言を言いながら図面を読んでいたローベルトは突然読む手を止め、こちらを見て、
「なあ、この『ライフリング』ってなんだ?」
「あぁ、それは弾がより正確な位置に着弾するように、あえて方針にガイドとして溝を入れておくんです。で、その溝のことをライフリングって言うんです。」
「すごいな!正確に打ち出すために溝を作るとは!」
彼には、俺が異世界出身とは伝えていないため、ライフリングについても自分の考えということにしている。本当の開発者には申し訳ないことをした。
「とりあえず、ざっと見た限りでは、これくらいならどうにか作れるだろうな。」
おお!これは嬉しい!流石にこんな簡単にGOサインが出るとは思わなかった。
「そんなに嬉しそうな顔をされちゃ、こっちも嬉しくなるなぁ!ハハハッ」
「いやぁ……失礼なことを申し上げますと、なかなか難しいと思っていたので。」
彼は、この研究室の力を舐めるなよ〜?と冗談混じりに言った後
「どれ、じゃあ金属の加工するところを見せてやるよ。」
と言って我々についてくるように言った。
ローベルトの後を追って奥の部屋に入ると、360度全方位が金属板に覆われた部屋だった。
「ここは硬いものの切断と加工に使う部屋でな。万が一とんでも物が壁を貫通しないように、自分たちの使える中で最も強い強化魔法を施した鉄板に覆われているんだ。」
少し自慢げに語ると今度は、あれを使う、と部屋の中心くらいにある鉄板の乗った机とそれにくっついた不思議な形の台を指差した。
机の前に集まると彼は機械の説明を始めた。簡単にいうと、机上にある不思議な形の台は魔道具で、風魔法の魔法陣がセットされている。そしてこの魔道具のスイッチを入れると魔法が動作し、対象物が切れるというものだ。
魔法の名前はベントチルクスといい、風を使って物を切断するという恐ろしい魔法だ。ただ、ローベルトがいうにはこの魔法、消費魔力がバカにならないらしく、机の下のスペースがまるまる埋まってしまうほどの大きさの魔石を動力源としても、1週間ほどで魔力がなくなってしまうらしい。ついでに、コンロの役割をする魔道具は、乾電池一本ほどの大きさの魔石でも1ヶ月は持つらしい。
まあ、普通は初級レベルの魔法しか行使しない魔道具という道具で、そんな大規模な上級魔法を使おうとする方が珍しいのだが。ついでにこの魔道具、制作に5年、設計まで含めると12年かかったらしい。この学校、確か8年制だから……
おいおい、一番最初に作ろうとした奴、卒業してんじゃねえか。
「じゃ、この廃材の鉄板を切ってみようと思う。少し不快な音が聞こえるかもしれんが、我慢してくれ。」
スイッチを入れると魔道具の上方に薄緑色の魔法陣が浮かぶと同時に、シューッという音を立てて風が出てきた。加湿器のような音だ。
鉄板が風の位置まで到達すると、今度は小さくキーンという金属が切断される音がなり、綺麗に真っ二つにされていく。ローベルトの筋肉だからなのか、簡単に切れているのかはわからないが、使用者側は特に力を入れていると言った様子はない。
それに音も、それ自体は不快な物だが、想像していたより遥かに小さかったため、そこまで気にならない。
全長30センチほどの鉄板は切られながらゆっくりと前進していき、おおよそ1分後、綺麗に真っ二つになった。切り口はものすごく自然で、特にバリがあると言った感じもない。素晴らしい。
次に見せられたのは金型作りだ。個人的にはこっちの方が気になっていた。
金型作りは、土魔法で行うが、精巧な物を作るには高い技術が要求される。そのため、練習以外では下級生は金型作りは行わないらしい。
「シルビア。なんか土魔法で作ってみて欲しい、いいか?」
「はい、先輩。えっと、型じゃなくてもいいんですか?」
「おう。」
ローベルトは、シルビアという5年生に声をかけ、俺たちに実際に見せることにしたらしい。5年生でも、金型を綺麗に作れるのはすごいことらしく、普通ならできるようになるのはローベルトやウェーベルなどの7年生らしく、最高学年である8年でもそう簡単にできるわけではないらしい。
ということはこのシルビアという人、実は相当な才能を持っているのでは?
シルビアさんが呪文のような文を唱えながら粘土に手をかざすと粘土が意志を持ったかのように動き出し、少しずつ鳥のような形になっていった。しばらくかかりそうということで、一旦その場から離れて、詳しいことを話し合うためにもう一度初めにいた部屋に戻った。
加工後は強化魔法を施せば強度も担保されるらしいし、とりあえず、ここの技術力なら銃器制作でも問題はないだろう。あとは……まあ、銃弾の方もこの技術があれば作れるかな。
後書きで話す内容が見つかりません。
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