必要なのは才能ですか? いいえ、慣れです。
今日はコルバルの元で、魔石を使った基礎魔法の実技演習をしている。
元々銃を作ってしまえば、魔法など使う必要はなくなるわけだが、銃の開発までにはもちろん時間がかかるだろうし、せっかく作った銃も威力がなければ結局は攻撃手段も魔法頼りになってしまう。
そうクローシェンとコルバルから説得され、魔石から魔力を供給してもらって杖で魔法を使うという、この世界の人類史史上おそらく初めての試みを始めたのだ。まあ、コルバルに関しては自身の研究ということもあるのだが。
「詠唱は正直無駄だから、魔法名だけ言えばいい。魔法名をいうのも、自分が何を使おうといているのか客観的に理解するためだから、本当はいらないがね。」
やってみなさい。と言われ、杖を目標の方向に構える。そして勢いよく唱える。
「イグニス!」
……………何も起こらない…………
「これは……なかなか手強いなぁ……」
コルバルがこめかみに手を当てて、考え込むような仕草をとる。
初歩レベルの火魔法である「イグニス」は、魔力を体内に持つ者なら誰だって使える。しかし、俺が唱えた場合は、火はおろか、熱すら全く感じない。
魔法を発動させるには魔力を現象に変更するための媒体が必要で、世の魔法使いたちは基本的に全員杖を使う。
そして杖には長杖と短杖の2種類があり、基本的に大規模魔法を使うのに有利とされている長杖を使っている。ただ、長杖は重い上に嵩張るため、大規模魔法を使う見込みがないときは短杖を持ち運ぶという人も多いらしい。召喚魔法は大規模になりがちなため、クローシェンは長杖をよく使っているし、魔石の研究をしているため、普段はそこまで大きな魔法を使わないコルバルは短杖を常用している。
そして今俺が使っているのは、コルバルの発明品、『魔石短杖』だ。
これは短杖の先に魔石を取り付け、そこから魔力を抽出して魔法を使うというものだ。
魔石は通常、魔力還元率が低いため、短杖の先っちょに設置できる程度の大きさの魔石ではすぐに魔力切れを起こしてしまうのだが、コルバルは魔力還元率を大きく向上させるカット法を発明したため、このような芸当が可能だ。コルバルの発明は素晴らしい。
「ショウくん。魔法はイメージが重要だ。魔法のない世界で20年近く生活してきたのだから、こちらにきて2ヶ月ほどで魔法が使えるようになるようにはならんだろうよ。仕方ない。」
「そうでしたか………じゃあ、やっぱりまだ無理そうですかね……」
「うむ……まあ、他人が魔法を使っているのを見て、イメージを定着させればできるようになるだろうね。その杖は貸すから、自分で練習してみなさい。もちろんこの時間は私が面倒を見るから安心したまえ。」
「ありがとうございます。」
それから一日中魔法の練習をしたが、やはり無理だった。コルバルも魔力を体内に持っているので、魔力がない人間が杖を使って魔法を行使すると言う感覚がなかなか掴めないらしい。ただ、研究という名目であってもずっと練習に付き合ってくれたコルバルには感謝している。
明日からは、日常生活のいろいろな場所で他人が使っている魔法をよく観察してみよう。
帰る途中でクローシェンとウェーベルに会った。クローシェンの方は意気消沈しているように見え、それをウェーベルが励ましている感じだろうか。おそらく実験に失敗したのだろう。
「あ、ショウさん!よかった。探していたんです。我々の研究室にいらっしゃらないので、図書館に行ったのですが、そこにもいなくて…」
クローシェンは俺がコルバルの元で魔法を教わっていることを言っていないのだろうか……
「そうそう。それで探していた理由というのが、金属加工についてです。無事に話がついたんで、好きな時に研究室に来てくれって。」
「おお!ありがとう。」
どの程度の精度なのかは行ってみないとわからないが、これで一応は金属加工についても道が開けてきたか。
よし、そろそろ制作に向けて具体的な計画を立ててみるか!




