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モブ旅人  作者: つふら
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11日目『朝』

いつものように日の出前に目が覚める。


顔を洗い髭を剃り、身支度を整えてから外に出る。


ドアを開けると、潮の香りがする。そしていつもよりやや寒い。少し厚着にしておこう。


パーカーの上から薄手のダウンを羽織る。昨夜はそこら辺で焚き火を焚いていたせいかそんなに寒さを感じなかったけど、やっぱり海の近くは寒い。


改めて外に出る。


日の出前に起きたと思ったら少し明るくなっていた。日の出も早くなってきたんだな。その明かりで昨日の焚き火の痕跡がよく見える。よかった。俺は先に車に戻ってしまったけど、ちゃんと片付けくれたんだ。


昨日の事もある。タープを設置せず焚き火台だけ用意し、朝御飯の準備を始める。


昨日のトマト煮込みハンバーグは食べ尽くされてしまった。パン種はあるけど。なので、1から作らなくてはいけない。


恐らく魚はゴロー達から手に入るだろう。昨日漁師達が持ってきた残りの魚も冷蔵庫に残っているが、これは後で使いたいことがある。なので、過去に冷蔵された魚を使っていきたい。


鮭のムニエルは昨日作った。あと、古い冷凍は白身魚があったはず。冷凍庫から日付の古いもの『パンガシウスフィレ』。とある大型スーパーで買ったヤツだ。


これを適当に3分割に切り、下味で塩胡椒、オレガノを擦り付けたあとに小麦粉をまぶす。油をいつもより多めの大さじ2杯ほどフライパン(取っ手取り外し式)に入れて少し温めたあと、焼いていく。


少し焦げてきたら裏返す。火が通ったら皿に移しておく。


タルタルソース、欲しいよな。


玉ねぎ半分、ピクルス2本をみじん切り。それをマヨネーズであえる。なんちゃってタルタルソース。


パンも焼かなきゃ

洗ったフライパンにパン種を薄く伸ばして焼いていく。1枚、2枚、3枚、4枚。


そのナン風パンに焼いた魚を置き、なんちゃってタルタルソースをかけ、その上に更に魚をのせてパンを半分にたたむ。


料理名はない。なんとなくで作ったから。まあ、付けるとすれば『白身魚タルタルサンド』かな。


コーヒーの準備はオッケー。


さて、朝飯だ。


まず端っこから一口。あー、タルタルゾーンにまでいかなかったが、魚自体に下味をつけたので旨い。


もう一口。


タルタルゾーンに突入。口の端からタルタルソースが漏れる。あー、旨いなこれ。


タルタルソースの酸味と魚の塩味、パンの香ばしさ、うん。マッチしてる。


これはなんとなく作ったけど旨いな。


そしてコーヒーをひとのみ。


あー、朝から幸せだ。


少し寒いこの場所。海の薫りすら調味料のようだ。


1人で幸せを感じている時に、目の前に集団が通る。漁師の男達だ。


「お、旅人。また朝から旨そうなもん食べてるな。」


「あー、おはようございます。皆さん朝、早いですね。」


「まあな。朝漁に出て昼に帰って、また昼飯食べたら漁に出るからな。」


1日2回も漁に出るのか。それほどこの海には魚が豊富なんだろう。


俺の作った『白身魚タルタルサンド』を羨ましそうに見ているが、渡さないぞ。昼御飯もこれにするつもりだからな。


「後で、その作り方も嫁に教えてくれよ!じゃ、魚をわんさかとってきてやるからな!」


捨て台詞のようにゴローが言った後、各々は海の方に向かっていった。


彼らを見送った後、サンドを2つ食べ終え、残った2つはラップしておく。


使った食器やフライパンを洗って片付けた後、たまった洗濯物をバケツ(コンパクト化可能)に入れ、どこでも洗濯出来るとある機械を入れておく。これはUSB充電なのでソーラー蓄電してある機械に繋いで昨夜に重点しておいた。いつもなら洗濯板でゴシゴシとしているところだが、この町で過ごすなら車の充電を少しくらい使ってもいいだろうと思ってさ。


車と近くの木の間にロープを結び、洗濯物を干す。


ついでに車内と車外の清掃もしておこう。


車外はずいぶんと泥が跳ねていたので、給水タンクとポータブル高圧洗浄機を繋ぎ、洗っていく。


車内は地味に雑巾かけだ。こういうときにやっておかないと、菌の温床になるからな。次亜鉛素水を作り、1度拭いた後2度拭きする。特によく接触するところから入念に。冬はインフルエンザ菌が大活躍するから。アルコール消毒でもいいんだけど、次亜鉛素水の方が手間かかるけどコスパはいい。


インフルエンザウィルスはアルコールでも死滅するがここは漁師町。ノロウィルスはアルコールでは死滅しない。エンベロープという膜があるインフルエンザはアルコールが効くのに対し、ノンエンベロープであるノロウィルスはアルコールが効かないのだ。


前職の病院では、冬の時期に必ずこの時期は次亜鉛素酸で消毒していたから。


車内もだいたい拭き終える。あとは日光が出ているときに蓄電したいので、ソーラー充電器等を設置しておく。よし、こんなもんだろうか。


「おはよう、ルーシー。」


「おはようございますヤマダ様。今日はマッピングはしなくてもいいんですよね?何の御用ですか?」


「なあ、キャンプで出来る魚の加工法なんてあるか?」


「魚の加工法?調理法ではなくてですか?」


「そう。冷凍冷蔵以外で魚が持つ方法あるか?」


「えーっと、燻製と干し物ですかね。」


「ホシモノ?」


「一夜干しとか、日本人が得意な手段だと思いますが。」


あー、成る程。


「一夜干しってどう作るの?」


「簡単な一夜干しは、魚を捌いてエラと内臓や血合い取り除いた後、手頃な大きさに切り、塩水に一時間程度つけた後、虫が入ってこないところで干すだけです。ただし、夏は気温が高いのでオススメ出来ません。」


うん。これなら出来るかもな。


「燻製は?確かボブが燻製器も用意してたよな。俺は使ったことなかったけど。あとその専用の燃やす木も。」


「燃やす木?あぁ、スモークチップのことですね。ヤマダ様は何もご存じないご様子。ビックリいたします。」


「いいから教えろルーシー。」


「キャンプで出来る燻製の簡単なやり方は、魚のエラと内臓と血合いを取り除き、塩水に浸けるまでは一夜干しと同じです。そのあとに煙の漏れない密閉空間に入れ、薫りの強い木を燃やしてその煙を魚に当て続けることで燻製が出来ます。」


薫りの強い木か。あるのかなこの辺に。


とりあえず作り方はわかった。


「一夜干しで必要な塩のパーセンテージは?」


「15%とされていますが。まあ諸説あるようですから、海水より少し塩が効いているくらいの濃度だといいのではないでしょうか。」


海水よりしょっぱいくらいか。舐めて、『あ、少し塩辛い』くらいかな。まぁ、嫁集団が来る前に実技演習しておきたい。


『あ、少し塩辛い』くらいの水に、昨日残った魚の切り身と開いた魚を入れる。


あとは・・・たしかこの辺に・・・・車内へ戻りコンテナUを探す。あったこれこれ、折り畳み干し網。使うことはないと思っていたけど、よもや使うことになるとは。


干し網を広げると縦長の干す専用の網が5段連なっていた。それを張ったロープに下げ、中に塩水に浸けた魚の切り身を入れていく。30分毎に魚を増やしていき、適正時間を計りたいのだ。


30分塩水に浸けた魚を出して、干し網に並べる。次、1時間後に二段目に魚を並べる。三段目には90分浸けた魚を。さて、どうなるかな。

本当に雪が積もっている。

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