4日目『昼①』
余計な事を考えたせいで寝不足になるかと思ったら、寝不足ダメージ皆無だった俺は、何事もなく日の出前に起床し、シチューと焚き火パンを平らげ、なんて事もなく車を走らせていた。
そろそろ昼時だが、辺りの風景にはあまり変化がない。しいて言えば膝まで生えていた草がかなり短くなり、野原のような踝くらいの高さになっている。
ルーシーは黙々とマッピングに勤しみ、俺はただアクセルを踏んでいるだけ。
天候にも恵まれ、車体天井にあるソーラーパネルから充電しつつ走行できている。窓に張り付けてあるソーラーパネルにも順調に太陽光は降り注がれているため、ルーシーの充電も抜かりない。
時刻は13時過ぎに差し掛かったあたり、ルーシーが声をあげる。
「ヤマダ様、道です。人工的な道が見えます。」
「方向は!?」
「このまま直進するとちょうど道と交わります。ここからみる限り、道は舗装されておらず広くないので道と平行して走行することをオススメします。」
「わかった。」
道がある。それだけでワクワクする。このまま何もなかったらどうしようと、内心ソワソワしていたこともあり、ただの道の発見だけで飛び上がる嬉しさだ。
土を踏みならしたような道と平行に走り高跳び続けて15分ほど。道を歩く人間らしき人影が見える。
車でその横に近づくと・・・うん。人だ。大きなリュックを背負ったおじさん。
減速しながらその歩くおじさんに窓を開けて声をかける。
「すみませーん、ちょっとお伺いしたいんですがー、この道を進むとタヤル町って所につきますか?」
荷物を背負ったおじさんは、俺が声をかけると「ひぃ!!」と、座りこんだ。いきなり声をかけたのでビックリしたんだろう。悪いことをした。でもクラクションならした方がビックリすると思うが。
答えなく。座り込むおじさん。俺はもう一度、尋ねる。
「驚かせてしまってすみません。あの、この先にタヤルって町がありますか?」
何も言わずコクコクと、頷くおじさん。そんなに俺、怖いかなぁ。でも、とりあえず町があるのはわかった。
「ありがとうございます!」
窓を閉め、スピードをもとに戻す。更に進むと城壁のようなものが見え、道を歩く人や馬車が増えていく。
車に乗っているのは俺だけ。よっぽど田舎か、ガソリンの供給が難しい場所なのかもしれない。やっぱり世界は広いな、なんて考えながら車を走らせていると、町の入り口らしき所へついた。
バスコンキャンピングカーはギリギリ入るくらいの道幅。両端の城壁みたいな石造りの壁には当たらないようにして、入り口を通り抜ける。
通り抜けた先には・・・・木造の建築物が並ぶ通りがあった。
よかったよ。町っぽい。そりゃ日本に比べたら町というより村に近いが、建物があり、人がいるだけでもありがたい。
俺は減速しながら、駐車スペースを探していたその矢先、1人の男が車の前に立ちはだかった。
口が絶えず動いているが、なにを話しているのか皆目見当がつかない。なので、車外集音マイクをオンにする。
「ここから先は行かせない!馬車から降りろ!!これは警告ではない!次は攻撃にうつる。」
なんだか穏やかではない台詞。このままでは敵対してしまう。俺はいそいそと車を降りる。もちろん、アーマーを着込み、銃をホルダーに用意した状態でだ。
『ビッ』
ドアが開き外に出ると、車の前にたっていた男が、腰に手を当てている状態だった。
これ、完全に警戒されているな。とりあえず、どうやって敵意がないことを信用してもらえるかだ。
「俺はこの町のギルド長だ。お前は何者だ。なぜこの町に現れた。」
ギルドチョウ?ギルドっていったら職業組合の事だよな。そこの偉い人ってことは職業斡旋する人か。つまりは職安の偉い人ってことだよな?そんな人にキャンパーで通じるか?いや、通じないな。日々生きるために生活している人たちにとっては、仕事を辞めフラフラ旅をするなんて事、考えもしないだろうから。更に職安の偉い人ってなったら、そういうの五月蝿そうだしな。よし。ここはうまく誤魔化すしかない。
「えー、俺は町から町へと旅をしている旅人です。道に迷ったところ、通りかかった人からこの町の事を聞きここまで来ました。」
うん、嘘はついていない。だいぶオブラートに包んだが、伝わることを祈りたい。
「そうか旅人か。ではその馬車はなんだ?」
馬車?あぁ、車のことか。本当に見たことないんだなぁこういうタイプの車を。規格外バスコンキャンピングカーとか言ってもうまく伝わらなそうだよなぁ。うーん。
「えー、これは都会で新しく開発されたものです。」
伝わったか?嘘はひとつもついていないぞ?
「そうか、都ではそのような馬車が出来ているのだな。」
おっ、伝わったか?なんとなくニュアンスは違う感じがしたけど、まあ、伝わった風な顔してるから大丈夫か。
「しかし、このような大きい馬車は町中に止める場所はない。俺が空き地を案内するからついてこい。」
お、以外と親切だ。
今はこの職安のおじさんについていくしかない。
車に乗り込み、おじさんのあとを低速でついていく。もちろん、集音マイクは常にオンだ。
5分ほど進んだ頃、職安のおやじに1人の男ぎ駆け寄ってきた。その男の声は集音マイクを通し、車内でも響き渡った。
「ギルド長!急いで来てくれ!材木屋の木材が倒れて、子供達が下敷きに!!血が大量に!!」
「なっ、わかった!すぐに行く!」
職安おやじは俺に「ここで待ってろ!」言い残すと、男と走り去っていった。
さすがにこれを聞いたら大人しくしてるわけにはいかない。
「ルーシー、ちょっと俺も様子を見てくるから。」
「わかりました。念のためにお伝えしておきますが、医療用品が入ってるのはコンテナKですので。」
「わかった。」
俺はドアの指紋ロックを外し、ドアがしまる音を確認しないまま、職安のおやじの後を追いかけた。
仕事ぎ始まったので、また1日一回の更新ペースになるのか




