殺人鬼とは何か
お久しぶりです
リアルがえぜつなかったので休んでました。すみません。
「こ、こんなところ英雄級役職だと、ましてや、{殺人鬼}だというのか」
さっきまで結界守護者だの風の支配者だの言っていた奴が腰を抜かして倒れこむ。それに、口癖の‘ね‘はどこに置いてきてしまったのかね。
まあ、現状知りたい情報は山ほどある。この世界の事とか、魔法の事とか、殺人鬼が英雄級役職てものの事とか、そもそも役職て一体なんだ。
でもその前にこの野郎を始末してからにしよう。屑は捨てられる時に捨てるできる仕事人は、ゴミ処理能力は高くないといけない。
「来るな、寄るな、私のそばに近寄るなーーーー。<死><死><死><死><死>」
俺は尻餅をついた吸血野郎ににじり寄る。奴は手から黒い球体を何度も連射する。しかし、外れるか、当たっても弾けて消えていく。まるでドラゴン〇ールの連射弾のようだ。何の意味もない。
俺は奴の首筋をつかみ、高く掲げる。そして、もう一度杭を刺す。
「無駄だと分からんのか、我々吸血種には【吸血自動治癒】がある。幾ら傷つけようと傷が回復する。獣同然のお前には分からんだろうがな」
なんか、散々無駄な攻撃してきた人に言われた。ブーメランがに刺さっていることに気付かないのだろうか。物理的刺さっているのは、杭なのだが。
「この私がこんなワケの分からん奴に、人間未満の化け物なぞに殺されてたまるものか、即死が効かんならこれならどうだ<サイクr、rr、ぉおおおお、、、、」
掴んでからもかなり抵抗してきたので、首筋を左手の握力だけで絞める。動きはうるさいが、音は静かになった。喉を潰したからそれが遺言になるけども、
「うるせぇよ。いい大人が、決まっったことに関して駄々をこねるんじゃねーよ。みっともないたら、ありゃしないぜ」
こいつがどんな仕組みで超回復しているかは、ぶっちゃけ皆目見当もつかないが、【吸血自動治癒】というぐらいなのだから、奪い取った血を使って回復しているんだろ。要は、こいつから血を抜けば、無事死んでくれるのではなかろうか。
「水筒のように全部抜いちまうか」
俺は、刺したままの杭を街路樹にも突き刺す。まるで、コルクボードに画びょうで、紙を掲示するようかのようにドラキュラを張り付ける。
俺は左手はそのままに、右手を奴の頭蓋骨にを完全にホールドする。奴の顔を見ると、息苦しさからか、顔が真っ赤に腫れ上がっていた。青くなったり、赤くなったり大変な顔だな。そんな顔も胴体とおさらばするんですけどね。
「えっと、開ける時は‘の‘の字の反対、半時計周りだな」
そう言って俺は右手の手首を回す。元の体では、絶対に出来ない所業がこの体にはできる。
万力ように固定され、怪力でねじ回わされた首は、ギチギチと音を立てながら抵抗する余地もなく二周三周する。そして、五週目で遂にねじ切れた。血が未開封の炭酸のペットボトルを開けたように勢いよく飛び出す。こいつの体をシェイクした記憶はないのだけれども。
奴の顔は、恐怖に歪んだ顔をしている。死に顔がこんなのは、魔王十二幹部的によろしくないだろうから、丁寧に踏み潰しておいておく。血液水筒は、杭を軸に180度回して、中身を捨てる。案の定。人一人分とは思えない程の血液が滝のように流れ出る。これだけ出せばそう簡単に回復をさせることはできないだろう。少し経つとピクピクしていた体が完全に動かなくなった。間違いなく奴は絶命した。
俺は殺人鬼としての一歩を確実に踏み出した。もう、俺の内面に倫理感や殺人に対する不安や恐怖は一切ない。あるのは、夢にまでにみた殺人鬼達に一歩ずつ一歩ずつ近づいているという。絶対的な希望と充実感だけだ。これが夢を追うという気分なのか。なんて心地良いのだろう。神様にまで祝福されている感じだ。生きているとは正しくこのことを言うのであろう。
「自分の信念と成長のために死んで頂きありがとうございました」
しかしながら反省点もある。一番は俺は殺人鬼としてのリスペクト精神を忘れるところだった。殺人鬼にとって殺しとは、食事。つまり、いただきますを食べる前に言うように、犠牲となった食材に感謝を示さないといけない。これは恥ずかしい。二十歳にもなってまともに箸が持てないのと一緒だ。
こんなにも大切なことをせずに、粋った台詞を何度も吐いてしまった。自分が情けなくて恥ずかしい。
反省点はまだある。情報不足が否めない。この世界のことを全く知らずに殺しをしたことは、やはりよろしくないようだ。今回の犠牲者のことも全く知らなかったし、この世界のルールすらわからずじまい。こんな行き当たりばったりの殺人鬼では、底がしれてしまうしカッコ悪い。序盤の殺しでこんなにてこずっていてるのが、何よりの証拠だ。最初は正体を現さないように殺すのが、一般的なのに。
「しかし、まあ良く頑張った方かな」
取りあえず殺しには成功した。この点は、人一人殺すことのできなかった昔の俺では考えられない。いい加減に反省はこのあたりで切り上げよう。何事も初めてで理想の形を追い求めてしまいがちだ。実際に理想と現実の差は大きい。しかし、その壁に絶望してはいけない。ゆっくりとその理想と現実の差を埋めていくしかないのだ。
殺人鬼の掟と信条というやむをえない事情により、よく分からない相手に殺人童貞を捧げててしまったが、ここからは当初の予定通りに、情報収集に努めるとしよう。先ほどの戦闘で、言葉が通じることが分かった。なら、さっきの餌になりかけた女の子に色々と情報を聞き出そう。
俺は自分の首を左にひねらせ、視界の端に女の子を捉える。長い緑髪が綺麗な女の子だ。見た目年齢としては13から15ぐらいか。顔も人形のように整っている何処に出しても恥ずかしくない美少女だ。なるほど、あの吸血野郎がデザート(意味深)したくなるのもわかる気がする。
けれども、似合っていたであろう服はボロボロだし、真っ白な肌も転んで擦りむいた傷だらけだ。若さが溢れるであろう体は、朽ちた植物のように生命力がなく、ただそこに尻餅をついてしまっている。なにより、笑顔が美しいでろう顔が絶望一色に染まっている。目は、明らかにハイライトがなくなっていた。
まあ、無理もない。話からするに父親を含めた馬車の人たちが全員殺され、復讐相手は殺人鬼にその場で殺された。そして殺人鬼が目の前にいる。もう、希望も復讐心も湧いてこない。あるのは、絶望だけだろう。
そんな状況で彼女はまるで天を仰ぐようにこちらをぼんやりみながらかすれ声でこう言った。
「……ころ……殺して……ください。もう、……生きたく、生きたくないんです」
それは、一種の自殺行為であった。彼女は、絶望の淵で生きること断念したのだろう。これ以上辛い思いはしたくない。だから自殺したい。だから、殺人鬼の俺に殺してくださいと言ってきた。いや、俺が殺人鬼であることは関係ないのかもしれない。馬車の人たちが死んでしまった時点で彼女の心は既に壊れてしまったのだろうか。
俺は彼女の方に歩き出し、左手で彼女の首を掴む。何も大変なことはない。このままきつく締め上げればいい。抵抗しない分、赤子の首を絞めるよりも簡単なことだ。なんの苦労もない。
俺は右手で彼女の頬を思いっ切り叩いた。
全力で布団を叩いたような音が、静寂な森の中を響く。彼女の右頬は真っ赤に腫れあがった。俺の右手もピリピリする。
「殺人鬼が乞われて人殺しをするわけないだろうが」
このものを知らない女の子には殺人鬼とは何たるかを仕込まなければならないようだ。
空き時間一か月ほどたっていますが、ヒロインの名前決まっていません。