♯5
ザワつく電車の中、俺とアカネには沈黙が続いた。
そもそも女の子に耐性が無い俺は二人きりで出掛けることが無謀だったのだ。
前日に色々考えたのにいざとなったら言葉が出てこない。
そんな中沈黙を破ったのはアカネの方だった。
「そーいえば、スマホのゲームなにかやってますか?
今学校ではやってるのがあるんですよ!」
そう言ってアカネが見せてきたのが、あの有名な《パズ〇ラ》だった。
俺もハマっていたゲームだったからこの話をする事にした。
《どんなモンスターをもっているか》
《どんなパーティを使っているか》
《ランクはどのくらいか》
この時間がすごく幸せだった。
もうショッピングモールなんて行かずに
電車の中で、隣で、こんなに近い距離でアカネと話をしていたい。
俺とアカネがこんな近い距離で話すことなんて無かった。
だが電車は電車、目的地には辿り着いてしまう。
電車での1時間がすごく短かった。
いや、この日自体がとても短く感じたのだ。
駅を降り、ショッピングモールまで5分ほど歩いた。
地元にはない大きさのショッピングモールを見たアカネはワクワクが止まらないようだ。
化粧やオシャレをして大人びていても、表情は子供だ。
だがその表情に、俺は惹きつけられた。