二重人格トランスジェンダー
※この作品は実際の体験に
症状等至らぬ描写が多々あると思われますがご理解のうえ閲覧よろしくお願いいたします。
HP<http://ip.tosp.co.jp/i.asp?i=queen214neeuq>で更新中※こっちのがはやいです
日常と非日常。
あたしはふつうに恋をする。
それでも、
ボーイとガールの顔でトランスジェンダー、二重人格のそんなあたしのふつうの恋の物語
いま、
夜と昼が交差する…
若葉恋
無自覚二重人格症。
平凡な高校一年生。
多忙な母と二人暮らし。
レン
もうひとつの人格。
トランスジェンダーで自分は男だと思っている。男装してホストクラブのボーイで働く。
ハジメ
海で出会った五歳上の美大生。整った顔立ちに独特の雰囲気を持つ。昔は荒れていたのがうそのようにおとなしい性格。元ホスト。
ヒロト先輩
留年している三年生。学校でも目立つ存在。恋の憧れの人。
時哉
中学のとき恋をいじめていた。クラスメート。なぜか恋を追って同じ高校に入学。
歌舞伎町でレンを見つけてしまい、それをネタに脅迫する。
藍原けい
親友。ノリがよく可愛らしい性格。寂しがり屋で常に彼氏がいないと不安定になる。
神谷ゆう
歌舞伎町のホスト。レンが女ではないかと疑っている。ナンバー3。
あいき
ヒロト先輩をめぐってもめる。
月伽ゆらり
年をごまかし、体を売ってレンのいるホストクラブに通う。裕福な家庭のお嬢様と偽っているが本当は両親がおらず施設育ち。幼いころ、叔父に強姦され男を憎むようになる。
本当はエイズで、残り少ない期間貯めていたお金をレンに貢ぐ。いつも健気で病気がレンにうつらないよう努力。
「リボンはすき」
「色合いもきらいじゃない」
「スカート…かな」
「なんだろう」
壁にかかる制服の前に立って、自分のセンスに見定めてみる。
なんか思い描いていたのとちがう。
ダサイ。
まあ隣のお姉さんの高校の制服が深緑でかわいすぎるからかな
たぶん、スカートが…長いから?
あたしは、躊躇なくスカートにはさみをいれた。
入学式。
土混じりの少し汚れた桜のはなびらが顔にまとわりつく。
せっかくのわくわくした気分がちょっと台無し。
でもそれ以上に、
無駄に風通しのいいスカートのおかげで太ももがスースーしていまさら不安。
やっぱり切り過ぎたかなー・・・
周りをみても、さすが入学式。
中堅どころのうちの高校じゃ、一年生だけの入学式であたしより短いスカートを履く女子高生は見あたらなかった。
ジョシコウセイ、
なんかいまさらながら実感。
ひとりで気分改めながら会場の体育館まで歩くと、発見した。
あたしより、全然、短いスカート。
すらりとのびた足に大人びたかわいい顔を持つその子には
男子だけじゃなく女子も注目していた。
「いーねー、スカートみじかいねえ」
瞬間
聞こえた声。
もちろんそのかわいい女の子のことかと思っていたら
すでに涼しかったふとももがさらに…
さいあく。高校生にもなってスカートめくりですか。
「はあ…よかった、今日まともなぱんつで、」
つい漏れたせりふに、同じ声で笑い声が響く。
「なんだよそれー、あんたまじうける」
目の前には短めウルフカットの日に焼けた男子と、きつい猫目が印象的のちょっとギャルっぽい子。
なんか、爆笑しすぎて泣いてるし。女の子の方。
「えーと…」
こんなに笑われたら、怒るに怒れない、んですけど、
「あんた何組―?まじ仲良くしよーよ、あたし新井あいき!二中ね。でー…」
すごい勢いで自己紹介どころか他己紹介も始めるあいきって子。
バシバシ背中たたかれてるとなりの男子、
ちょっと痛そう
「こいつが奈留丘ショウ!あたし同中!サッカー部に入るらしいから男まわしてもらおうねえ」
少しだるそうに、でもちょっとさわやかに、切れ長の目のその男子、口を開きまして
「あー…よろしく。ちなみに俺ら7組なんだけど…お前何組なん?」
ななくみ!
てか、わたしも!
口に出さなくても、うんうんうなずいて自分指差していたみたいで気づいてくれたふたり。
「まじ?!じゃあ、さっそくうちら親友ってことで!今日カラオケいくべ!!」
笑顔のあいきの腕が肩に回る。
穏やかに微笑んでるショウに、笑みをかえして、
「あ、あたし…恋。恋ってかいてレンだから!よろしくお願いしますっ」
変なとこで敬語になったあたし。
また笑い声が響いて、
高校生活、期待が高まる。
ななくみ。
退屈な入学式も終わって、仲良くなったあいきとショウとで教室に向かう。
あたしたちの教室、七組に。
これから少なくても一年間、お世話になる場所。
中学の教室とそこまで変わるわけじゃないけど…掲示物が少なかったり、女子と男子の机がくっついてなかったり。
微妙な距離がくすぐったい。
新鮮な風があたしのこころに吹いた
正直…中学の思い出はいいことばかりじゃないから
それはあとで話すとして……
綺麗にワープロで打ち込まれた自分の名前の貼ってある席につく。
後ろの席はショウ
少し離れて隣の隣があいき
窓際の後ろから三番目
なかなか良い席かもしれない
…あ、でも隣の席の子がなかなか来ないのが気になるけど
まさか入学式から休み?
もしかして、怖い子だったらどうしよ
“藍原けい”
名前見る限り性別不明なんだけど…
少し遅れてきた担任のはなしを聞き流しながら、目線を机におろす。
時計に目をやって、秒針の音を数える
ひま・・・
後ろからはショウと思われる寝息が。
とりあえず、はやく、
放課後になってください
そう祈りながらふと自分の手に目をやると、
のばしていた爪が綺麗に切られてるのに気づいた
……なんで?
高校生になったんだから、スカルプとかそうゆうのやろうと思ったのに。
不自然なくらいみじかく
これじゃあ深爪じゃんよお
でも、ものごとを深く考えない性質のあたしはすぐに目を閉じ、後ろのショウと同じ体勢になった
放課後
仲良くなったあいきと、入学早々部活があるショウをグラウンドまで見送る
えらいねーって感想送ったら、
「フツーだって。俺らサッカー部は、春休みからきてっから」
だって。
体育会系のひとってすごいな。
あたしオリンピックもろくにみないし
そんなこと考えながら、古い物置みたいな部室をのぞく
「おーーい、奈留丘。おせぇぞおお」
先輩と思われる声が響く
声おっき…
わ、めがあった。
ちょっとびっくりした顔のまんま、小さく頭をさげる
そのひとは声だけじゃなくて、背もおっきくて、口もおっきくて…サッカー部なのにピアス?ってか、ちょっとあごひ髭ある?
けっこう…怖いかも、
「一年生?なまえなんつーん?」
かなり焼けた肌のそのひとはさっきとはちがう笑顔できいてきた
笑うと、こわくない…かも
「あ、・・・えっと、」
「一年ななくみ!新井あいきです!!ショウとは同じ中学でーす!!」
手をあげて、笑顔で
人懐っこいあいき。
あたしなんてこの野獣みたいなミタメだけでびびっちゃってんのに…すご。
「おーー、よろしくな。いいねー元気で。…俺は、わけあって今年19歳の伊濠ヒロト。」
顔に合わない、ちょっとさわやかな声
「つか、そっちのこは?なんつの?」
首をかしげて、
「あ、恋です!!!!!ななくみ!」
「いきなり名前かよーー!はい、恋ちゃん、ヨロシクね。」
あたし、癖で名前だけゆっちゃうの
なんていうか…苗字あんまり言いたくない。
親の所有物な感じがして…
でも、そんなん笑い飛ばしてくれたヒロトせんぱい
春から夏に季節変えちゃうような笑顔をくれた
絶対もうかかわることはなさそうだと思ってた…
あなたをめぐって沢山のことがあったよ。
あいきとふたりになって、長いバスの中で語るフンイキ
「ねー、高校って楽しみだった?」
あいきが突然聞いてきた。
「…ん?あたしはめっちゃ楽しみだった!正直…中学あんまり楽しくなくてさ」
あいきの前だと素直に言葉が出てくるかも。
あいきが素直だからかな。
なんかすごくラクチン。
「そなの?…あたしは、あんまなんだあ…ショウがとられそうじゃん」
「へ?」
「だからー…あいつね、中学ではもてんのに彼女作らなかったわけ。だけどさすがに高校になると…ねえ。あたしからはなれていきそうでやなんだ。」
「まってまって!あいきってショウのことすきなの??!」
頭ん中が生理つかない
「びみょー…なんていうか、いや?わかんないけど。てかさ、さっきの先輩格好良くなかった!?やっぱ高校はいるとイケメンいるんだあーって思った!で、テンションあがった!!からやっぱ高校たのしい!!」
「あいき…まじ意味わかんないし」
後々おもったけど、あいきってこういう性格。
頭の回転がはやすぎるのがごちゃごちゃなのか、
とりあえずジェットコースターみたいに話題が飛んで
スリルだけど一緒にいてほんとうに面白い
・・・・・・なのに、どうしてあんなことになっちゃったんだろう
Dear 恋
俺は、お前がウザイよ
うっとうしくて仕方ない
早く自由になりたい
だから俺は夜の住人
お前の時間、借りるから
From レン
「レン、三番に男本持ってって」
「はい!」
夜の新宿歌舞伎町
何者も拒まない街
俺の一番居心地のいい場所かもしれない。
俺はここでホストクラブ「アインス」の内勤をしている。
内勤っつーのは、まあボーイ。ホールスタッフ。客につかないで…まあ要するに雑用。
本当はキャストやっても良かったんだけど、
女を抱けねーとホストでのし上がるにはどうやらキツイらしい…
抱け、っていわれたら
抱けねーよな
だって俺の体は・・・・・・・
俺の体では…満足させられない、だろうから
「レンくん、ありがとーーvてか、レン君がスタッフだったら絶対指名するのにー」
「レン君なんで内勤なのー?もったいなーい」
週に2、3回は来るNO.3のゆうさんとNo.5コウキの太客。
キャバ嬢の、りいとモエ。
今日はまだ酔ってないけど、ふたりともかなり酒豪…つか酒乱。
だから自動的に内勤の俺の世話になる。
「あー…そういうのいいから。今日は自分でエレベーターのれよ?ゆうさんとふたりになれんのって貴重だろ?あのひと、指名数では一位なんだから、さ…常にお客さんきてるっつーか」
通常No.1とかってのは、売り上げで決めてるから、指名本数はあんまり重視されない。
…だけど、そうすると一人の客に負担がかかるからあまり良くないし続かないって言われてる。
そう考えると、ユウさんは、きちんと分散させてあんまり来ないいわゆる細客も大事にしてるし…まあ、いいホストって訳。
「まあねー、ユウはいいやつだからさ。なんとなくやっぱりね、来ちゃうの。こういう営業もいいかなって。」
明るいメープルブラウンの髪をしっかりと盛ったりいが、煙草の煙とともに吐き出す。
「いいなあー…、コウキなんて客持ってないからアタシちょー負担だよ。100使ってないのにエースのプレッシャー。しんじゃーう・・・って、あ!コウキ!おつー」
眉尻をさげ、嘆く萌。
コウキがくると、おー身替りはえー。
「おーコウキだすー。おまえ、おれの悪口禁止―。じゃないと次、ホテルな。」
「コウキ!声でかいから!」
そういいつつまんざらでもなさそーな顔。
すいませーん
ここ、枕禁止なんですけどー
こういう話ってちょっとダメ、だ。
俺には出来ないから。
さっきもちょっと言いかけたけど…
俺って体、微妙に女なんで
発育不足の恋のおかげで、さらしまかなくても余裕なくらい上半身はガリな男、なんだけど
下半身はふつーに生理とかきます。
俺だけだったらこないかもだけど、恋が脳内女子だからさ。
無駄に精神面だけ女性ホルモン(乳にはいかないみてえ)
やっぱ、…女の子満足させらんないからさ
ここが男に混ざって働くちょい辛いとこ
だからって二丁目にはいけない。
俺はハンパでしか、ないから
きっと…ずっと。死ぬまで。
ちょっと複雑な、
事情がありまして
勝手に改造なんかしてみたら
恋、弱いおまえはどうなるんだろう
補足
こんな俺でも、気になる程度の春、はあって。
「つか俺の悪口じゃなかったらなんの話してたんだっつーの。」
コウキがふてくされながらいう。
俺の設定年齢(いちおー18)とタメのこいつとはなかなか話が合う。
下ネタと性欲が酷いけどま、少しは…勉強になるかな。
そこ以外はこいつから学べそうなモンはないけど。
ギャル男ーって口調で拗ねるコウキに、萌が返す。
「んー?だからあー、なんでこんなイケメンレンくんは美女うちらについてくれないのお?ってハナシ!」
「あー…美女ね」
「ちょっと、モエ。コウキの口の利き方!ちゃんと躾しといてー」
「はあーい、…でもさ、レンくんたまーーに客についてるの見るよ?髪長くてお人形さんみたいなー…」
あ、なんか、
触れられたくない話題にいきそーなフンイキ
「ばあーか。レンにも好みとかあんだよ。好みの客にはつく、コレ内勤の役得!」
…ヤバイ、助かる。
コウキが空気呼んでできとーにまとめてくれた。
こういうとこは、ホスト向いてると思うんけどな。
まあ、サンキュ。コウキ。
「レンくんー、きたよー」
「あ、…ゆらり。久々じゃん。」
現れました。
いちお、この人形みたいなガリガリ女が月伽ゆらり。
俺の設定とタメ(18)
体弱いみてーでかなり細い。胸も俺くらい。
いいとこのお嬢さんらしく、ほっとくとかなり使おうとするから止めんのにいつも必死。
やっぱりヤバイだろ…
酒もあんま飲ませたくねーのに、
「お前、また顔…やせた?」
自然とゆらりの頬に触れる
「…っ、だいじょうぶ」
こんなんで赤くなるゆらり。
こんな純なやつ、いつまでもこんなところに来させらんねーよ…
でも…やっぱり逢えるとうれしい。
内勤だから、連絡先を交換することも出来ない、
ましてや外で会うなんてありえねー
あくまで客はキャストの、獲物
ゆらりも例外なく…男の、獲物だから
まあでもいつか、ふたりでどっかいけたらいい
ゆらりは動物園とか遊園地とか幼稚なモンがすきそうだから
……いつか、
俺はなにも、
本当に何も知らずに
そんなのんきなことを考えていた。
「じゃあね、今日は楽しかった…てか今日も!」
少しお酒が入りピンクの頬をしたゆらり。
いつになく甘えてくる。
「うー…離れたくない、かも。レンとずっといたいよ」
「ん、…でも帰んな。家族…心配するから。お前一応お嬢だし、未成年なんだろ」
「・・・・・・・・・・・・ぅん、そだね、…かえる」
少し気になる沈黙。
でもやっぱり心配で。
無理させたら逢えなくなる。
そんな自分に必死だった。
「下まで送ってくから…」
髪をなでながら少し強引にエレベーターに乗り込む
ふたりきりで、
多少、密着して、
忘れてた。
こいつはおとなしそうに見えて何気にやらかす女だった。
営業終了後、後ろ首筋にくっきりとついた赤いうっ血
キスマーク
エレベーターが開く瞬間ゆらりにつけられたらしい
「ヤバ…」
えーと、
俺の体は恋のもの、であって
ということは
悪い、ゴメンナサイ。
でもまあ少し面白い。
これで「男がいる」って周りに牽制かけとけば
まだあいつ処女でいれっかも
たとえ恋のときでも、男にやられるなんてマジ無理だから
「おはよー」
入学式から約一週間。
微妙にださい制服にも慣れて、
あいきと、そしてもう一人新しい友達といることが多くなった。
その子の名前は、藍原けい。
そう、あの隣の欠席者。
女の子だったみたい。
入学式は来てたみたいだけどその後のHRはさぼったんだって。
やっぱり……
入学式で見た、あの短いスカートの、
すらりとのびた足に大人びたかわいい顔
そして、中身といえば……
「親父」、だった。
「あーーーだめ!まじ、たこわさ食いたい!誰か今日居酒屋いくべ!」
いすの上に大きくあぐらをかきながら背もたれによりかかるけい。
「けい…あんた、だまってたら可愛いんだからそうゆうこといわないのっ」
そういうあいきも、なぜか体育すわりでしかもすっぴん。
まあ、あたしも…どうせ、今日はヒロト先輩にあわないだろうし…バス、一緒になれない、な。
あのまぶしい笑顔から一週間。
あたしのなかでヒロト先輩はけっこう…かなり気になる存在になっていた。
入学式の次の日、
なぜか、首筋が蚊にさされてまるで…あれ、キスマークみたいになってたのを指摘されてからというもの、廊下ですれ違うたび、バスが一緒になるたび声をかけてきて絡んでくるようになって…
「あーー、恋ちゃんだ」
あれは、放課後。
すごく天気のいい日。
そして、聞きなれない、、声。
「へ?」
「昨日ぶりー!留年のヒロトくんですけどもー」
「っ、…あ!!」
また、笑顔くれた。
でも、
「ここ、ここ、キスマーク」
首筋、指さしてにっこりな先輩。
「きす…?え?!!」
まさか、そんな営みは!心当たりなすぎ!!
「蚊?マジキスマーク?」
「ちがいます!!!たぶん…虫、蚊です…」
かゆくないけど。
「そっか…良かった、じゃあーちゃんと純粋な恋ちゃんにはこれやるわ。」
また、
くれたのは、
笑顔と一緒にイチゴミルク味のチュッパチャップス。
「ぁ…ありがとおございます…」
わ、なんか漫画とか映画みたいかも。
だって15さいだし。
これはちょっと、感動するっていうか…
気になるきっかけとしては上出来、なの。
また笑顔で、三年生の強めの先輩たちの輪の中に消えてくヒロトせんぱい。
その輪の中は、
すっごく遠くて。
急に身近な存在じゃなくなる。
強めにかけたスパイラルパーマ
妬けた肌
片耳だけのピアス
スッゴク軽そうな端の解れたかばん
どうしよう
春かもしんない
「やっぱ、一年男子びみょーーー!やっぱ、三年のあの強め集団でしょ!まじいけめん!!」
体育後の、女子更衣室であいきが叫ぶ。
「けいもそう、思わんー??」
「けい、顔とか関係ないもん。おもしろくて眉毛がきってなってる人がすきなの。三組の鴻野くんとかー」
鴻野君はけいのお気に入りの男子。
顔は中の中。
サッカー部。
サッカーは微妙だけど、ギャグセンスはぴかいち。
「えーー鴻野とかふつーすぎ。恋は?」
「へっ?せんぱい…?たしかに…かっこいいかも…」
急に振るとか、うろたえるし
「最近けっこう絡まれてんじゃんーーずるいしっ」
わりと、あいきといるとき絡まれるのが多いみたい。
「ね、ヒロト先輩たち毎日ぎりぎりのバスにのってんの。知ってる?あのバス遅刻ぎりぎりだから空いてて座れるしさ、明日からあれでいこうよっ」
あいきからの耳打ち。
うれしいかもしんない。
あたしは、迷う暇なくうなずいていた。
隣でけいは、うつむいておなかをさすっていた。
ねえ、けい、
どうして言ってくれなかったの?
けいにとって、うちらはまだ会ってまもないし信用できなかったのかもしれない
でもね、
あたしたちは学校っていう場所で一日の一番長い時間を過ごすの
その中でしてあげられたことはたくさんあったんじゃないかな
今でも心に思う
守ってあげたかった
けいと、けいの・・・・・・・
「ちっげえーって!ヒサシがわりーんだろうが!おれ、いちおーせんぱいだっつの!!」
バスの中。
片手には、氷の溶けたアイスカフェラテ
コンビニで買ったパン(遅い朝ごはん)
となりには化粧ばっちりのあいき
後ろからは、ヒロト先輩たちの、声。
ヒロト先輩はいつも、
アフロあたまのヒサシ先輩、
猫目のギャル男ちっくな秋谷せんぱい、
背の低めなかわいい系のたつる先輩、
まじいけめんの涼太せんぱい
明るい髪が印象的な六反田せんぱい
女子軍は、目が大きくてすっごく細いうちらが勝手にあゆせんぱいって呼んでるひと。
小柄で可愛いやよい先輩
ハーフ顔の美人、さやかさん
といっしょにカリスマオーラを放ってる。
今思うとたった3さい差って思うけど、
あのころは2さい差だってかなり大きくて。
「いいなあー…あゆせんぱいたち」
「うちらも三年生になったらあんな可愛くなったり、やせたりすんのかなあ」
「うー…まじなってほしい。そう思お!!」
「やっぱあのイケメン集団はあんなかでくっついたり離れたりしてんだよねえ、それか他校の可愛いことか」
あいきの言葉に思わずため息
たしかに。
なんか嫉妬しそ。
そしていらいら。
輝いてるあの集団に。
どうしようもないあたしたちに。
でもそんな時、
そんな、あたしたちにも、救いのお声が。
「恋ちゃんー?ともだちもー、後ろくれば??」
「おーーいいねえ、一年生!一緒に座ろうや」
「わーまじ初々しいしー」
え。
うそ。
興奮したあいきに手、引っ張られながらバスの後ろ座席にすわる。
しかもちゃっかりヒロトせんぱいのとなり。
目が合う。
小さくお辞儀。
「はよ、つかさ…」
‘今週とか、どっか遊びにいかねえ?‘
囁かれた言葉はあたしを舞い上がらせるには十分だった。
あのあと、番号交換して。
何通かメールやりとりして。
ちなみにあいきは、いつのまにかとなりのヒサシ先輩といい感じになってた。
恋の魔力は絶大だ。
ボーっとしてちゃっと妄想してたら、
すぐに昼休み
「今日、けい休みだからおつまみなしかあ」
あいきがため息混じりに言う。
けいはいつも、「親父」ゆえ、チーズ鱈とかサラミとかお昼休みにもってきて食べてる。
あたしたちはそれをちょっとわけてもらったりしてつまんでる。
「けい、まだ入学して十日もたってないのにけっこう休んでるよね。体弱いのかな、たまにおなか痛そうにしてるし」
「んー…ちょっと心配だよね。あいつなぞなとこあるし」
ここであたしたちの想像力は限界。
あたしは、コンビニでファッション誌をかたっぱしから読んで、この週末のデートに着ていく服で頭がいっぱいになっていた。
けいの、痛みも、知らずに…
一週間はあっというまで、
ついに明日が先輩とのデートの日になってしまった。
買ったばかりのこてで髪を巻き、
初めてのまつげパーマまでかけてみて、
ヘーゼルのカラコンをつけて
奮発して買ったランコムのマスカラ
ベビードールと、
エスカーダのトロピカルキス
ランコムのミラク
迷った末に薄いピンクの液体の入ったミラクを手に取り首筋に吹きかける
たしか先輩の愛用は、ブルガリブルー
焼けた肌の彼にはぴったりの香り
なぜか、あたしの香水棚にはひとつだけ、メンズの香水がある
クリニークのハッピー for men.
うちの家族には男はいないから、
お母さんの恋人が置いていったのかもしれない。
女の子がつけても違和感のない香りだから、あたしもたまにつけてる。
でも、ほんとにたまーにしか使わないのに、なぜかけっこう減っている
お母さんの恋人、
まさか勝手にあたしの部屋に入ったりしてないよね・・・
ずっと女だけの家族だったから、大人の男の人って苦手。
デートってなんで楽しいんだろ!
待ち合わせ場所でも光ってみえるし、
自然とかなりテンションがあがる。
あと、少しの緊張感、
「遅れてすみませんっ」
「え?全然おくれてないでしょ。十秒くらい?」
いつもの、また、あの笑顔。
「う・・・でもごめんなさいっ」
「いいっての、ほら俺車で来たから…ドライブ行こうな」
先輩の私服はカジュアルなちょっとサーファー系。
予想よりも少しチャらい格好でも、
すごく似合っててかっこいい
まさにブルガリブルー。
しかも、高校生なのに車。
あこがれのドライブデートとか…
手はつなげない距離
でもいつもより格段に近い、距離
ふだん冗談ばかりのせんぱいの
真剣に運転する姿
そういうギャップかなりやばいすき
でも、
あたしの淡い恋心はこれから、
ぐちゃぐちゃになっていく
そんな運命を
あたしは避けることが出来なかった
車にのって小一時間
どんどんしらない風景になる
さっきまでずっと笑顔で楽しいおしゃべりをしてくれていた先輩が
今は知らない顔で、ずっと、誰かと電話中
知らなかった。
助手席ってこんなに寂しいものだったの
あたしはぼけっと、外の流れる景色を見ていたから
気づかなかった
先輩の会話の内容なんて
「これからつれてくから、お前らちゃんと用意しとけよー・・・恒例の、新入生処女狩り」
あれからまた、一時間くらい。
まわりに何もない、大きな公園に着き、
最初はベンチでおしゃべり、
どうしてか、つまらない
言葉にきもちがないのが伝わる
十五分くらい。
知ってる顔が何人か、
アフロあたまのヒサシ先輩、
猫目のギャル男ちっくな秋谷せんぱい、
背の低めなかわいい系のたつる先輩、
明るい髪が印象的な六反田せんぱい
まじいけめんの涼太せんぱい
二時間くらい・・・
一番乱暴なヒサシ先輩、
押し込んでくるだけの秋谷せんぱい、
何度も叩いた、たつる先輩、
六反田せんぱい
なにもしなかった、涼太せんぱい
「やだああ!!!ほんとにやだっっ!!やあああああああああ」
「そうそう、その顔が見たいんだよ」
「有名だぜ?俺たち、処女狩り軍団」
「やっぱ、やよいとかと違って締まりいいわーー、やっべえ」
「さっすがヒロトさん、処女、見抜くねえ…」
あたしの存在はいま、
この人たちの中ですごく、軽いものになってる
それは、ガムの捨て紙のように、
子供にとってのおたまじゃくしのように、
お祭りで売られたピンクのひよこのように、
無邪気に、
残酷に、
瞬間、
あたしのなかの、
アタシが目を覚ます
「・・・っ、やめろ」
「やめろ!やめろ!!やめろおおおおおおお!!!」
俺は女じゃない
俺を女のように、扱うな
俺の中から出て行ってくれ!!
すぐに!!!
「ぶっ殺す!!!」
俺ならこんなやつらについていかないのに
ばかな恋!
「おつかれさん・・・つか、びびったわ。けっこう言葉使いがさつなんねえ・・・恋ちゃん。」
放心状態のまま車にのせられて、
ひとっけの少ない
家まで歩いていける範囲でおろされる
警察にいきたかったけど
車内で何度もみせられたムービーに足はうごかず
記憶は抹消しようと脳ががんばってる
何度、恋とレンを交差した??
どっちがあたし?
でも、もうどっちでもいいや
恋は汚れた
レンも汚れた
さよなら、巻いた髪と、ミラクの香り
さよなら、焼けた肌の笑顔
さよなら、・・・ブルガリブルー
Dear レン
ずっと、ごめんね。
あたしは弱虫だ。
いろんなことから逃げて
全部、レンに押し付けた。
ねえ、あたしたち
どうしたらしあわせになれるのかな
From 恋
あれから、バスの時間をはやめた
今まで一緒に通学していたあいきは、
あたしを犯したひさしくんと付き合うことになったらしい
最近彼氏の家から来るけいと、バスに乗り込む
これがあたしの最近の近況
「おはー」
いつもどおり、けいは隣に座ると、細い指で、流行のオレンジパールのマニキュアを塗り始めた
不規則に揺れるバスの中で
慣れた手つきで上手に爪に色をつけていく、けい
窓から差し込んだ光の粒が、ぎっしりとラメの詰まったマニキュアに反射して
あたしの目にもキラキラが差し込んでくる
それに、鼻歌交じり
最近良く流れてるアップテンポのラヴソング
今日もあいかわらず、細いのに元気だね。
無邪気な笑顔がうらやましい
あんな事件があってから、あたしは、
自分ひとりだけが辛いって、不幸だって、思い込んでた
あたしだって、誰にも言わずに
ちゃんと笑顔で隠してるのだから、
誰にだってなにかかかえているものがあるんだってことを知ってたのに・・・
「恋、最近げんきないっしょ」
鼻歌がやんで
ツンと来るエタノールの香りの中で
誰も気づかなかったあたしの変化に、
けいは、気づいてた
「へっ??なになに?なんで?」
これはちょっとあわてるし
「あと、ヒロト先輩たちの話しなくなった」
マニキュアを塗りながら、次々と核心を突いてくるけい
かなり心臓ドキドキしてる
なんで、わかんの・・・?
休みがちなけいといる時間って、そんなに長くないはず。
「あたし、あの先輩たちのウワサ・・・知ってる」
ゆっくりと瞳をあわせる、けい
ハナシに集中しているのか、マニキュアを塗る手もやめた
「・・・・・・」
あたしは、言葉もみつからず、
ただ、黙ってしまった。
しばらくの沈黙
「恋、今日…さぼっちゃおっか。」
マニキュアのふたをしめると、窓の外を見つめながら誘う、けい
サボるのは・・・正直中学のころはよくしてた、
中学なら単位もないし、いくら休んでもリスクはなかったし・・・
高校はあまりサボると留年っていうこともある
留年・・・
・・・ヒロトせんぱい
こんな小さな連想ゲーム
それでも胸の奥が熱くなって
その熱が、目頭に流れてきて
あたしは涙の滲んだ瞳でけいの言葉にうなずいていた
高校生活最初のサボリ
高校生になったら、ぜったいさぼったりはやめようと思ってた
ちゃんと、毎日、学校に行く
そんなあたりまえの、みんなが出来ていることを
あたしは目標にしていた。
でも、さっそく出来なかった
決意した自分、ごめんなさい
もっと、意思・・・強く持たなきゃ
補導員の目に付かないところ、と、けいに案内されたそこは地下にライブハウスのあるバーだった
ロンドン帰りのマスターが集めた英国製のアンティーク、少し変わったインテリアが施されている
特にケルト文化がお気に入りみたいで、ところどころ飾ってある妖精の小物が可愛かった
そういえば、結婚するまで処女だったら妖精が見えるって
中学のとき、だれかから聞いた
あたしは、もお見れないね
そんなの、信じてないけど、
たとえ信じててもみれないんだ・・・
「えりつぃん、あたしギネスー」
よくここでサボっているのか、マスターのえりつぃんと、けいはすでに仲良しで、
朝から、クリーミィな泡を乗せたギネスビールを早速オーダーしていた
「恋は??」
あたしは正直、ビールは苦手だった
でも、おかしなことにビアカクテルはだいすきで、
「レッドアイか、シャンディガフありますかっ?」
「へー、ファジーとかカルーアとかゆうかと思ったら・・・大人じゃんー」
「ビールは飲めないけどね」
ふたりで笑顔でかわす会話
そういえば、けいとふたりでこうして遊んだこと、あんまりなかったな
いつも、あいきがいて、三人で。
「かんぱーい」
ふたりで、グラスをくっつけて
乾いたのどにお酒を流し込んだ
他愛のない会話で楽しんで
気づけば、何個目かのグラスが空になっていた。
「恋・・・」
少しアルコールのまわった、赤みの差した頬であたしの名前を呼ぶ、けい
「・・・ん?」
あたしは、ついに核心をついた質問がくることを予想して、
ドキドキしていた
「辛いことはね、吐き出しちゃったほうがラク・・・なんだよ?」
「・・・・・・」
ゆっくりと落ち着いた口調。
あたしは黙ってしまう
「なにがあったかは聞かない。・・・言葉って魔力なんだから。吐き出された瞬間形になるんだよ。だから、いやだったことは言葉にしなくていいの。
でもね、つらかった思いは、ぜーーんぶ体から吐き出しちゃったほうがいいんだよ?ガンみたいなもんなんだから。じぶんでだいじょうぶって思っててもね、案外、知らないとこでガンはすすんでるもんなんだから」
瞬間、
ぜんぶ、見透かされたような気がした
いままであたしが生きてきて、
出会った悲しいこと、ぜんぶ
「辛かったこと吐き出した後はね、ぜったいしあわせになる!!あたしはぜったいできる!なれる!!って、言葉の魔法を自分にかけてあげんの・・・あたし、よく家のトイレとかでやってる。・・・ばかみたいだけど、これが案外元気でるんだあ」
そう言って笑うけいは、すごくきらきらしてた
「けい・・・あたし、」
震える声
たぶん溢れてる涙
首から上がすごく熱くて
あたしはけいに抱きついて、声が枯れるまで子供みたいに泣いた
数時間後には
涙はだまって
蒸発していった
そう、あたしの痛みなんて
だいじょうぶ
あたしは強いから
「ぜったいしあわせになる!!あたしはぜったいできる!なれる!!」
お酒まじりの呪文
ふたりで唱えた
けいは、確かにきらきらしていた。
だから・・・・・・・・・・・・気づかなかったんだ・・・
「お前、まじキメー。調子こいてんじゃねえよ。」
「や・・・っ、やめて!」
「おまえらー・・・あいつと口聞くなよーー」
「・・・っく、・・・ひっく」
「こっちくんじゃねえよ。ちかよんな!」
中学のころのおもいでは
最悪なことばかり
あたしは転校生で
中2のはじめにこの町にひっこした
もともと髪の明るかったあたしは
そういった類の友達はできたものの、
彼女や彼らは、優等生ばかりのこの中学では浮いてしまって、
学校にあまり来ないで外で遊んでる
だからあたしは、学校では
何人かの友達といて、
それはそれで楽しかったの
日下部時哉
あんたに出会うまでは・・・
三年生の春
クラス替えをした
あたしは、まだ、前の学校の親友と毎日連絡を取り合うほど、前の場所に依存していた
携帯代が10万をこしてしまってからは、
制限されてしまって
一日30分まで。
会えない距離じゃなかったから、時折学校をさぼってふたりして街に繰り出すようになった
月曜日、昼から学校に行き、給食を食べて帰る
火曜日、朝学校へ行くフリ。そのまま街で友人たちと待ち合わせ。サボリ
水曜日 午後だけ登校
木曜日 朝から登校。だるくてずっと保健室。昼に早退
金曜日 一日サボって街
こんな毎日を過ごしていた最中のクラス替え
当然、最悪で。
挨拶を交わすともだち
給食を食べるともだち
トイレに一緒に行くともだち
あたしに与えられたのは、ほんとうにうわべだけの“ともだち”
そして何より、
「うわー、遅刻魔と同じクラスかよ。きもちわりー」
二年のとき隣のクラスだった日下部時哉。
あたしにとって、悪魔のような男
「お前さー・・・なんで、んな髪明るいわけ?可愛いと思ってんの?校則も守れねえのかよ・・・社会のクズじゃね?」
日下部時哉は、学年でも有名な男子生徒。
頭は良く、両親は大学教授をやっていて家は裕福。
同時に野球部エースで人望も厚い。
一見害のある人間ではなくて。
でも、こんな人間を敵に回したときの、
ジゴクは・・・・・・
「あーあ。あんなやつと同じ教室で同じ空気吸いたくねーー・・・ばかになりそ。」
こんな言葉が毎日ふってくる
けいのいうとおり、言葉は確かに魔力で、
しっかりと反抗していたあたしも
何度も巧みな話術で言いくるめられると
もう、そのまま
自分が本当にクズなんじゃないかって、思えてくる
確かに、
学校をサボって、
もともと明るい髪をさらに染めて
親を泣かせて
やるべきこともしないで
あたしは大人になりたくなかった
大人になったとき、
ほんとうに何の可能性もない、クズだって思い知らされそうで怖かった
こんなミタメのあたしが、テストで割りと良い点数をとれば、
「お前、カンニングしてんじゃねえよ!!」
机を蹴って教室を荒らす
大声
鋭い目つき
周りに集めた生徒たち
全部
全部
あたしをおびえさせるため
あたしを追い詰めるため
昼から登校すれば
「学校くんじゃねえよーーー!!!!遅刻魔―――!!」
教室にはいった途端叫ばれて
目の前がまっしろ
もちろんうわべだけの友達は、
守ってくれることも、
私に、ちゃんとしなよ、と叱ってくれる事もなく
もうあたしに話しかけるのは、
学校では、
日下部時哉だけになっていた
繰り返される暴言・・・そして、暴行
時哉は、言葉だけではことたらず、
傷
きず
キズ
こころもからだもあたしは傷だらけだった
どうしてなの?
あたし、あんたになんかした??
そして、やっと開放されると思っていた卒業式・・・あいつは言った
「俺、お前と同じ高校だから。また三年間よろしくな?」
絶望の雨があたしを刺した
こんな、あたしの中学時代。
高校に入って楽しい生活を送りながらも、いつ、時哉に邪魔されるかと思って心の底ではずっとビクビクしていた。
でも、時哉は一組であたしは七組。
校舎の端と端のふたりは、すれ違うこともレアだった。
あたしは、あたしでほっとしていたけど。
前に体育の授業の前に、すれ違ったとき・・・
にらまれて、そらされた瞳を忘れられないでいた。
さすがに、あたしの中学校生活をめちゃめちゃにしたこの男。
あたしだって少しはむかつく。
だからって、なんか文句言ってやろうとは思わないけど
あたしはやっぱり、時哉がこわいんだ
出来るなら、かかわりたくはない
でも、
やだやだと思い出すときほど
そんなことは起きる
けいとふたりでバーでサボった次の日、
あたしたちは担任に呼び出された。
「藍原けい。
若葉恋。
放課後、生徒指導室に来るように。」
生徒指導室、かあ・・・
ついに、高校でも生徒指導室デビューをしてしまった
思わず深いため息
でも、無断欠席くらいで呼び出されるほどうちの学校もまじめじゃない
もしかしてお酒を飲んだことがばれたんじゃないだろうか
そうなったら・・・さすがにヤバイ
でも、だとしたら・・・
だれが・・・?
あの場にだれかいた?
ううん、だれもいなかった・・・と思う
いたとして、名前までわかる?
「あは、呼び出しくらっちゃったね」
小さく舌を出して笑っているけいの隣で、
あたしはショックというよりも、
少し混乱していた。
「・・・はい、はい・・・すみませんでした。」
「ごめんなさぃい」
あいにく二人でお店に入ったところまでしかばれてはなくて、
あたしたちはお酒は飲んでいないと言い切って、逃げた。
もう、ほんとうにこんなことはやめなきゃ
でも、こころにひっかかる
けいは、お手洗いが我慢できないとかで先に戻っていった
生徒指導室には少し開いた窓から日差しが差し込んでいる
担任とふたりきりになった
「あの・・・・・・先生は、どうして知ってるんですか?あたしたちのこと・・・」
あたしはすこし、遠慮がちに言ってみた
教えてくれたらラッキーだと思う
わかったからってなにするとかじゃないけど
「ん?日下部だよ。あいつは出来のいいやつだぞ、お前たちのこと心配して教えてくれたんだ。本人もこの旨を伝えてほしいって言ってたからなー・・・結果としてはこうなったけど、言いがかりとかつけにいくんじゃないぞ?」
「・・・はい」
・・・だって、あたしとけいの乗るバスはよく、時哉がいた。
もう関わりたくない
関わりたくないのに
「まじ、あせったよねえ、まだ一ヶ月もたってないよー入学からさあ」
「うわーーふたりでさぼるとかまじ、ずるぃしー。あたしも酒好きなんだからつれてけー」
あいきと、けいが楽しそうに会話する横で、
あたしは時哉のことが頭から離れなかった
頬から滑らせた手でゆっくり耳をふさぐように、
現実逃避しかけたあたしにクラスメートが
「恋――、1組の日下部くんーきてるよー」
「・・・っ」
視線をやれば、教室の入り口に時哉がたっていた
久々に見る時哉は少し背が伸びていて
うさんくさそうに微笑んでいる
「えーーなになに、恋、あれ、新入生代表で挨拶してた日下部時哉じゃんー。あいき、顔けっこう好きー」
「えー、けいはびみょー。顔はいいけど、ああいうまじめタイプつまんなさそ」
茶化すふたりを残して、足が震えないように強気を保ってやつのところへ近づく。
きっちりと締めたネクタイ
片手にはノートを持っていた
たしかに時哉は、顔は整っている・・・とは思う、
でも、尋常じゃなくあたしにとっては恐怖で、嫌悪の対象
「・・・なに?」
出来るだけ、屈しないようにそっけなく
「いや、・・・久々なのにそっけねえな。早速生徒指導室デビューの若葉サン」
いやな、声
いやな、笑み
「なんで・・・なんでこんなことすんの、あたしが悪いことはわかってる・・・だからもうあたしには構わないで」
一気に言って、背を向ける
あたしは逃げるようにけいたちのもとへ戻ろうとした
瞬間
「わかった、じゃあ・・・もうこういうチクルとかはしねえよ。中学のときみたいなことも、俺だってもう暇じゃない。そのかわり、ちょっと携帯かせ。」
「・・・え」
心底いやそうに表情をゆがめる
中学のころ、マナーモードにし忘れて授業中に携帯が鳴ってしまったとき
こともあろうに、放課後こいつに携帯を奪われ、折られたのだ
「・・・ぜったい嫌」
「もう折ったりしねえよ・・・いいから、貸せ。」
イーストボーイのグレイのセーターの、
ゆるゆるなポケットに引っ掛けておいただけの携帯はすぐに奪われてしまった
「・・・・・・」
「・・・・・・」
言ったとおり携帯に危害は加えてないようだ
でも、なに、
まさか、赤外線とかしてる?!
まじやめて!!
「ちょ、なにしてんのっ」
「ほら。あんま俺を疑ってばっかりいるなって。俺だってあんな遊び飽きたんだよ」
乱暴に投げて返された携帯
ってゆうか
あんなに苦しんだあんたとの中学時代・・・
あれが、遊び??!!
正直、あたしは、怒りがかなりキテたけれど、
それよりも、こいつともう関わりたくなくて無言で背を向けた
小さく聞こえた舌打ちを無視して、
けいたちのところへ急いだ
「・・・ああいう遊びはもう飽きた、次は・・・新しい遊びだな、」