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約1000字短編

観察

作者: 真

 ヒトは元々サルだったという理由でサルの知力を上げることを目論んだ。

 初めのうちはうまく行くことばかりではなく、数を数えさせることすらままならなかった。サルに火をつけさせることに成功したのは最初の研究が行われてから数百年後のことだった。

 そのころサルはようやく自立を始め、人並みの生活に少しだけ近づきつつあった。

 それでも彼らの知力はまだまだ乏しい。せいぜいその辺を走るウサギやあるいは川の魚を捕まえて食料にするばかりで、やはりヒトの保護がなければどうにもその規模は大きくならないほどだった。

 しかしヒトはその経過を見守った。下手に外部から力を加えることはサルの知能を下げる悪手になりかねないからだ。

 彼らサルがコメやコムギ、あるいはイモと呼ばれる穀物を発見したのはもっともっと先の出来事だったし、穀物を育てるという発想に至ったのもさらにもう少し先の話だった。

 しかしそうしているうちに、やがてサルは繁殖した。つまり、代を重ねるだけではなくその絶対数を明確に増やし始めたのだ。そうして次々と生まれくるサルには高い知能を示すものも現れた。

 サルはさらに発展した。知能の高いサルが知能の低いサルに命令することで身分が生まれた。意思疎通を図るための手段として文字が生まれ、そこからはヒトの思い描いたサルの時代が到来したと言えた。

 ヒトはこの状況に歓喜した。我々がサルからヒトへと進化したのと同様に、このサルもヒトへと進化を遂げたのだ。その経過は様々な学会で発表され、貴重なデータとして残されることとなった。このサルたちはそれ以降、『人』と呼ばれることになった。ヒトと同じようなものとして別の字を当てられたのだ。

 人はなおも発展した。ときには群れと群れが対立して仲間を失うこともあったが、それが発展の原動力になったこともあった。人は相手と競い始めると急速な発展を遂げた。いつしか産業革命を起こし汽車が作られた。そして人は電気を見つけ出しインターネットをも作り出した。手先は昔よりも遥かに器用になり、あちらこちらでパソコンのようなものを打つ音も聞こえ始めた。人がヒトの文明に到達したと言っても良い瞬間だった。

 ヒトはそれでも人を見守った。人よりも遥かに発展した科学を持っているヒトは、人に気づかれることなく人の見ることのできない遠い遠い星から彼らを見守ったのだ。

 そして人はまた新たなことを発見した。

 人の祖先はサルだったということを。

ちょっとオチが弱いかもしれません。

人を恐れたヒトが人を侵略する(人には宇宙人の侵略に見える)という展開も考えたのですが、

文字数と物語のスマートさを天秤にかけたとき、こちらを採用しました。

我々が住む地球もこのような状況であることを否定はできないんではないかという、

そういうちょっとした気味の悪さも感じてもらえればと思います。


お読みいただきありがとうございました。

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