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81話 ボンバーマンと一緒!


 永禄3年(1560年)11月 山城 葛野郡 御室村



「ここが、仁和寺なの? なにもないじゃない」


「仁和寺だった場所ですな」



 いま私が立っている場所は、かつて仁和寺であった場所らしいです。"にわでら"や、"にわじ"じゃないよ? 仁和寺は、"にんなじ"と読みます。私のご先祖様でもある、宇多天皇の時代の年号から取って、仁和寺としたのでしょうね。

 そう、仁和寺とは、宇多天皇ゆかりの寺なのです。この寺の創立者でもあります。まあ、いま現在は寺は無いですけど。私の目の前に広がるのは、辺り一面の草木と、僅かに寺だったと思われる痕跡のみであります。


 ご先祖様のお墓参りといいますか、宇多源氏の創始者ゆかりの寺を興味本位で訪ねてみたら、このザマだよ!



「ものの見事に朽ち果ててるわね」


「応仁の乱で焼け落ちたと聞き及んでおります」



 それで、私の質問に受け答えしてくれている御仁は、みんなも大好きな、戦国時代で圧倒的一番人気どくだんとへんけんのアイドルである、ギリワンことボンバーマンさんです! まあ、本名は、松永久秀とかいうらしいですよ?

 上洛した私に対して、幕府と三好が付けてくれた接待係がボンバーマンだったのです。京や畿内に不慣れな私の為の案内人ですね。まあ、幕府と三好から監視されているともいうのかも知れませんが。


 松永久秀自身は、五十前後のジジイ未満オッサン以上で、額が大きくて、いかにも頭が良くてキレそうな感じの御仁ですね。額の、前頭葉の部分が少し出っ張っているから、脳味噌一杯詰まってますよ!ってな感じですかね?

 目も大きくてギョロっとしているのが愛嬌があって、切れ長の目よりも親しみが持てると思います。なんていうのかな? 金魚の出目金みたいなイメージ? 多分だけど。


 しかし、仁和寺が応仁の乱で焼失してたとはね。寺や神社を戦に巻き込んだ挙句の果てに焼くだなんて、普段の信心とか信仰心はドコに行ったのやら。そう、小一時間問い詰めたくなる気分にさせてくれますよね。

 人間という生き物は、所詮、自分が祈りたい時に祈ったり、お参りしたい時にお参りするだけなのかも知れませんね。それで自分の都合が悪くなれば、平気で神社仏閣をも焼ける、と。


 まあ、それが人の生き方なのを否定はしませんけど、もう少し文化財の保護とかにも、気をましていただけたら幸いかなぁ。と、思わなくもない。



「なるほど、それから100年近くも再建されずに、ほったらかしということか」


「乱れた世なので、再建する余裕もないのでありましょうな」


「戦乱をへて をさむる寺も こけなれば、か……」


「こころさらめき わかもうたへず」



 むぅ、無意識に五七五になっていたみたいでしたね。



「弾正殿、歌ってますがな」


「別当様に続いて、下の句を歌ったまでにござります。兼好法師ですかな?」


「徒然草だったかな? 卜部何某さんの」


「兼好法師、卜部兼好ですな。別当様はお若いのに博識でおられる」



 あー、そっか、徒然草は吉田兼好だったのか。卜部→吉田なのに、ど忘れしてたよ。しかし、兼好法師とは…… 卜部は吉田神社の神職の家系のはずなのに、仏の道に入って出家してたんだ。ふてぇ野郎だな。おい。



「弾正殿に、別当様なんて呼ばれるのは、面映ゆいわね」


「左様ですか?」



 このオッサンは、私をおちょくって絶対に楽しんでやがるだろ! まあ、それで、私の人となりを見極めようとしているのだと思いますけど。



「べつに、玉姫で構わないよ」


「しかし、某は御相伴衆でも守護でもござりませぬ。一介の三好家の家臣でありますれば」


「でも、幕府の御供衆に任命されたんでしょ?」


「御供衆は、御相伴衆よりも格下でござります」



 むー、謙虚なボンバーマンですね。松永久秀って、もっと慇懃無礼といいますか、傲岸不遜なオッサンだと思っていたのですが、人は見かけによらないということですかね。

 後世の歴史で、面白おかしく悪逆非道に書かされすぎな影響をモロに受けているから、被害者なのかも知れませんね。ボンバーマン本人も、歴史を知る私も。


 まあ、猫を被っているだけの気もしますが、私程度の頭脳と人物眼では、残念ながら見抜けません。能ある鷹は爪を隠すとかいいますしね。私の場合はピノキオか天狗になった挙句、木に登って落ちちゃうのですがね。



「私の相伴衆任命は飾りだよ。出雲にいたら、なにも出来ないんだしね」


「箔を貰ったと割り切ってるのですな」


「公方様の恩の押し売りの薄っぺらい箔でも、多少は領内の統治と他国への見栄には使えるでしょ」


「身も蓋もないもの言いですな。まあ、否定はしませんがの。公方様も室町第の権威回復に躍起なのですよ」


「それに、弾正殿のほうが位階は上なんだしさ」



 私が従五位上なのに対して、ボンバーマンは正五位下、弾正少弼なのですから。でも、上杉謙信も弾正少弼を貰ってなかったっけ? 弾正少弼の定員は一人のはずなんだけど、どういうことなんでしょうかね?

 正当な弾正少弼は誰がどう見ても、三好の重臣で幕府御供衆でもあるボンバーマンですしね。上杉謙信の弾正少弼は自称なのかな? でも、上洛して内裏の修理まで手伝っている謙信に対して、官位を与えないなんて考えられないですしね。


 弾正台なんて使われていない名誉職みたいなモノですので、定員オーバーになっても問題ないということで、もしかしたら朝廷が官位の安売りしたのかも知れませんね。まあ、あくまでも私の想像でしかないですけれども。

 朝廷の官職には有名無実は官職が多々あるのですよ。式部、民部、治部、刑部、などなど、上げたらキリがありません。近衛大将だって、公家では軍勢を揃えられませんしね。まあ、朝廷が権力を手放してしまったのだから、仕方がないのですがね。



「分かり申した。これからは、姫様と呼ばさせていただきます」


「うん、よろしくね」


「ん? 姫様が差し出した手は、なんですかな?」



 そっか、この時代には、まだ握手の文化はなかったのか。もう既に南蛮にはあるのかな? 南蛮人に詳しいはずのボンバーマンが知らないとなると、南蛮にも握手文化があるのか微妙ですよね。



「親愛の証の挨拶だよ。手と手を握るから握手とでも名付けますか」


「なるほど、それは良き挨拶ですな。では、」



 ボンバーマンが差し出してきた手を握り返しましたが、うん、さすがは松永弾正の手ですね。ゴツゴツしていて年季が入った手をしています。あー、いま考えると、信長とも握手をしておけばと、後悔しちゃいましたよ。

 あの時は、信長と握手するなんて思いつかなかったのだから、仕方がないのですが、残念でした。



「それでは、次は、仁和寺と徒然草に託けて、」


「石清水八幡宮へ参られますかな?」



 むむっ、さすがは、私が見込んだ男で文通友達でもあるボンバーマンですよね。仁和寺と徒然草から、間髪入れずに石清水八幡宮を連想するのですから、頭の回転が速いなんてもんじゃありませんよ。キレにキレまくってますがな。

 うん、三好長慶と足利義輝が、松永久秀を重要視して重用するのも分かるというものですよね。重要と重用って駄洒落かよ。



「少しのことにも、先達は、あらまほしきことなり。だよ」


「それでは、姫様が仁和寺の坊主にならないように、某が畿内の先達として案内いたしましょうぞ」



 私も、あれから少しは、あらまほしきを、古語を勉強したのですよ。でも、いまだに、あらまほらしきって言いたくなる!



「そういうこと! 石清水八幡宮へレッツらゴーよ!」


「れ、れっつらごう……?」


「気にしないで、南蛮の言葉だよ」


「はぁ、姫様が南蛮の言葉まで理解できるとは驚きましたぞ」



 まあ、レッツらゴーは英語だから、堺に来ている南蛮人には通用しないと思いますがね。南蛮人はポルトガル人とスペイン人がメインだった気がしますので。イギリス人とオランダ人は南蛮人じゃなくて、紅毛人とか呼ばれてたんでしたっけ?











「しかし、おひいさま。京の都とはいっても、あまりパッとしませんよね」


「それは私も春姉と同じ気持ちかな? 確かにパッとしないね」


「なんだか、ガッカリしちゃいましたよ。これなら、富田や杵築の町のほうが栄えている気がしますね」



 確かに春姉の言うとおりであって、富田や広瀬の城下町と杵築大社の門前町のほうが、街並みも綺麗ですし賑わってもいる感じなのです。人の数だけならば、京のほうが多いのですがね。


 まあ、京と畿内を中心に100年近くも戦乱の世が続けば、荒廃してこうもなるんじゃないかな?



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