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67話 尼子倫久

徹夜して書いたから話がおかしい気がするけど、気にしたら負けです><


「亡き尼子晴久が三男、源五郎にござりまする。毛利家の皆々様におかれましては、よろしくお願い申し上げまする」


「うむ、少し覇気に乏しい気もするが、それが己の分を弁えてのことなら、源五郎殿は玉姫を支える良き将に成れるであろうぞ」



 うーん、確かに源五郎兄ぃは、縁の下の力持ち、副将タイプなのかも知れませんね。秀吉の弟である秀長や、信長の忠臣である丹羽長秀みたいな感じでしょうか?

 まあ、源五郎兄ぃが、秀長や丹羽長秀みたいな優秀な人物に成れるかどうかは、これからの成長に掛かってはいますけれども。でも、ここはジジイの言葉に乗って褒めるべきですよね。覇気に乏しいは聞かなかったことにしましょう。



「源五郎兄ぃ、陸奥殿に良き将に成れるってお墨付きをもらえたわよ!」


「う、うん。僕が大将の器ではないのは、僕自身が一番分かっているから、玉には逆らわないで大人しくしてるよ」



 私も大将の器があって、やってるわけではないのだけどね。元々は小市民のニートなんだし、事の成り行きで仕方なく当主の座に納まってしまっただけですから。



「それが宜しかろうて。己の分を弁えずに暴走して、玉姫に潰された義久殿の件もありますしのぉ」



 うわー、このジジイは自分で義久を焚き付けておいて、しれっとのたまいやがったよ。さすがに面の皮が分厚いですよね。



「それで、元服するにあたって源五郎殿の諱は決まっておるのか?」


「うーん、尼子の通字である"久"を下に持ってくるのは当然としても、悩んでいるのよねぇ」



 チートジジイから一字貰って元久や就久でも良いかな? って一瞬だけ頭をよぎったけど、それでは尼子が毛利の下に見られるので、家臣達や世間の受けが悪いので没になりました。だから、こうして悩んでいるわけなんだけどさ。



「ワシの一字を与えるのも外聞が悪いしのぉ。そうじゃな、倫と書いて倫久(ともひさ)は如何かの?」


「尼子倫久……」



 あるえー? 史実でも尼子義久の弟で尼子倫久って武将は存在していたけど、やはりといいますか、やっぱり源五郎兄ぃのことだったんですね。私も恐らくは源五郎兄ぃが史実の倫久に成った人物なのでは? と、薄々は思ってはいたのですけれども、

私というイレギュラーな存在の所為で確証が持てなかったのです。実際にその名前を聞かされると、感慨深いモノがありますよね。



「うむ、倫は人の守るべき道。または、仲間という意味じゃな。玉姫を支える家臣としての人の道としての倫。そして、尼子家中の和になる仲間としての倫じゃな」


「なるほど……」



 倫で最初に思い浮かんだのが不倫だなんて、口が裂けても言えない。私の心は汚れているのがも知れませんね。おかしいなぁ。玉ちゃんはピュアで純真無垢で誠実な巫女のはずなのにね。おかしいですよね?

 といいますか、この時代に不倫って言葉あるのかな? 聞いたことありませんね。


 思考が不倫してしまった。そうじゃなくて、



「源五郎兄ぃ、義父上様が提案してくれた倫久でいい?」


「う、うん、倫久。僕も良き名だと思うよ」


「それじゃあ、源五郎兄ぃは今日から、尼子源五郎倫久よ!」


「うむうむ、ワシの言が役に立ったのであれば幸いじゃのぉ」



 しかし、倫久の名を出したのが、よりにもよって毛利元就だなんて、これが歴史の修正力というヤツなんでしょうか?



「それで、烏帽子親のお礼と和歌姫を貰うお礼に、毛利に米を一万石あげるわ」


「い、一万石も、ですか? それは、頂ければ毛利としては助かりますが」



 うん、隆もっちゃんが驚くのも無理はありませんよね。一万石といえば、半俵で六万俵ですもんね。この米不足で飢饉寸前の時期では、途方もない量だと思いますし。



「よいのか? 昨年は尼子領内も凶作であったのじゃろう?」


「尼子領内は大丈夫よ。昨年の内に明の商人から大量に米を買い付けたから」



 米蔵に米が入りきらなくて、慌てて蔵を増やしたぐらいですしね。だから、浦上との戦において毛利の軍勢にも気前良くホイホイと兵糧を回せたともいえるのです。まあ、そのおかげで、備前を取ってしまったのは痛し痒しではありますが。

 ついでに、目ぼしい村には義倉も建てちゃいましたしね。義倉は継続して領内の村々に建てていく予定であります。



「博多や堺で米を買うのではのうて、玉姫は明から買ったと申すか」


「なにゆえ玉殿は、米をわざわざ遠く大陸の明から買ったのですかな?」


「日の本で米を買い付ければ、日の本の他の国でも米が不足するかも知れないでしょ?」


「なるほど、玉殿は昨年の凶作が山陰と山陽だけではなく、玉殿は日の本の各地が凶作であったと理解しておるわけですな?」


「日の本六十余州全ての国が凶作だったとは思わないけど、最低でも五十州ぐらいは凶作だったみたいですしね」



 鉢屋衆と歩き巫女の調べで、昨年は日本各地が凶作であったと分かったのですけど、私が予想したとおりでしたね。日本は狭いので凶作になれば、最低でも東日本と西日本の大きな区分で凶作になりそうですしね。それで、尼子領内の山陰が凶作だったので、

まず中国地方の大部分も凶作であろうと考えたわけです。そして、西日本よりも気温が低いはずである東日本が、例年並みかましてや豊作などあり得ないと考えたら、そこから導き出される答えはおのずと決まってますよね。


 そう、全国的な凶作。



「隆元も今年の飢饉を見越して、昨年の内に博多と堺で米を買い付けておったが、上には上がおったのぉ」


「左様ですな」


「博多や堺で大量の米を買い付けてしまったら、九州と畿内の人たちに恨まれるのよ」



 とくに凶作の年は、なおさら恨まれるはずですしね。だから、私はわざわざ明から米を輸入したのですから。いくらこの時代の価値観では、畿内や九州とかが他国とはいっても、私からすれば同じ日本ですしね。

 同族で米を奪い合うのは、いかがなものかと思うのですよ。



「九州で恨まれるのは、豊前と筑前の仕置きに影響が出て、ちと不味いのぉ」


「父上、面目もありませぬ。某は毛利領内のことを考えるのが精一杯で、その後の仕置きにまで考えが及びませなんだ」



 まあ、私が異端なだけであって、この時代では隆もっちゃんの考え方が普通なんですよね。



「まあ、九州の米は、やや不作程度でしたので、そこまでは恨まれないと思います」


「そうだと良いのですが……」


「それに最悪の場合は、悪いのは米を売った商人とでもしておけば、恨みも分散されるかと」


「商人を悪人に仕立て上げるとは、玉姫は悪辣じゃのぉ」



 私のどこが悪辣なんですかね? こんなにも私はプリチーでキュートなのに失礼しちゃいますよね。私は客観的に事実を述べただけですってば! 私が悪辣なら、チートジジイは極悪人だと思いますよ?



「米を売る人間がいなければ、買えないのは事実だよ」


「それは確かにその通りじゃの」



 まあ、詭弁かも知れませんがね。



「それはそうと、尼子から送る一万石だけど、何回にも分けて送るからね」


「それは致し方なかろう。量も量じゃしの」



 馬が引く荷車に載せれるの量は、主に馬の体力を考えてですが半俵六個が限界です。一石ですね。つまり、荷車一万台分が米の輸送に掛かるのです。そんなに一度に運べる馬も荷車も尼子にも毛利にも当然ながらありませんので、分けて運ぶことになります。

 米を運ぶ荷駄隊には、当然ですが尼子の旗がひらめいてます。ひもじい思いをしている時に、尼子が米を運んで来てくれたのなら、『尼子からの米が到着したぞー!』『ありがたや、ありがたや』そうなると思いませんか?


 いまは同盟関係にあるとはいえ、なんといっても一年前までは敵同士で殺し殺されしてた間柄ですしね。いくら、私とチートジジイや重臣たちが納得していたとしても、下の連中が納得しているとは限りません。

 なかなか割り切れない人もいるわけでして、そういう毛利の領民や毛利配下の国人領主たちに、尼子に対する心証を良くする絶好のアピールにもなるわけなのであります。


 あー、そう考えると、毛利が手伝い戦に徹して備前を尼子に譲ったのも、尼子に毛利の心証を良くする為でもあったのかな? まあ、一番は豊前と筑前に傾注したいが為だとは思いますけど。

 でも、尼子家中では、『毛利は姫様に遠慮して備前を譲った』『毛利は尼子との同盟を邪険にするつもりはないようだ』とかの噂がチラホラと私の耳にも入っているのですよ。チートジジイは情報の扱いが上手いですよね。



「それで、毛利領内で不足する米を補うのに、一万石で足りそう?」


「さすがに、これ以上は玉姫に甘えるわけにもいかんわい」


「左様ですな。いまでも十分に甘えておりますからなぁ」


「まあ、だから毛利の名目が立つように、和歌姫との婚約の返礼にしたんだけどね」



 これは、和歌ちゃんがジジイに一万石の米で、尼子に身売りされるとも受け取れるのかな? まあ、私から和歌ちゃんを強奪しに押し掛けたのですがね!



「かたじけない」


「その和歌じゃが、出雲に向かうのはいつ頃が良いかの?」


「まだ、和歌姫は十一でしょ? 二年か三年後で十分だよ」


「それでよいのか? 尼子で養育する手もあるのじゃぞ?」



 尼子で養育って、誰がするのさ? 和歌ちゃんと一つしか違わないのに、私が養育するんですかね? 精神年齢は前世と今世を合わせて、既に三十路半ば以上のアラフォーではありますけど。 ……だと思いたいです。



「私の母も、とっくの昔に鬼籍に入ってますし、知らない大人ばかりだと和歌ちゃんも不安だろうから、大きくなるまでは大膳大夫殿の手元で養育して下さい」


「かたじけない」


「大膳大夫殿は気になさらないで下さい」


「かたじけない」



 さっきから隆もっちゃんは、『かたじけない』しか言ってませんね。娘を嫁に出す哀愁が漂ってましたし、まだ三年は手元に残して置けるのが嬉しかったのでしょうね。

 この時代の武家では、泣く泣く娘を子供のうちから嫁ぎ先に送り出すなんて話は山ほど聞きますしね。悲しいけど子供の人権など無きに等しい時代なのですから。うん、偽善だけれど、和歌ちゃんの人権をほんの少しだけ守れたと自己弁護しておきましょう。


 和歌ちゃんの結婚相手を強制的に決めた私が言っても説得力はないですよね。



「僕のお嫁さんが三年も来ないのか……」


「源五郎兄ぃ! 女子は未成熟で嫁ぐと身体に負担が掛かるのよ!」


「え? そうなの?」



 まあ、源五郎兄ぃは知らないから仕方がないのですけど、ちょっとイラっときちゃいましたよ。



「そうだよ。もし、身体が未成熟のまま赤ちゃんができたら、産む時に母体に負担が掛かりすぎて命に関わるのよ」


「うーむ、確かに赤子を産む時に死ぬのは、若い女子のほうが多い気がするのぉ」



 出産時の出血多量で死亡するとかもありますけど、こればかりは、この時代では対処が出来ませんので諦めるしかなさそうですね。あー、そう考えると、私も産まなければいけないのに怖くなってきましたね。だがしかし、

 私は尼子の当主なのですから、逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃ……


 でも、母体が未成熟だと出血も多そうですので、やはり女性の身体が成熟してからの出産が望ましいということになりますね。あとは、消毒とかでしょうか? そういえば、転生知識チートの王道である石鹸を作るのをすっかり忘れてましたね。

 なんで、いままで石鹸を作るのを忘れていたんだろ? 解せん……


 私なりに一杯一杯で、余裕がなかったのかも知れないと言い訳をしておきましょうか。うん、心の安寧のためにもそうしとこう。あ、蒸留酒からエタノールもどきが作れますね。火が点くぐらいのアルコール度数ならば消毒に使えそうですよね。

 その他は、おいおいと考えて行きますか。忙しくて忘れそうだけど……


 っと、思考が脱線してしまった。



「個人差はあるけど、最低でも出産するのは十六歳以上が望ましいわね」


「玉殿の申すとおりならば、和歌を嫁に出すのは十六になってからでも良いということですかな?」


「種付けは一年前から出来るわよ」



 まあ、危険日を避ければ一年前とか言わずに、やるだけならやれるのですがね。なんで、前世が男だった私がそんなことを知っているのかって?

 そんなの決まってるじゃない! わらべのみかどではなかったからですよ。引き籠もりニートが、わらべのみかどだと誰が決めた?

 まあ、魔法が使えるかどうか確認できる前に転生してしまったのですがね。


 断じて、ネットで検索してハァハァしたなんてことはない! 断じて!

 そんな子供じみた行為は、国語辞典で卒業しておりまする。



「た、種付け…… 確かに種付けですが……」



 種付け以外になんて言うのさ。この時代にセックスなんて言っても、なんじゃらほい? でしょうし。性交ですかね? 睦言かな?



「おひいさま、言い方がはしたないですよ!」


「じゃあ、春姉ならなんて言うのよ?」


「閨を共にするとか、同衾するとか、もごもごもご……」



 なるへそ。しかし、最近どうも思考がそっち方面に流されやすくなっていますね。これではいけませんよね?


 気を引き締め直さねば! 私は健全な巫女なのですから!




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― 新着の感想 ―
[気になる点] 後、歩き巫女何処で設立したの?出来たのは、武田信玄だからもうちょい後じゃね?
[一言] 不倫と言う言葉が無いのは、1、女性の地位が低いため。2、主人公が前に言った女性は世継ぎを生んで貰わないと家が途絶えるので妾を設けるのでそこで堂々と不倫しようが問題ないとされていたため。エトセ…
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