158話 義父上様も、八百万の神々の声を聞いてみます?
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|・ω・`) そ~~・・・
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|―u' 旦 <コトッ
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| ミ ピャッ!
| 旦
ずずぅ~…… もぐもぐ…… ずずぅ~…… もぐもぐ……
「よう食うのぉ」
この時代は甘味が限られているのだから、甘い饅頭には目がないんだよ。
それに育ち盛りの年頃ですしね。まあ、もう既に赤ちゃんを産んでいる母親でもあるのですけど。
葉月を出雲に置いてきちゃったから、お乳を飲ます赤子がいなくて、たろさに飲ますしかお乳の張りを取る方法がないのが玉に瑕なんですよね。
まあ、たろさも相変わらず「味がしない」とか文句を言いつつも喜んでお乳を飲んでくれますので、私としてはお乳を絞らずに済んで助かってはいるのですが。
あ、葉月のことを考えたら、葉月に会いたくなってきちゃったよ。葉月を一緒に連れて来れれば良かったのですけど、まだ生後三ヶ月の赤ん坊に旅はきついですよね。
そう考えると、私が安芸に来るのを自重すれば良かったのでしたか……
乳飲み子を抱える母親としては、それが正解なんでしょうけど、残念ながらも私は為政者でもあるのですよ。
為政者としては、今回の安芸訪問は必要なことだったのです。
そう、なるべく早く戦国時代を終わらせるためにね。
「それで、宇佐方面の状況は?」
「浦部衆は内応の約束を取り付けてはいるが、どこまで信用できるのかは未知数じゃな」
海賊なんて、そんなもんでしょうね。
「船戦になった時に、お手盛りでしゃんしゃんして退いてくれれば儲けものと思わなければ、水軍との付き合いなんてやってられないわよ」
「姫は若いのに達観しておるのぉ」
まあ、前世を含めたら四十は越えているはずですしね。
「それと、船を動かせる人間を育てるには時間が掛かるのだから、現状では敵方に所属している水夫だとしても、なるべくなら死なせたくないんだよね」
「南蛮との貿易を見据えてということか?」
「それもあるけど、琉球や台湾を日の本に組み込みたいのよ」
「タイワン?」
そういえば、台湾という名前では、まだ誰も呼んでなかったのでしたね。
「ああ、高山国とか呼ばれている、琉球の西にある九州と同じぐらいの大きさの島のことです」
「そういえば、琉球と明がある大陸との間に大きな島があるとか聞いたことがあったのぉ。呂栄とはまた別の島なのじゃな?」
「ルソンは台湾の南ですね」
「相変わらず姫巫女は、ワシが知らんことも詳しく知っているのじゃから驚かされるわい」
まあ、知っているとはいっても前世の知識を使ったインチキなんだから、あまり人に自慢は出来ない気もするんだけどねー。
でも、インチキ万歳!
「義父上様も杵築大社で修業して、八百万の神々の声を聞いてみます?」
そうすれば、もしかしたら本当に神が降りてくるかも知れませんよ?
なんといっても、神降ろしを経験してなおかつ木花咲耶ちゃんから加護を授けてもらった、私という例があるのだから、チートジジイにも可能性は無きにしも非ずだと思いますし。
上杉謙信なんかは本当に、毘沙門天から加護を授けてもらっていそうですしね。
そうでなければ、ただ単に中二病の痛い人になっちゃいますしね。
「いや、さすがに生き残るためとはいえ、ワシはこれまで散々に人を殺めてぎたので、八百万の神々もワシには加護を授けてはくださらんじゃろうて」
ほうほう、チートジジイも自分が人殺しだという自覚はちゃんと持っていたのでしたか。
まあ、人殺しの自覚もないような輩が、人の上に立っているよりかは百倍マシですわな。
そういう私も、他人のことは言えた義理ではなかったのでしたね。
私の場合は直接的に人を殺したことはなくても、私の命令でもう既に敵も味方も含めて何千人もの人間を殺しているのですから、この身はとっくの昔から血塗られているのです。
それでも気休めなのは、味方の兵の死者数が今までの累計でも数百人に止まっているということでしょうか?
まったくもって、私自身の気休めにしかならないですし、偽善だとも思いますけど、敵と味方では命の価値が違いますので、こればかりは仕方ありません。
「はぁ~、一将功成りて万骨枯るとは、まさに至言ですね……」
「うむ。人の上に立つ者がその言葉を胸に刻み込んでおかねば、死んでいった足軽雑兵は浮かばれん」
毛利元就は年の功といいますか年を取って丸くなったのか、人間が出来てますよね。
まあ、年を取っても老害を撒き散らす人間も多いのだから、これは本人の資質の問題なのかも知れませんけれども。
私も老害にならないように気を付けなければなりません。
「だからこそ、私利私欲で戦をするのではなく、戦のない世を作るための戦にしなければならないのだと思います」
「戦のない世を作るための戦…… まさしく姫の申すとおりじゃな」
「大義名分にも持ってこいだとは思いませんか?」
「大義名分?」
毛利元就が飲もうとして口元に運びかけた湯呑みがピタリと止まって、片眉を上げながらオウム返しに聞き返してきました。
「つまり、太平の世を造ろうとしている我々が正義であって、その我々に歯向かう敵は悪という構図が成り立つのです」
「姫巫女は悪辣じゃのぉ」
「民百姓や商人、それと噂好きな京雀にはウケるでしょうね」
「民百姓は分かるが、京雀?」
「お歯黒おじゃる丸たちも京雀の噂には、大層敏感なようでして」
といいますか、京の都に住まうお公家さんは京雀を敵に回してしまえば、苦しい立場に追い込まれてしまうのですよね。
いくら身分差が激しい時代とは言え、高貴なお公家さんといえども市井の人々を蔑ろには出来ないといことであります。
つまり、京雀を味方に付けてしまえば、必然的に朝廷もどちらかというと尼子毛利連合寄りの姿勢を取らざるを得ないということになる訳なのですよね。
もっとも、朝廷に一番貢献しているのは尼子と毛利なのだから、朝廷が私たちの顔色を窺ってご機嫌を取る必要もあったりするのだから、今更と言えば今更なのかも知れないけれども。
それでも、味方は多いに越したことはありませんし、保険は二重三重に掛けておいたとしても、この戦国乱世では無駄にはならないはずですしね!
石橋は叩いて渡るのが私の主義ですので。たぶんだけど。
「……やはり姫巫女は悪辣じゃ」
「おほほほ、義父上様の鬼謀には小娘の私ごときでは、まだまだ及びませんわ」
「よう言うわい」
よう言うわいとは、失礼な!
私が謀略の類いとか、そんな難しいことを考えられる訳ないでしょーが!
次話は未定でござる…
それではみなさん、良いお年を!




