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156話 毛利ジジイとティータイム


 永禄6年(1563年)11月中旬 安芸 吉田郡山城



 ずずぅ~……


 お元気ですか?

 向原運河の視察を終えて、吉田郡山城に戻ってきました。



「美味しいわね、このお茶」


「八女の茶葉とか言っておったな」



 それで只今、毛利ジジイとティータイムをしているところであります。



 ずずぅ~…… もぐもぐ…… ずずぅ~…… もぐもぐ……



「このお饅頭も美味しいわね」


「これを食うたら、塩饅頭が食えんくなってしもうたわい」


「甘味は疲れた身体には必要ですしね」



 南蛮船もどきを建造したら、琉球やルソンとの貿易も増えましたので、それに比例して砂糖の輸入も増えているので、こうして甘い饅頭も食べられるというわけですな。

 一般庶民が買うのには、まだ砂糖は高級品ではありますけど、私たち分限者は気軽に砂糖を手に入れることができるのです。


 琉球や奄美だけで砂糖を生産するのは心許ない気がしますので、宇喜多直家に命じて備前でもサトウキビの栽培を試してみることにしますか。

 日本には竹糖とか細黍とか呼ばれるサトウキビの亜種が自然に生息しているはずですしね。


 それに、備前とは昔の吉備国の一部なのです。吉備とはキビ。つまり、サトウキビに似た品種が沢山生えていた場所だったのでしょう。たぶんだけど。

 キビダンゴなんてお団子もありますしね。


 まあ、鳥のエサじゃなくて、救荒作物である、稗、粟、黍、これのキビが正解なんでしょうけど、甘味を伴った細黍もあるはずなんですよね。

 そうでなければ、和三盆は生まれなかっただろうしね。


 そいうえば、和三盆といえば、四国の讃岐と阿波が有名でしたね。

 まあ、この時代には、まだ和三盆は姿も形もありませんが。


 史実での和三盆は、江戸時代に入ってから徳川吉宗が命じて作らせたのでしたっけ?

 しかし、史実を先取りして、私が和三盆の普及に努めましょう。砂糖が普及すれば、そのうち庶民にも手が届く価格にまで下がると思いますしね。


 虫歯のことは知らん。虫歯は虫歯になりやすいなりにくいとかの体質もある気もしますので、私にできることは、歯磨きを奨励することしかできません。


 それよりも、毛利元就と大事なお話があるのですよ。

 まあ、お茶を飲みながらの、茶飲み話ではありますけど。



「ところで、八女といいますか筑後と九州の情勢は、どうなっているのかお聞きしたいのですけど」


「筑後と豊後の国境で小競り合いに終始している感じかの?」



 豊後との国境ということは、日田に通じる浮羽の辺りは毛利方が押さえたということでしたか。

 浮羽の筑後川の対岸は、秋月の領地でもあるはずの朝倉だから、割とすんなりと浮羽は押さえられたのかな?



「つまり、筑後川は押さえたということね」


「筑後川? ああ、筑紫次郎のことか」



 あれ? この時代ではまだ筑後川って呼ばなかったのかな?

 どうも未来で伝わっている名称で覚えていることが多いので、紛らわしく感じちゃいますね。


 これは私が音頭を取って、前世で使われていた河川や土地の名前を普及させなければいけません。

 おもに、私が間違わないようにする為にという、おもっくそ私情を含んではいるのですが。


 ちなみに、筑紫次郎とは、利根川を坂東太郎と呼ぶようなものだと認識しておけば大丈夫です。



「そそ、その筑紫次郎は筑後の国を横断しているわけだから、筑後川ってことだよ」


「筑前や肥前との国境にもなっておるが、まあ、姫巫女が言いたいことは伝わったの」


「それで、肝心の筑後の国人領主の調略は、どうなっているのでしょうか?」


「蒲池の調略が上手くいっとらん」


「あー、柳川の蒲池鑑盛かぁ」



 さすがは、義心は鉄の如しと言われる義将なだけはあるのか。

 蒲池鑑盛は、肥前を追い出された龍造寺家兼や、その後にまた追い出された龍造寺隆信を庇護してあげるなど、情に厚い人柄で知られている人物で、私もノブヤボで好きな武将の一人でしたね。


 しかし、義に厚い人物だけあってか、大友寄りの姿勢を崩してないのだから、義に厚いのも時と場合によっては痛し痒しといったところでしょうかね。

 でも、蒲池鑑盛って父親を大友に殺されていたはずなんだよなぁ。それなのに、大友の幕下に留まっているだなんて、ある意味において感心すらしてしまいます。


 それに、大友家中において、筑後衆は外様の扱いしか受けていないのに、そこまで大友に義理立てして尽くす理由がイマイチ分かりません。

 もしかしたら、蒲池鑑盛は虐げられるのに悦びを感じてしまう、ちょっと危ない人種なのかも知れませんね。


 まあ、すべて私の想像でしかないのですがね!



「上蒲池の蒲池鑑広もじゃ」



 蒲池鑑広は蒲池鑑盛の叔父か従兄弟のはずでしたね。



「ちなみに、高良大社は?」


「日和見といったところかのぉ」


「高良大社には、私からも後で文を出しておきますので、敵にはならないと思いたいですね」


「それはありがたい。杵築大社の巫女で出雲斎宮別当でもある姫の言葉であれば、丹波も耳を傾けてくれるであろうよ」



 まあ、同じ社家同士ですし、神社の格で言ったら、杵築大社はお伊勢さんに匹敵する格がありますしね。

 それに、出雲斎宮勅別当。最初は取って付けたような役だったはずの、この役職が結構侮れなかったのでした。


 みんな、別当様別当様って、私のことを敬ってくれるのですよね。

 まあ、私を敬っているのか朝廷の権威を敬っているのか定かではないので、なんとなくもにょもにょとはするのですけど。


 しかし、さすがは朝廷のお墨付きのある正当な官位ということであります。

 権威とは、こうやって使うべし! といった見本のような形ともいいます。



「西牟田は?」


「西牟田も日和見じゃ」


「黒木は?」


「黒木も田尻も五条も立場を曖昧にしたままじゃの」



 おーのー、なんてこったい!



「それってつまり、筑後は大友方でほぼ纏まっているようなモノじゃないのよ」


「うむ、筑後十五城の筆頭である蒲池が動かんことには、他の国人領主も動きにくいのじゃろうて」



 筑後十五城とは、筑後の大身国人領主である十五の家を差して呼ぶ通称のことであります。

 その筑後の国人領主の纏め役、筆頭であるのが両蒲池家なのです。


 尼子十旗はちょっと違うから、北勢四十八家の筑後版とでも認識しておいてください。

 まあ、北勢四十八家と筑後十五城とでは、領地の広さや石高とかで雲泥の差がありますので、一概には比較できないのですけれども。


 北勢四十八家の場合は、500石とかでも一家に数えられていますもんね。


 ちなみに、筑後十五城の石高を全部合わせると40万石にも及びますので、話半分に割り引いたほうが無難ではあるのですが。

 この時代の筑後の石高は、20万石ちょっとしかなかったはずですしね。



「つまり、北筑後だけは、なんとか押さえているといった状況が正解でしたか……」


「まあ、そういうことになるのかのぉ」


「ここ二年か三年の間、ほとんど筑後は奪えてないじゃないのよ」


「じゃが、筑後川沿いの草野と星野だけは恭順させて、門註所は豊後に追い出して領地は奪ったぞ」



 それは、ただ単に星野氏が当主代わりのゴタゴタと、草野と星野の領地が高橋や秋月の領地に隣接していたから、高橋鑑種の圧力に屈して恭順しただけのような気がしますね。

 だから、大友の圧力が強まれば、草野と星野は手の平を返す可能性が高いということであります。



「曲がりなりにも大友は、九州探題ってことになるのね」


「公方様の権威は、腐っても鯛じゃけんのぉ」



 筑後の国人衆も大友に従っているというよりも、九州探題の権威に従っているような気がしますしね。

 つまり、『九州探題幕下の武将である、オラって格好良いだ!』という、田舎者の見栄とでもいうのでしょうか?


 日の本では田舎に行くほど、権威の価値が高まるのは知ってはいましたけど、それを実感させられるとはね。



「こうなったら、奥の手を使うしか筑後の国人衆を靡かせる手はなさそうですね」


「奥の手? そんなもんがあれば、とっくの昔にワシが使っているはずだが?」


「義父上様でも見落としているのだから、きっと筑後の国人衆には効果覿面のはずですよ」


「で、その奥の手とやらは?」






「朝廷から大宰大弐を貰ってきなさいよ」



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