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151話 なんか一杯送られてきた

早めに書けたのじゃー!


9/24前話の最後のほうを500文字ほど加筆修正しましたので、よろしければご覧ください。


 永禄6年(1563年)9月下旬 出雲 月山富田城



「ほえ~、おひいさま、祝いの品が山になってしまいましたよ」


「まあ、それだけ尼子のご機嫌を取っておいたほうが、なにかと都合が良いと踏んだのだろうね。後々のためにも、ね」



 目の前にあるのは、私の出産祝いといいますか、葉月の生誕祝いとして、各地の大名や商人とかから贈られてきた祝いの品であります。

 宝の山とでも表現しても過言ではない、日本各地の名産品に明や南蛮の珍品の数々は、まるで品評会でも開けそうなぐらいの品数の多さだよ。



「尼子のというか、おひいさまのご機嫌ですけどね」


「どっちも一緒じゃないの?」


「一緒と言えば一緒ですけど、微妙に違うのですよ」


「それに私宛てじゃなくて、春姉宛てにも祝いの品は届いているじゃないのよ」



 そう、これは尼子の家中で、誰が私に影響力を持っているのか知っている人たちからの、春姉への贈り物というわけですな。

 私に充てて送ってくる連中よりも、抜け目のない連中ともいえるわけなのですよ。


 大名の意思決定には、その大名の下で働く家臣たちの意見も大きなウエイトを占めているのです。

 つまり、将を射んとする者はまず馬を射よというヤツでございます。


 ある程度、尼子家の内情に精通していなければ、誰が大将である私に影響力を持っている家臣なのか分かりませんので、春姉に祝いの品を贈ってきたのは目聡い連中で、要注意人物とも言えるのですよね。

 こんな穿ったモノの見方までしなければならないだなんて、私も大概この時代に毒されてしまったみたいですね。


 そうか、これが猜疑心というヤツなのか。

 私も歴史上の独裁者を笑えないということでしたか。


 賢者は歴史から学ぶ…… 他石の山…… うん、自己暗示完了!

 これで、暫くは大丈夫でしょう。



「しかし、私なんかが貰ってもよろしいのでしょうかね?」


「勝手に送ってきたんだし、くれるというのなら貰っとけばいいんじゃないの」



 まあ、当の本人である春姉は、どうやら自分が尼子家の実力者であるという自覚が薄いみたいでしたが。



「はぁ~、送り返すのも、それはそれで相手の面子を潰すことになるから、仕方ありませんか」



 ん? 一応は自分の立場も理解はしているような感じでしょうか?



「尾張の織田信長なんて、送り返したら完全にへそを曲げるわよ」


「織田殿との面識は数年前の一度だけですし、おひいさまの家臣である私に、わざわざ祝いの品を贈って寄越したのが、いささか不思議なんですけど?」


「それはね、吉法師という幼名が織田信長も同じというだけで、色々と贈ってきたんだよ」



 それにしても、信長にまで春姉が産んだ赤ちゃんの名前が吉法師だと知れ渡っていただなんて、織田家って結構諜報能力に優れているのかな?

 いや、違うな。鉢屋衆が尼子の広報活動の一環として、同日に産まれた私と春姉の赤ん坊のことを宣伝した。これが正解なのでしょうね。



「織田殿の幼名も吉法師だったのですか?」


「そういうことだね」


「なんだか、織田殿に親近感を覚えちゃいますね」


「向こうも同じく親近感を持ったから贈ってきたんだろうね」



 信長の場合は、春姉を通じてあれこれとかは考えてないのでしょうね。

 出雲と尾張では、直接的な利害もぶつかりませんしね。


 あー、でも、いずれ近江や若狭と敦賀の辺りでは、尼子と織田で利害が衝突する可能性もあるのか。

 まあその可能性も、五年以上は先の話だと思いますので、今は友好関係を維持しておきましょう。


 その後は、なるようにしかならないだろうし。いや、違うな……

 自分の有利な盤上を作って、相手の土俵では相撲を取らないようにすればいいのか。


 でも、言うは易しで実際に行うのは難儀しそうだよなぁ。

 つまり、なるようにしかならない。



「整理して目録を作って、返礼の品を用意するだけでも一苦労でござるな」


「こんなにも沢山贈られてくると分かっていたなら、最初から整理しておけばよかったわ」


「玉姫は、自分の影響力を低く見積もっていますね」


「そうかな?」



 まあ、見た目がチンマイからなのか、私も自分が大大名だという自覚が、どうしても薄くなっちゃうんですよね。

 だから、春姉のことを馬鹿にできなかったよ!



「太郎左様が申すとおりですね。おひいさまは、山陰山陽で十二ヶ国にもまたがって領国を支配しているのですよ?」


「そのうちの半分は中途半端にしか支配していないし、これ以上は領土も増えないけどね」



 それに十二ヶ国とはいっても、石高でいえば、濃尾の二か国に毛が生えた程度の石高しかないのが、泣けてくるのですけど……

 玉姫式の田植えが普及していなければ、下手をしたら、濃尾以下の石高だったような気がしますね。


 しょっぺー。 あれ? 涙が……


 こうなったら、足利義輝が死んだら間髪を入れずに若狭を分捕るしかない!

 つまり、足利将軍家への義理も、現公方様までということですね。



「それでもです。守護職だって出雲を始め八ヶ国は、おひいさまが守護なんですよ?」


「そういえば、そうだったわ……」



 守護なんて肩書きは、全然使ってなかったから、すっかり忘れてたわ。

 朝廷からもらった位階官職は名乗る場面も多いので、私の箔付けに役立ってはいるのですがね。



「僕、他にも仕事が山ほどあるのに……」


「源五郎兄ぃ、これも仕事の一つなんだよ」



 たろさと源五郎兄ぃにも手伝ってもらわないと、時間が掛かってしまいますので、二人とも強制参加であります。



「外との折衝の仕事ではあるのか……」


「そういうことだよ。そのうち源五郎兄ぃも外との折衝をするのだから、その練習でもあるんだからね」



 だから、黙ってキリキリと働けや!



「お姉様、凄い数ですね!」


「和歌ちゃんも仕分けを手伝ってちょうだい」


「お任せください!」



 和歌ちゃんは元気印の女の子ですね。大人しめの源五郎兄ぃとは、ちょうど凹凸が嵌ってくれそうだから、いい夫婦になれそうで一安心といったところです。

 割れ鍋に綴じ蓋? ちょっと違うかも知れないけど。


 それにしても、この祝いの品の山を見てあらためて思ったんだけど、銭はあるところにはあるんだね。

 まあ、日の本一の分限者である私が言ったら、嫌味にか聞こえませんでしたか。



「これは、丹後の一色からので…… およ?」



 ガサゴソと宝の山をあせくっていたら、八重菊の紋章が付いた桐の箱が……

 朝廷からも贈られてきてますね。



「おひいさま、どうかなさいましたか?」


「ほらこれ、朝廷からも贈られてきてるわ」


「天子様からですか?」


「万里小路の房子さんが差出人だから、直接ではないけどね」



 主上が誰かに直接、何かをするということは滅多にありませんので、実質的に主上の妻に等しい新大典侍さんの名前で贈ってくるということは、これでも朝廷なりには尼子に気を遣ってくれているんだろうね。

 しかし、これは銭の無心と受け取ったらいいのかな?


 もしかしたら、純粋に葉月の誕生を祝ってくれているだけなのかも知れないけどさ。

 でも、お歯黒おじゃる丸たちは、迂遠なもの言いをするから、イマイチ考えが読み難いんですよねぇ。


 しかし、どうやら朝廷は、春に尼子が暮れに毛利が送る二千貫づつだけでは、懐が寂しいみたいでした。

 そういえば、前にも山科卿が銭の無心をしに、わざわざ出雲まで下向してきたっけ。


 山科卿だけは迂遠なもの言いをせずに、「銭くれ」とか正直に言ってきたから、まだ可愛げがあるというものです。

 あそこまで明け透けに言われてしまえば、私も毒気が抜かれるというものですよ。


 仕方がないので、山科卿にお伺いを立ててから、千貫文程度は寄進しておきましょうか。


 またそのうち、位階を上げてくれるかも知れませんしね。

 その手数料とでも思っておけば、少しは納得もできるというものです。


あまり物語が動いてない…

とりあえず連続投稿はここまで。

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