150話 ボンバーマンからの追伸
腑分けの詳しい描写はグロくなるからカットなのじゃー
9/24最後の部分を500文字程加筆修正しました。
人体実験の話は取り敢えず横に置いておいて、ボンバーマンからのお手紙には、続きがあるのですよ。
「追伸、なになに……」
『讃岐が日照りで米が不作なので、尼子領内で米が余っているようであれば、融通をお願い致したく候。また姫様と一緒にお茶を飲める日を楽しみに思い、筆を擱くと致し候』
ふむ? 今年の四国は日照りで米が不作でしたか。
元々、四国は水不足で悩まされる土地柄ですから、日照りが続いてしまえば米が不作になるのもむべなるかな。
讃岐は未来では、うどん県とも言われていますし、小麦のほうが米よりも使用する水が少なくて済むということなのでしょうね。
まあ、うどんに使用しているその小麦も大部分が、オーストラリア産かアメリカ産の小麦という、笑えない冗談もあったりもするのですけど。
話がそれた。
「そういえば、我が領内の今年の米の収穫ってどんな感じなの?」
「聞いた話では、ほぼ例年通りとのことだよ」
たろさもすっかり内政官というのか、秘書役が板に付いてきましたね。
まあ、私の筆頭秘書は春姉なんですけどね。
平年並みの収穫量ということは…… そういえば、ここ最近ちゃんと領地の石高を見てなかったな。
「春姉、今年の石高帳ってもう出来てる?」
「まだ集計中ですね。昨年ので良かったらありますけど」
「領内の国と郡の合計だけ見たいだけだから、昨年ので構わないよ」
「それでしたら、これをどうぞ」
「ありがとう。でも、手際が良すぎるね」
「まあ、秋ですし、こんなこともあろうかと思いまして用意しておきました」
さすがは、春姉といったところでしょうか。出来る秘書はひと味違いますね。
「ふむふむ……」
出雲23万石、伯耆17万石、美作20万石、備中9万石、備後5万5千石、石見5万石、因幡11万石、備前22万5千石。オマケで隠岐7千石。
それに、新規の領地である但馬が11万石、丹後が7万石、丹波の二郡も7万石程度ですか。
合計で、138か139万石とな? 六割が税で納められるのだから、約83万石が私のというか尼子の取り分ということですか。
全部を銭に換金したとしたら、これだけで42万貫文!
まあ、但馬と丹後と丹波の年貢は、昨年の戦で領民に迷惑をかけたから、今年の年貢は半分免除なんですがね!
ちなみに、昨年は全部免除をしてしまいましたよ……
だがしかし! 来年からはキッチリと取り立てるからな! 覚悟しておけよ!
さすがに、新たに尼子の領地になった土地に対して、三年間も年貢を免除するだなんて、そんな大盤振る舞いはいたしません。
常識的に考えて、三年間も年貢免除だなんて、どんぶり勘定すぎるだろうに。
戦国大名の大部分は自分たちの領民を食わすために戦を仕掛けているのに、その新たに奪い取った土地から三年間も収入が得られないとなれば、戦をした意味がなくなりませんかね?
年貢を免除するということは、恭順した国人領主の取り分も、尼子が持ち出して補填してあげなければならないのですよ。
そう、国人領主の一族郎党を根切にでもしない限りはね。
だから、私の昨年の全額免除と今年の半額免除でも、かなり大盤振る舞いの気がするのですけど?
しかし、今年の米での収入が42万貫でも35万貫でもどっちでもいいのだけど、全てひっくるめた私の収入は、優に150万貫文以上にはなるのですよね。
まあ、だからこそ、但馬、丹後、丹波の三ヶ国を免除に出来たとも言えるわけでして。
他の戦国大名は、その原資をドコから持ってくるのでしょうか?
いままで蓄えていた身銭を切るのでしょうかね?
それとも、商人に借金でもするのかも知れませんね。
しかし、借金の返済のために、また戦を仕掛ける破目になりそうな気もするのですけど?
ちょっとだけ疑問に感じました。
でも、尼子家の収入の150万貫というのも、1文100円で計算したとしても、21世紀の価値でいったら、1500億円程度の価値しかないのですよね。
私の支配する領地でいったら、現代では最低でも15兆円ぐらいの予算は必要だと思うのですよ。
戦国時代って、どれだけ貧乏だったんだよ……
まあそれでも、尼子家は貧乏とは無縁なのだから、現代の価値に当て嵌めるのは無理があるとも言えるのでしょうね。
お金の価値や経済とかは、摩訶不思議な感じがします。
それで、私の収入を考えたら、信長が堺に課した矢銭の二万貫文なんて、ちっぽけなモノだったんですね。
まあ、会合衆だけで払おうと思えば、そこそこの額だったのかも知れませんが。
それよりも、本願寺も矢銭の二万貫をポンっと信長に払っているのですよね。
まあ、渋々ながらなんだろうけどさ。
しかし、二万貫をいとも容易く払える本願寺の財力は凄いの一言だと思います。
いずれ宗教勢力には、貯め込んでいる財貨を吐き出させなくちゃなりませんね。
といいますか、私が杵築大社の巫女で、庇護者でもあったんだよ。
ダメじゃん!
やぶへびになるところだったよ。うん、この話は保留にしておきましょう。
私も自分の支持母体を傷つけるような真似は、迂闊には出来ないということであります。
つまり、私も既得権益に首までどっぷりと浸かっていて、利権でズブズブなんだよぉぉ!
それよりも、気を取り直してボンバーマンのお願いの続きをしなければ。
「百三十万石を超えてたのか…… 尼子も大きくなったもんだね~」
「おひいさま、今年は百四十万石を超えると思いますよ」
「そうだろうね。でも、新田を開発しないと、そろそろ出雲と伯耆は上がり目がなさそうだね」
「それは追い追いとやっていきましょう」
宍道湖に流れ込ませている斐伊川の河口を、数十年単位で順次付け替えて行けば、新たな土地は生まれるのだけれど、それでは時間が掛かりすぎるよなぁ。
そう、宍道湖というのは、未来の21世紀の宍道湖よりも戦国時代の宍道湖のほうが大きかったのですよね。
未来で出雲空港がある場所なんかは、今の時代では宍道湖の中ですから。
具体的には、宍道湖の西端部分が南北に4km。東西に5~6kmは、21世紀の宍道湖よりも大きいのです。
では、その部分をどうやって埋め立てたのか?
正解は、鉄穴流しとかで流された土砂が宍道湖の河口に堆積して、新たな土地が出現したのですよね。
だから、ある程度土砂が溜まったら、人工的に斐伊川の流れを変えてあげないと、川が氾濫しやすくなってしまうのです。
三百数十年の間に何度か川替えを繰り返した、その後の姿が未来の宍道湖の姿といえるでしょう。
しかし、未来では斐伊川の付け替え工事なんて行っていないはずですよね?
土砂の堆積とかは大丈夫なんでしょうか?
もしかしたら、こまめに浚渫工事を行っているのかも知れませんね。詳しくは知らん。
「尼子は大きくて羨ましいのぉ」
「あら、毛利だって百万石は超えているんじゃないの?」
「五十万貫文分か? 昨年は四十七万貫文だったはずじゃ」
「誤差の範囲じゃないのよ」
十石、二十石でピーピー鳴いている国人領主が聞いたら、目を血走らせて襲い掛かって来そうな会話だとこと。
こりゃ、国人領主には聞かせられないわ。
毛利元就が言っている四十七万貫文というのは、当然ですけど全収穫量分を銭に換算した額のことです。
5.5掛けか6掛けした値が毛利家の取り分になります。
この時代では、貫高制と石高制の両方を使っているので少し紛らわしい気がしないでもありません。
特に東日本では貫高制が幅を利かせている状態なのです。
西日本では石高制も通用するのですがね。私が石高制を広めたから、なおのことなんですが。
銭の権化でもある私が石高制を広めるのも、おかしな話なんですけど、それだけ銭の供給が需要に追いついてないとも言えるわけでして。
永楽玉銭も私鋳した傍からどっかに消えて行ってしますのですよね?
おかしいですよね?
まあ、商人が欲しがるから、銀塊や銅塊と交換して売ってあげているのだけどさ。
あと、私が米の収穫を把握しやすくするためにも、石高制の方が都合が良かったというのもあります。
人間、銭は食わないけど、米は食べるのですから。
米の値段の乱高下があった場合に、貫高制だと塩梅が良くないんですよね。ぶっちゃけ面倒なんですよね。
為政者の都合が優先されるのが、政治というモノなのだよ。
「まあ、そうなのじゃが」
「いまさら返せだなんて言われても、宇喜多直家が怒り狂いかねませんので、備前は返せませんからね。私も和泉守をくだらないことで死なせたくはありませんので」
「ワシでは宇喜多は御せんよ。姫巫女の徳でなければの」
ほむほむ、私の徳ですと? 嬉しいことを言ってくれちゃってさ。
まあ、宇喜多直家が尼子家に臣従してくれたのは、偶然のような気もするのですがね。
毛利ジジイもお世辞がお上手なご様子で。
そ、そんなエサに私が、つ、釣られ、釣られるとでも思って?
「あら? 義父上様にしては嬉しいことを言ってくれますね」
「ワシは事実を申したまでじゃよ」
「ふふっ、なんなら、備中ならば考えてもいいけど」
釣られたクマー!
「三村を挟んで飛び地になるからいらんわい」
リリースされたクマ……
「それで、備前に讃岐の商人が米を買いにくると思うけど、あまり阿漕にぼったくらないように言い聞かせておいてちょうだい」
「玉、ぼったくりって何?」
あれ? 阿漕は通じたのに、ぼったくりが通じない?
この時代には、ぼったくりって言葉がまだなかったのかな?
「また、おひいさまの玉語が始まりましたか」
「まあ、なんとなく意味は分かったがの」
「暴利をむさぼるから、ぼったくりなんだよ。私も宇喜多直家に手紙を書いておくわ」
「玉姫、それでは、ぼしか合ってないような気がするけど?」
たろさ、こういうことは一々気にしてたら負けなんだよ。
「利にさとい商人ならば、機を見るに敏じゃからのぉ」
「備前での売値の三割増しまでしか許さないわよ」
自由主義市場経済? なんですかそれ? 食べられるんですかね?
今のトレンドは尼子玉統制経済なんですよ?
「三好にふっかけないのか?」
「義父上様、因果は自分に返ってくるんだよ? それに、もし毛利領内が凶作になったとして、私から暴利の値段で米を買いたいわけ?」
「それは困るのぉ」
「それこそ戦の原因になるわよ。この乱世が続いている原因の一つは飢えでもあるのだから」
だから、戦を未然に防ぐ意味でも、私は数年前の飢饉の時に毛利を援助したわけですしね。
「姫巫女は他国の民でも飢えさせないようにして、戦の芽を事前に摘み取るのじゃな?」
「腹が減ってなければ、無駄な戦なんてあまりしたいとは思わないでしょ?」
まあ、逆に「腹が減っては戦ができぬ!」みたいな言葉もありますけれども。
しかし、戦にでもなれば、無辜の民も巻き添えで死にます。その民とは、国の生産力を支えている人たちなのです。
それに足軽の大部分は百姓なんだよ? 足軽が死ねば、それだけ田畑を耕す人も減って、さらに米の収穫量も減るという悪循環に陥りますしね。
「なるほど、戦ばかりにかまけていたら国が衰退するというわけじゃな」
「民は宝だよ」
そういえば、この私の言葉を聞いたから、宇喜多直家は心服してくれたんだっけ?
大昔の天皇陛下に感謝しなくっちゃね!
「おひいさまは、お優しいですね」
「だから、三割増し以上で他国に売り捌いたら、財産没収の上、打ち首獄門」
転売ヤー死すべし慈悲はない!
あれ? でも、この場合では讃岐の商人が転売ヤーになるのかな?
それに、私も全ての転売屋を否定しているわけではないのですよね。
買い占めて、市場の値段を不当に吊り上げる輩は許せませんけれども。
「やっぱ、おひいさまは怖いですね……」
そんなことないってば! でも、私が法律だからね!
ストックはないけど、今週中にはもう一話いけるかな…?




