147話 すっぽーん!
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|・ω・`) そ~~・・・
|o旦o
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|―u' 旦 <コトッ
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| ミ ピャッ!
| 旦
永禄6年(1563年)8月 出雲 月山富田城
すっぽーん!
「「おぎゃーおぎゃー!」」
お元気ですか?
玉です。うん、とっても安産でした。
さすがは安産の神様でもある木花咲耶姫の加護ですよね。まあ、私も加護を与える側になったのですけど、当然、加護は私自身にも有効だというわけでして。
それにしても、長い夢を見ていたような感じがしたのですけど、私の気のせいですよね?
私の意識が戦前の昭和の時代に飛んでいて、その世界で宮様などをしていたような気もしたのですけど、きっと気のせいですよね?
それで、突然、BANげふんげふん…… 突然、意識がブラックアウトしたと思ったら、現実に引き戻されて、気が付けば赤ちゃんが産まれていました。
また、テニスの選手として活躍している夢も見ていたような気もしました。
戦国時代で殺し殺される殺伐とした生活をしているよりも、現代でプロスポーツ選手として活躍しているほうが、よっぽど気楽なのだから羨ましいぞ。こんちくしょう。
月日が経つのは早いものですよね……
しかし長い間、夢を見ていたその間の私の意識は、いったいぜんたいどうなっていたのでしょうかね?
ずっとトリップしていたのでしょうか? それとも、この現実と思っている世界も、私の妄想なのかも知れません……
胡蝶の夢なんて言葉もありますしね。
あと、ラノベとかでは本当の私は病院のベッドで、植物状態とかいうオチなんかもあったりもしますもんね。
まあ、赤ちゃんまで産んで、これが本当は夢だったなんて笑えない冗談なんですが。
痛みを伴う夢なんて、ありえないと言いたいところですけど、これがまた、あるんだよねぇ。
特に疲れている時に見る夢なんかは、仕事に追われて身体に痛みを伴う夢なのですから。
前世の私がそうでしたので、間違いありません。
もっとも、今世ではおかげさまで、そんな痛みを伴う夢は見ずに済んでおりますが。
まあ、どうでもいい話でしたか。
つまり、現実と向き合わなくちゃ!
「おひいさま、おめでとうございます」
「春姉もおめでとうだよ」
「ありがとうございます。でも、私は二人目ですから」
それで、春姉とは偶然にも同じ日の出産となりました。私が初産で春姉が二回目だったので、種付けした日時の多少の誤差が縮まってしまったのかも知れませんね。
私が産んだのは女の子でした! 春姉が産んだのは男の子でした!
一姫二太郎三茄子とか言いますしね。ちょっと違ったかも知れないけど。
それで、生まれた赤ちゃんには、葉月と名付けました。安直な命名な気もしますけど、他に良い名前が浮かばなかったんだよぉぉぉ!
私の玉よりかは、マシな名前だと思っといてください。
春姉が産んだ男の子の名前は、吉法師です。なんか、信長の幼名みたいな気がしないでもない。
「春姉、ちょっと相談があるんだけどさ」
「あらたまって、どうなさいましたか?」
「同じ日、同じ場所で生まれた二人の赤子。これを縁と言わずに、なにを縁といわんや」
春姉も東家の跡取りを産めて、一安心といったところでしょうね。
もう、この際ちょうど良いから、この二人を婚約させてしまうことにしましょう。
「それって、つまり……」
「うん、この二人の赤子を許婚にしようと思うのだけど」
「毛利や他の大名家に嫁がせなくても、よろしいのですか?」
「それはまた私が産めばいいだけの話だし、私にとっては春姉との縁を一番大事にしたいんだよ」
これで、尼子家と出雲国造と多胡家の結びつきが更に強まって、尼子家の中央集権化にもプラスに働くことになるでしょう。
外戚の専横? 私の眼が黒いうちに、そんな馬鹿な真似をさせるとでも?
「おひいさまにそこまで思っていただけるだなんて……」
おろ? 春姉が涙ぐんでしまいましたよ。そんなにもサプライズだったのかな?
でも、有力な家臣に娘を嫁がせるのは家中統制のためにも、どの戦国大名でもやっている気がするけどな。違ったかな?
「ありがたき幸せにございます! 国造衆と多胡家は未来永劫、おひいさまに、尼子家に忠節を尽くします!」
「春姉も大袈裟だなぁ。私と春姉の仲じゃないのよ」
春姉だけではなく、周囲に居る侍女軍団も一斉に平伏してしまったよ……
まあ、侍女軍団の大部分が多古家と出雲国造の女衆で構成されているからなんだけどさ。
といいますか、春姉は出産直後なんだから、急に動いたら危ないってば!
でも、母体にも加護は効いているから、春姉の身体は大丈夫ではあるのだけど、なんとなく私が春姉に無理矢理に土下座させたみたいでね?
「いえ、親しき仲にも君臣のけじめは必要ですから」
「私にとっても、これはけじめだったんだよね」
「と、申されますと?」
「多胡家と出雲国造衆は、私の右腕と左腕なんだよ。だから、娘を嫁に出すのは私の誠意ということなんだよ」
「もったいなきお言葉…… おひいさまが立派になられて春は嬉しゅうございます」
ありゃりゃ、今度は私のお姉ちゃんとしての立場の春姉が感激して涙がこぼれてしまいましたよ。
春姉から見たら、私ってそんなに頼りないといいますか、危なっかしく見えてたのかな?
「まあ、これでも私も母親になったのだから、少しは成長しないとね」
「この春、おひいさまの誠意、確かに受け取らせていただきました」
「この子は将来、余程のボンクラにでもならない限り、尼子家の家老に決定なんだから、春姉もそのつもりで教育して頂戴よね」
「はい! 私の命に代えても、息子を立派な武将に育ててみせます!」
「あ、あんまり張り切らなくてもいいから……」
教育ママが行き過ぎてしまえば、子供はイエスマンになるかグレてしまいますので、ほどほどでお願いしますよ。
それに、教育の大部分は守役になった爺とかが、教育を請け負うのではなかったかな?
まあ、家や母親の方針によって違うのかも知れないけど。
それにしても、生まれた日に婚約者と将来が決まるなんて、さすがは戦国時代ですよね?
そこにしびれる! あこがれる!
この時代には人権なんて存在しませんから。人権なんかよりも家と家の結びつきの方が重要な時代ですしね。
この二人は生まれた日も場所も一緒で、これから兄弟同然に育って行くのでしょうね。
ん? この場合、どっちが姉か兄で、どっちが妹か弟になるんだ?
まあ、どっちでもいいか。
それよりも、問題は兄弟同然に育って、上手く夫婦としてやっていけるのか? こっちの方が問題のような気がしますよね。
よく、『お前のことは、妹にしか見えない』とか、『弟にしか見えないから、ごめんね』とか、『家族にしか思えない』とかあるじゃないですか?
しかしそれも、未来での価値観なのだと思いたいところではありますけど。
でも一応は葉月ちゃんに、吉法師操縦法を伝授しなければ!
元男であった私に掛かれば、男の扱いなどちょちょいのちょいですしね。
まあ、世の中には、シスコンやブラコンも大勢いますし、案ずるより産むが易しで意外と大丈夫なような気もしますけれども。
宮様とかの感想で尼子の姫の再開を望む声がチラホラとあったので頑張ってみたw
次回の更新もボチボチできたらいいなぁ




