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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

塔の館‐酷く有限に閉じられた可能性の世界

掲載日:2015/08/31

  

 

「さあさあ、ようこそ、今日も今日とで、ただ殺される為だけに生まれた存在達よ」


 彼女は、塔の様な巨大で広大な建築物の最頂点、そこで只管優雅に足を組んで眼下を見下す。


「バッカみたいに足掻いて足掻いて、苦しみ抜いた挙句、真に絶望する、見っとも無い姿を晒せばいい」


 嘲笑を含んだ暗い声、彼女の瞳は全てを飲み込み尽くすような真なる黒色をしている。


「みんなみんな、生きている奴は無限に苦しみ抜いて、無上に不幸になって、世界に絶望するべきよ」


 彼女は確信に満ち溢れた声音で「絶対にそれが正しいんだから」っと、涙を流しつつ笑い飛び立った。


 眩しい、目を開ける。


「はぁーあい、おはよう、マイダーリン」


 美しい女性の声がする。

 横を向くと、震えるほど綺麗な声と同程度の、美貌の少女がいた。

 無用なほど過剰に溢れる色気が妖しい、そんなアレなタイプに分類できる黒髪黒目の女性。


「ここは、何処?」


 そこで、自分が寝てる場所が変哲ない横長ベンチと気づいた。


「さあ、知らない、気づいたら此処って感じ、あんたもそう? でしょうね」


 質問を勝手に完結させて首肯。

 とりあえず寝てる体勢から立ち上がる、椅子に座ることで彼女の全体像が見えた。

 ビックリするくらいに、全身が黒で衣装されていた、まあそれだけの話だが。


「ねえ、これから、どうすれば良いのかしらね? なにか良案がある?」


 一応考えてみるが特になし。


「君の方はある?」


「あるわ」


「なに?」


「あそこに入ってみる」


 指差す先、ベンチの後方、後ろを振り返る。

 なんと、そこには馬鹿でかい異様な外装の建築物。

 全体的にとにかく大きい。

 下部が館、上部が塔の様な、頭上に細長い建物があった。


「へえ、率直に怪しいね」


「まあ、一口にそうね。

 でも、他に特になにもないし、行ってみるのがいいんじゃないの?

 あれだけ大きければ、中に人が誰もいないって事もないんでしょうし」


 少し思慮した後、そうだねっと賛意と共に呟き、ベンチから立ち上がった。


「すごっ」


 建物には正面の扉から入れた。

 内装を見た一瞬間から、条件反射で感想が漏れた。

 物凄くを何十にも通り越して、凄まじく豪華絢爛。

 芸術の域を超えて、唯一無二の聖域のような優雅な空間だったのだ。


「さて、どうしましょうか?」


「ああ、どうしようか」


 選択肢でも出てくれれば捗るのだが、、、。

 ・・・・・・周りを見回すと、この空間の装飾に調和する形で、現代的な昇降機があるのを見つけた。

 つまりはエレベーター、建物の外装から判断して、軽く10階以上はあるのだ、あれを使わない手は無い。


「うん、それがいいと思うわ」


 視線から察したのか、彼女が言う。

 しかしなぜか、微妙に唇が一瞬釣り上がったのだが、どういうことだろうか?

 スタスタ彼女は歩き、エレベーターの呼び出しボタンを押す。


「さあ、お先にどうぞ」


「ありがとう」


 彼女はエレベーターガールのように先導し、内部に入る。

 外側からは呼び出しボタンしか無かったようだが、内部には階層指定のボタンがある。


「何階に行く?」


「・・・・・・」


 さっきも思ったが、選択肢が出てくればいいのに。

 こういう主体的な判断や決断を迫られる場面は苦手だ、すべて自動的に決まって欲しいと思う。

 意志が介入すれば責任が生まれる、逆に介入しなければ、つまりはそういう事だ。

 それでも、少し考えた。

 答え、最上階に行って周囲を確認する。


「最上階に」


「そう、それじゃ、それはつまり、27階という事でいいのね?」


 なぜか念を押してくる、訝しく思いながら頷く。


「本当に、それでいいの?」


「いいよ、、、なにか問題がある?」


「いいえ、ないわ、、、私にはね」


 よく分からない返答だった、まあ特に気にもならないが。

 エレベータが上昇する感覚、27階ならば多少時間が掛かるだろう、目を瞑る。


「うん?」


 少し経った、しかし、これは。

 目を瞑りながら疑問に思う。

 あまりにも、時間が掛かりすぎてはいないか? 目を開ける。


「あっ!」 


 誰も居なかった、というより彼女が消えている。

 どういう現象か意味が分からない、こんな密室、外部から隔絶された場所から忽然と消えるなんて、、。


「お、おい、、、おーい」


 と、いうより、気づいた、気づいてしまった。

 上昇するエレベーターの、その天井が、なぜか微妙にズリズリと下がってきているのだ。


「あああ、ぁぁぁああ」


 混乱が混乱を呼び、恐怖と不安が加速度的に高まっていく。

 なにか打開策はないかと、検索、検索。

 だが、何もない。

 その間に、天井は手を伸ばせば届く高さに。

 ジャンプして、手で押し返せないかと試してみる、だが案の定、無情に無理だった。


「ううぅ、、」


 だんだんと恐怖が本格化してくる。

 真近に迫った死、不安は一線を越えて現実に、むしろ詰んだ感すらある。

 それでも、諦めなかった。

 諦めたら、そこで終了だと感じるから。


「ぐっうぅ!!!」


 まず、頭上から迫る、既に身長ほどの壁を全力で押し返してみる。

 まったく動じず、それでも力の限り押し続ける。

 だがすぐに、真っ直ぐに立っているだけで押しつぶされる高さになったので、だんだんとしゃがまされる。

 それでも死力を振り絞って、微か過ぎて感じれないほどの希望に縋るほかなかった。

 そして、最後、地べたにへばり付く様に、なった。


 完全に、頭上の天井と地面の隙間に、自分がいる形だ。

 一切身動きできず、もう終わりだと思った瞬間だった。

 そこでガタンと、大きな音がして、エレベーターが止まった。

 何のチャイムの音も無く、扉が左右に開かれるのが分かった、

 扉の方を向いてへばり付いていた、外の光景が見える。

 誰かの黒い靴が見えた、その後、その人物がしゃがみ込む様な仕草、彼女だった。

 黒い瞳と目が合う、哀れな姿が面白いのか、なんだか愉快そうな感じ、唇が笑みを結んでいる。


「どう?」


「動けないんだ、どうにかならないかな?」


「そうじゃなくてさ、どんな気分?」


「はあ?」


「だからさ、、ああ、なんて言えばいいのかなぁ、、、。

 つまりさ、もう直ぐ、もうあとちょっと。

 うん、掛け値なしで数十秒後には、ちょっとづつ押しつぶされて、痛くて痛くて実際痛くて圧死な展開について、だよ」


「え?」


「えっじゃないわよ、その件について、どんな気分かを教えてよ、お願い一生のお願い」


「た、助けられないのか?」


「うん無理、だから、最後に君の言葉が聞きたくてさ」


「し、死にたくないよ! どうにかならないのかぁ!」


「ふっふっ、いいよいいよ、でも、ごめん無理。

 てかさ、なにも思わないの?」


「っ!、はあ?!」


「いやだからさ、馬鹿じゃないんだから、平然とこちら側にいる私についてだよ」


「それは、、」


「うんうんその目は本気で意味不明と。

 あーあーぁそりゃ分からないよね、そりゃそうか、面白い推理が聞けると期待したけど裏切られちゃったぁー」


「う!!ぅぅ!!、、ぎぃがっがぁ!!!」


 天井が、先ほどよりもずっとジリジリと、感覚的には1mmづつくらいで、降りてきた。


「ありゃ、もう時間だねっにゃははっ、うふっふっふふうっ、死ぬんだね」 


 頭蓋骨が割れる、ように痛い。

 体中が圧迫されて、引き裂かれるような痛み。

 これは、死ぬような痛み、だ。


「ぐぅっぁあっああああ!!! どっどうすればぁああああ!!!???!!!!!!!」


「どうすれば? 

 そりゃ簡単だよ、いきなり最上階に行くなんて、あの時、選択しなければよかった、ただそれだけだよ」


 もう、彼女が何を言っているのか分からなかった、思考が曖昧に曖昧になっていく。


「馬鹿じゃん、いきなりクリアさせるなんて、あるわけないじゃん。

 ちゃんと、段取り整えてくれなきゃいけないってこと。

 で、事前に定めてたルールによって、死刑ね、ばいばーあい」


 目が霞む、視界が滲んでいるのを自覚。

 ぐしゃん。 


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 眩しさを感じた

 目を開ける。


「おはよう、って、別に朝じゃないけど、目が覚めた相手には、言いたくなるよね」


「、、、、」


 意味が分からなかった。

 だが、微かにこの状況を連想的に言い表す言葉を知っていた。

 幾ら想像しても納得いかないが、ループ的な状況らしい。


「、、、、」


「あれ、もしかして、これは超レアなタイプかな?

 引き継いでる? もし引き継いでるなら、どのレベルで?」


 興味津々な猫のように、迫って質問してくる。

 さて、どのように、次の対応を選択しようか? 

 熟慮の余地がありそうだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] エッセイを拝読し、興味を持ちまして拝見致しました。 私には夢野久作のドクラマグラのような、既視感を想起させる作品でした。 バットエンドに向かう不穏さが常に付き纏っており、さりとて、張り…
[良い点] 既存の一般的小説技法に囚われない独特な文章構成はとても面白く感じました。 韻律を踏んでいるようでいて、それでいて突如、散文的な表現へ変化したりと、渾然と規則性の無い言葉の羅列は、さながら…
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