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うろな天狗の仮面の秘密  作者: 三衣 千月
うろなの夏祭りを見回る天狗のはなし
12/77

7月6日 うろな夏祭り・早朝 『天狗、会場設営を手伝う』

夏祭りだ!

ついに来ました夏祭り!



7月6日(土) 早朝


 夏が近いせいもあり、6時前といえども空は十分に明るく、日の登る前の空気はとても清々しい。

 平太郎は中央公園で行われる夏祭りの準備を手伝おうと、いつものジャージに唐草マントを羽織る。


「随分早いのね。平太郎」


「千里こそ、早起きではないか。いつも休みの日は昼過ぎまで

 寝ているというのに」


「今日のお祭り、おねーさんも楽しみなのよ。いろいろとね。

 それより平太郎。それは置いて行きなさい」


 そう言って猫塚は平太郎の手にある番傘を指す。唐傘化けの妖怪・傘次郎がその番傘の正体であり、この番傘を持っている時のみ、平太郎はその天狗的能力を発揮することができる。


「千里の姉御!あっしも兄貴の役に立ちたいんでさぁ!」


 傘次郎が傘の姿のままで抗議するが、猫塚は静かに横に首を振った。


「次郎がいれば平太郎が本物の妖怪だとバレるかも知れないでしょう。

 それに、今日は快晴よ。傘はいらないの」


「む。しかし私は天狗の存在を町の皆に認められなければいかんのだ」


「天狗の力なんてなくても、平太郎はちゃんと町の人に好かれているわ。

 そうでしょう?天狗仮面」


 平太郎は「ふむ」と少し間を置いて、傘次郎を猫塚に手渡した。


「あいわかった。己の身一つで今までやってきたのだ。

 この天狗仮面、見事に祭りの警備を務め上げてみせよう」


「それが兄貴の心意気なら、この傘次郎もぐぐっと堪えて

 兄貴を見送りまさぁ!頑張ってくださいやせ!」


「うむ。任せておけ」


 平太郎は玄関に5つ並んだ天狗の仮面のうち、真ん中のものをつけて家を出た。コツコツと階段を降りる音が静かな朝に響いている。




   ○   ○   ○




 中央公園では、うろな工務店の面々がてきぱきと会場を設置していた。


「前田殿!助太刀に参った!ケイドロ大会の時には世話になった」


 ステージ近くで指示を出している前田鷹槍(まえだ たかやり)に声をかける平太郎。


「おう、天狗か。タカでいいつってんのに相変わらずだなお前さんはよ。

 じゃあ、役場の人たちが向こうでテント建ててるから手伝ってくれねえか」


「うむ。任された」


 前田の指示であっという間に会場が出来上がってゆく。ステージ、テント、屋台。それぞれの内装や飾りつけは、それぞれの担当が行っている。

 早くも、祭りの活気が中央公園を包んでいる。顔を覗かせた朝陽が公園を照らす。平太郎は背中に陽をうけながらテント設置に向かった。


 今日は暑い一日になりそうである。





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