episode0-7年前-
作品用シナリオの一つです。
作品のプロットはできているので文章にしようかと。
タイトルが(仮)なのもそのためです。
まだ内容が荒いかもしれませんがご容赦を。
7年前。
彼が小学校に通っていた頃の話だ。
その日、日曜日だったが父は仕事だった。
いわゆる休日出勤である。
仕事の内容を教えてもらってない彼にとっては、「忙しいんだろうな」、「頑張って働いてくれてるんだな」としか感じていなかった。
その日、彼は父の帰りを待ちながら母親と夕ご飯の準備をしていた。
「父さん、まだかな?」
いつも夕飯時に言う台詞。
「どうだろうねー。お父さん忙しいから……」
母親もフライパン片手にテンプレと化した台詞を言う。
のんびりした毎日の夕飯時。
彼はその雰囲気が好きだった。
しばらくすれば「すまんすまん!ちょっと急な仕事があってな!」と父親が帰ってきては3人でご飯を食べる。
いつも通りだけどそれが幸せなんだと。彼は幼い時、既にそう理解していた。
だが、その日は『異常』だった。
日常ではなく非日常。
いや、その表現だと甘すぎるか。
―目の前で母親が死んだのだから。
それは急にやってきた。
母親が野菜を切っている時、ガシャンといい音とともに目の前の窓を何かが突き破る。
「――っ!?」
彼も母親も驚いて声も上がらなかった。
「爪……?」
窓から飛びでていたのはサイズは段違いに大きいが犬の手のようなものだった。
「―、冷蔵庫の裏に隠れて!!」
あまりに聞きなれない母親の大声だった。
普段の温厚さからは想像もできない声。
「っ!」
彼はその声を聞いてとっさに冷蔵庫の陰に隠れる。
そして隠れた数秒後だった。
『それ』は姿を現した。
犬。
いや、ありえない。
狼。
それもサイズ的にありえない。
窓から侵入してきた『それ』の形は確かに狼だった。
しかし普通ではないのだ。
まずサイズが馬鹿げている。
目算でも全長4メートルは超える。
そして一番の注目するところ。
羽。
飛べるかは分からないが、│蝙蝠のような羽がついていた。
「なに…、あれ」
羽の生えた黒い狼が跳ねる。
目標まで一瞬だった。
黒狼は母親のわき腹にかぶりつく。
それからの5分間は地獄だった。
当時小学生であった彼には隠れているしかできなかった。
どんなに残酷なことが目の前で起ころうとも。
―そう、母親が喰われていてもだ。