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石の記憶 過去編 プロローグ


今より少し昔。

 

まだ、 ネットなんてものが無かった時代。

 

知りたいことがあれば、 本屋へ行くしかなかった。

 

流行は雑誌から始まり。

 

噂は口コミで広がる。

 

そんな頃だった。

 

世の中には、 どこか不思議な熱気が漂っていた。

 

超能力。

 

前世。

 

終末思想。

 

占い。

 

パワーストーン。

 

テレビでは、 スプーン曲げや心霊特集が放送され。

 

漫画やアニメでも、 不思議な力を持つ主人公達が人気だった。

 

“運命の仲間”

 

“まだ知らない世界”

 

“眠っている力”

 

そんな言葉が、 妙に輝いて見えた時代だ。

 

もちろん、 世の中には不安もあった。

 

不景気。

 

将来への閉塞感。

 

世紀末という言葉が、 どこか現実味を帯びていた頃でもある。

 

けれど。

 

多くの人達にとって、 “不思議”は恐怖だけではなかった。

 

むしろ。

 

「なんか面白そう」

 

「もしかしたら本当にあるのかも」

 

そんな、 ワクワクの方が強かったのかもしれない。

 

当時は、 おまじないブームなんてものもあった。

 

好きな人と両想いになる方法。

 

満月の夜のおまじない。

 

ラッキーカラー。

 

消しゴムへ名前を書く恋占い。

 

今思えば、 少し笑ってしまうような話ばかりだ。

 

けれど当時の少女達は、 案外本気だった。

 

雑誌の占いコーナーも人気だった。

 

“好きな人が振り向いてくれません”

 

そんな可愛らしい悩みもあれば。

 

“人生が苦しい”

 

“自分が分からない”

 

驚くほど重い相談まで並んでいた。

 

そして占い師達は、 毎月それへ真剣に答えていた。

 

本屋へ行けば、 オカルト雑誌が平積みされている。

 

『あなたにも超能力が』

 

『水晶が運命を変える』

 

『前世の仲間を探しています』

 

そんな文字が、 当たり前のように並んでいた。

 

もちろん、 ネット通販なんてない。

 

欲しい物があれば、 雑誌の後ろにある通販コーナーから申し込む。

 

切手を貼り。

 

現金書留を送り。

 

届くまで何週間も待つ。

 

今思えば不便だ。

 

でも、 そこには今とは違う熱が確かにあった。

 

しかも、 そういう話はオカルト雑誌だけではない。

 

健康雑誌には、 “気の流れを整える石”。

 

女性誌には、 “恋愛運アップアクセサリー”。

 

ファッション誌ですら、 天然石特集を組んでいた。

 

水晶は、 不思議な力を秘めた石として語られていた。

 

翡翠は魔除け。

 

アメジストは霊性。

 

石には、 それぞれ意味があると言われていた時代だ。

 

今なら、 少し怪しく思うかもしれない。

 

けれど当時は、 そういう“不思議”が、 案外すぐ隣にあった。

 

本気で信じる人もいた。

 

半分遊び感覚の人もいた。

 

ただ、 みんな少しだけ、 現実とは違う“なにか”へ惹かれていたのだ。

 

未来にはまだ、 説明出来ないものが残っている。

 

あの頃は、 そんな空気が確かにあった。

これからどんな話しが待ってるでしょう

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