2 枕返し
ここは桜庭探偵事務所。妖怪を専門にしています。
様々な人が相談に訪れます。
私はここでお手伝いをさせてもらっている三上沙彩。12歳です。
私は社会について、人間について、よりよく知って成長するためにここでお手伝いをすることにしました。
今日も、悩める依頼人がやってきました。
「朝起きると枕が逆になっているんです」
依頼人の中年男性は深刻な様子で語った。
それくらい、別に大したことなくない?
「私は睡眠というのを非常に大切にしていて、部屋の温度や湿度、枕の位置なども大変気に使っています。少しでも変わっていると、気になってしまうんです…」
「枕返しという妖怪の仕業ですね」
桜庭探偵事務所所長の桜庭は断言した。
「枕返し?」
「夜中に枕元にやってきて、枕をひっくり返す、または、頭と足の向きを変えたりします」
「そういう妖怪がいるんですね」
依頼人は感心した様子で言った。
「単なるイタズラをする妖怪と軽視することはできません。中には死に至ったケースもあります」
依頼人の顔が青ざめた。
「仕事、仕事で女房には迷惑をかけっぱなしです。こないだも喧嘩をしてしまった」
依頼人は頭を抱える。
「そういえば、枕が逆になっているのは、必ず女房と喧嘩した次の日なんです」
それ絶対に奥さんがやってるでしょ。
「特別な護符を渡しておきましょう。これを枕の下に入れて寝てください」
事務所の電話が鳴り、桜庭は電話に出ると長々と喋った。
「先生、誰と喋っていたんですか?」
「さっきの依頼人の奥さんから電話だよ」
桜庭は前髪をかき上げた。
「自分の夫が何のために来たのか気にしていたよ」
「喋ったんですか?」
「うん」
依頼の内容、ペラペラ喋んなや。
「枕が逆になることはすっかりなくなったそうだよ」後日、桜庭は得意げに語った。
そりゃ探偵に相談するほど旦那が悩んでいるのを知ったらやめるだろう。
私は社会について、人間について、よりよく知るためにここでお手伝いをしています。
なぜただの夫婦喧嘩の出来事を、妖怪専門の探偵に相談するのか?
謎は深まるばかり。




