神殺し-2
悪魔が手をかざす動きを見せた瞬間、ザルツの黒鉄のドラゴンの口から、超高速の巨大な椎の実型の弾丸を打ち込んだ。それを喰らった悪魔が、体勢を崩す。ザルツは、以前の戦いから、悪魔が魔術のようなもので、災害のような攻撃を繰り出していたのを見ている。アレを使われると被害が甚大なので、使われる前に先を制して防いでいく。弾丸による損傷は、直ぐに再生していった。
ザルツの黒鉄のドラゴンが、空中で不気味にとぐろを巻くと、トンボのように羽ばたく12枚の翼で一瞬で加速して、悪魔の近くに飛翔した。そして、その牙で、爪で、悪魔を切り裂いていく。それを振り払うように悪魔が手を伸ばす。ザルツはドラゴンを繰り、それを回避する。ザルツは悪魔を圧倒するように戦うつもりはない。味方の体勢が整うまでは、悪魔の行動を阻害することに全力を尽くす。相手のやりたいことをやらせないのが重要だった。
味方の後続が続々と到着していく。最初は恐怖していた味方も、魔工帝であるザルツ自らが巨人と戦っているのを見て、自らを奮い立たせた。そして、自分たちも向かって行く。8枚の翼を持つ、4体の大きな黒鉄のドラゴンが、同じくトンボのように羽ばたきながら、ザルツと戦っている悪魔に向かっていく。
悪魔の呼び寄せた軍勢も、到着しつつあった。小鬼のような者、大鬼のような者、蝙蝠のような者など、元居た世界では見たことが無いような連中だった。この世界では、ゴブリン、オーガ、吸血鬼と呼ばれている者たちだ。味方の軍勢は、見たことが無い者に、驚き、恐怖しながらも、向かって行った。相手も、見たことが無い金属の軍隊に驚き、恐怖している。
未知と未知の激突が始まる。
レオルンドが指揮を執る。彼も内心では恐怖しているが、顔には出さない。冷静を装い、蜘蛛型のゴーレムを前線に出し、ドラゴン型のゴーレムで敵陣を牽制する。
軍団同士の戦いは、意外にも順調だった。相手は数も揃っているし、見た目も異様だが、どこか連携が取れていない。長らく戦っていない軍隊であるようだった。つい最近まで、戦い続けていた、ザルツの魔工軍との練度の方が、はるかに勝っている。
兵士たちも、最初は恐怖が勝っていた。だが、戦えない相手ではないと分かり、いつもの調子を取り戻した。勝てない相手はない。殺せない相手ではない。いつもの敵の方が、強かった、と。
ザルツが、レオルンドに合図を送る。レオルンドが大きな黒鉄のドラゴンを追加で4体送り出した。そのドラゴンが到着すると、ザルツが門の向こうに戻って行った。魔力が切れてきたので、ドラゴンを乗り換えるためだ。この巨体のドラゴンは操作が難しく、まともに操作できるのは、今のところはザルツしかいない。それでも3体用意したのは、長期戦に備えての入れ替えと、損傷によって動かなくなった場合の予備として使うためだ。
その入れ替えの時間を埋めるために、12体の大きめのドラゴンを作って、悪魔を牽制するようにした。大きめのドラゴンも、魔力が切れたら順次交代していく。
ドラゴンを乗り換え、少し休憩したザルツが、再びドラゴンに乗って門を越えて来た。
軍団同士の戦いは、決着がつき始めた。相手は逃げるように撤退していく。蜘蛛型のゴーレムが容赦なく追い打ちをかけて、ドラゴン型のゴーレムが、悪魔との戦いに参加していく。
悪魔の目の前に、再び巨大なドラゴンが現れた。口から超高速の弾丸を、連続で叩き込む。ザルツは、味方が優勢に乗じて、攻勢に転じていく。
悪魔も隙をみて、災害のような魔法攻撃を繰り出す。ザルツと大きめのドラゴン達は、急加速して躱すが、何体かのゴーレムは、犠牲になる。それでも頑丈なので、小さくても簡単にはやられない。
悪魔は、戦い続けている。傷を再生し、相手に攻撃を叩き込む。悪魔の攻撃も何発か当たっているが、黒鉄のドラゴン達は頑丈で、一撃程度では怯まない。悪魔は休む間もなく、戦い続ける。
悪魔は、質と量に圧倒され始める。長時間の激戦で悪魔の再生が遅くなってきた。
悪魔の力の源は、奪い続けた魂。それを消費して、災害のような攻撃も、高速再生も成り立っている。だが、長時間の激戦と、絶え間ない連続攻撃によって、その魂を使い果たしつつあった。
悪魔の体躯が、少しずつ、小さくなり始めた。この巨体も、奪った魂によって成り立っていたのだ。
ザルツの仮説が、証明されつつあった。
ザルツが、ドラゴンを繰り、一瞬で加速する。とぐろを巻き、悪魔を締め付け、止めを刺しに行く。拘束した悪魔を見つめたザルツは、ふと、悪魔の造形が気になった。せっかくの機会なので、確認してみることにした。
黒鉄のドラゴンの胸元に穴が開き、複数の触手のような腕が飛び出す。そして、悪魔を確認していく。
悪魔は片っ端から再生してくので、マレフィクスの時のように慎重に作業する必要はなかった。手当たり次第に毟っていく。悪魔の肉片が、地面に散らばっていく。ザルツはひたすら毟り続け、ひたすら確認していく。
悪魔に感情はない。感情はないが、だからといって何かできるわけでもない。もはや振り払う力もなく、ただ毟られ、それに対抗して再生するしかない。
それも、徐々に、終わりに近づいて来た……。
悪魔が、小さな、人と同じ程度のサイズになった。そして、ザルツの手から落ちていく。
ザルツの証明と、確認が、終了した。
もしよろしければ、リアクション、高評価等を頂けると、励みになりますので、よろしくお願いします。




