不穏-1
統一してから2年ほどが経った。統一されたことで国内の治安が改善し、都市の外の住民たちも安心して暮らせるようになってきている。都市間の流通なども活発になってきた。
戦後になってレギウスは都市の内政に尽力した。都市の外の治安改善や、破壊されたインフラの立て直しなどに取り組み、成果を見せている。都市に居た難民たちも、おおむねが元の土地に戻れるようになった。
戦争で精神的に疲弊していたレムルも回復し、今では以前のように精霊魔術師のとりまとめなどを行っている。
ルーカスは引き続き、レムルの側近として活躍している。
アントニウスは、やはり魔工術に興味を持って、隠れて魔工術師たちに交じってゴーレムを弄っている。レムルは複雑な顔をしているが、見ないフリをしていた。少なくとも、アントニウスは楽しそうだったからだ。
レギウス達の都市は、平穏だった。
レギウス達が、家族総出で騎士団の本拠地に居る。霊祭に参加するためだ。統一後は、戦後処理のバタバタで、暫くの間は霊祭が行われていなかった。今年になってから、再開されることになったのだ。
せっかくのお祭りなので、レギウス達も参加することにした。いつもなら来ないレムルも、お祭りだけなら、と言うことで付いて来た。
レムルと義母にルーカスが伴って、祭りに向かって行った。アントニウスは、本拠地の格納庫に向かって行った。レギウスは、一人で本拠地の建物に向かっている。
本拠地に着いたレギウスは、どこか違和感を感じた。
(なんか、忙しそうだな?)
皆が急ぎ足で歩いている。レギウスは、知り合いの顔を探す。廊下を歩く、レオルンドを見つけたので、声を掛ることにした。
「やあ、久しぶりだな!レオルンド!」
レオルンドがレギウスに気がついて、笑顔を見せて、答える。
「本当にお久しぶりですな!レギウス殿!お元気そうで何よりです」
レギウスも、笑いながら、言う。
「ああ、おかげさまで。レオルンドは、忙しそうだな」
それに対して、レオルンドは、少し困ったような顔をした。
「そうですね。色々と対応せねばならぬ事がありましてな。申し訳ありませんが、今は失礼いたします。また後程、お話いたしましょう」
そう言うと、レオルンドは速足でその場から立ち去った。
レギウスは不思議に思った。レオルンドは武人だ。戦争が終わったあとで、なぜ彼が忙しそうにしているのだろうか、と。
レギウスが本拠地の格納庫に向かっている。レオルンドの様子が、少々気になるのだが、本拠地ではほかに目ぼしい人が見つからなかった。そこで格納庫を覗いてみることにしたのだ。
格納庫に到着すると、そこに居た魔工術師に声を掛けた。
「すまん。神殿騎士のレギウスという者だが、息子のアントニウスがこちらに来ていないだろうか?」
魔工術師が答える。
「ああ、あの坊ちゃんなら、あちらの格納庫に居ますよ」
レギウスは魔工術師に礼を言って、そちらの格納庫に向かって行った。
格納庫の扉を開いたレギウスの目の前に、あの巨体の黒鉄のドラゴンが飛び込んできた。このドラゴンがマレフィクスを喰らっていた、あの時の記憶が蘇ってきて、背中に冷や汗を感じている。そのドラゴンの近くに居たアントニウスが、レギウスに気がついて、駆け寄ってきた。アントニウスが興奮気味に、レギウスに言う。
「お父様!凄いですよ!あのドラゴンの新型です!燃費が大幅に改善されて、より性能が上がっています!」
それを聞いたレギウスが、思わず呟いた。
「なんで、また、新しいのを、造っているんだ?」
レギウスが速足で本拠地に戻って行く。アントニウスの話では、あの巨体のドラゴンは追加で2体。あれよりは小さいが、通常より大きいドラゴンを12体も造っているという。
(どう考えても、おかしい)
嫌な予感が頭をよぎるレギウスが本拠地に到着すると、そこにルーカスが居た。ルーカスがレギウスに近づいて来て、言う。
「レギウス様。少々気になることが……」
レギウスが立ち止って、ルーカスに聞く。
「何があった?」
ルーカスが答える。
「この都市に、膨大な魔力が集められています。それに、都市の外の谷間で、何やら大きな建物を建てているとの情報を仕入れました。これは一体……」
レギウスも情報を共有する。
「格納庫に、黒鉄のドラゴンが追加量産されていた。それもあのデカいヤツだ!これはどう考えても、戦争準備だ」
ルーカスが、疑問を顔に浮かべながら、言う。
「戦争って、どこへ?戦う相手なんて、もう居ないじゃないですか!」
レギウスも頷く。そして本拠地の建物を見る。
「だが、その準備をしている。レオルンドなら知っているはずだ。俺が聞いてくる」
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