魔界への日帰り旅行
「ここどこ……」
気を失っていたらしい。目を覚ますと知らない天井が見えた。
「あら?目を覚ました?気を失っていたのよ」
……見覚えがあるようなないような。白衣を着ているから保健室の先生だろうか。
これは僕がエネルギー切れを起こして一時スリープモードになっていたようだな。
追加装備がなくとも、一応エネルギーは自力で作り出せる。動けるまでのエネルギーが溜まったから目を覚ましたらしい。
「アンジェリカは大丈夫でしたか?」
手加減をしていなかった。心配があるとしたらそのくらいだ。
「ええ。貴方をここまで運んできたライムさんに着いてきていたわ。何やら怒っていたけれど……何かしたの?」
「いえ……」
どうやら大丈夫だったらしい。それは良かった。
「今日は早退しますね」
▫
家に帰って追加装備を取って来た。よし、これで準備万端だ。
魔界に突撃しよう。
「【次元障壁破壊】」
まあ本当はワープとか出来たらいいのだけれど、僕は破壊に特化したロボットなので次元の壁に穴を開けることしかできない。
世界の修復力やらなんやらで穴はそのうち消えるので大して変わらないだろう。
「よっと」
魔界に降り立つ。
王城近くにある姉様の屋敷に穴を作ったので魔王城も近くにあると思うが、どの辺だろう。
取り戻した追加装備を全て積んであるため今日は空も飛べるのだ。機嫌良く滑空しながら大きい建物を探す。
サイ・クロニクルを探すのだ。あの魔王、ああいや今は先代か。アイツの娘と思い出して会いたくなった。ソシャゲの情報から類推しておそらく王城にいるとアタリをつけているが、まあいなくても居場所くらいは聞き出せるだろう。
「あれ、ミール様じゃないか。久しぶりだな」
下の方から聞き覚えのあるようなないような声がしたので下に降りてみる。
昔少し話したことのあるような気がする悪魔がそこにいた。
「そうだね。それでちょっと聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」
「ああ、もちろん」
「魔王城ってどこにあるか知らない?」
「……聞いてどうするんだ?」
「何かあるの?」
「いいや。ま、俺もよく知らないんだ。だからすまないが教えられない」
「そっか。時間を取らせて悪いね」
「お互いな」
わざとだろう。この会話中にその悪魔は目を右に向けた。あちらに進めばいいらしい。そこまでして教えてくれるのは、やはり僕と親交のあった悪魔なのかもしれない。どうにかして思い出したいところだ。
速度を上げて飛び続けていると、昔と様相は少し……いや大分豪奢になってるな、の城が見えた。
昔は戦争のためだけの城と言わんばかりの無骨さだったが、今は屋根や装飾も多く、壁も綺麗に塗られ輝いていた。向こうの王城と変わらないかむしろより派手だった。
「たのもー」
城に着いたので、閉まっている扉を無理やりこじ開け、大声を出してみる。城を守る兵士なんかが居そうなものだが、とくに見当たらなかった。
真っ暗だ。誰もいないらしい。
中を歩いていく。僕の目があれば真っ暗闇もまるで真昼の日が刺したビーチのような明るさだ……それはさすがに眩しすぎるな、訂正しよう。そこまでではない。
王城の玉座にたどり着く。さっきから思っていたが、内装は以前とほとんど変わらないようだ。大して手を加えていないらしい。使っていないのかもしれない。
玉座とその周りを観察し、僕は目を見開いた。
……これは、僕のパーツの1つじゃないか?なんでこんなところに。
「誰!?」
やっと人の声が聞こえた。そちらの方に顔を向けるとストレートの長い黒髪が特徴の、人形みたいな少女が立っていた。
───────いた。