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プロローグ②

「なんのことかな?」


ちょっと焦る僕だ。僕はあくまで黒幕だ。今回はノーマルエンドルートを開拓しようとしている。詳細は知らないがおそらくこんな感じだろう。そう信じて突き進んできた。


まず僕がやったことは高等部編入してきた時点でライムを強制レベリングで強くし、アーノルドに紹介。決闘で勝たせ、口説かせた。アーノルドくんはメンタルが激弱なので、ライムちゃんがいかに短時間で強くなったか将来がどれだけ有望か僕が説明し、ライムちゃんに依存させる。ライムちゃんは頼られるのに弱い主人公属性なので受け入れてしまうと。そしてライムちゃんの方には強さへの自信を持たせ、他国で名を挙げることへの可能性を示唆……といったところだ。大したことはしてないな。


ゲーム内において、今の所僕は倒されたことも、表立って悪事を暴かれたこともないんだったか。元々はそんなルートも追加される予定だったとのことだけど……僕、ミール・ストレンジャーはあまりにも人気が出なくてたち消えになったらしい。おかげでヘイトタンクである。まあ僕本人じゃないしいいけど。


「貴方はそう答えるでしょうね。……第1王子は継承権を放棄しています。今の王が玉座を譲ればそこにアーノルド様が立つ。そういう話でした」


そうだ。しかし僕の姉様も王位継承権は放棄しているので、姉様を王にするならば、第1王子も排除しなくてはいけない。

まあ動機は別にそれだけじゃないけど。


「第2王子であるアーノルド様が継承権を放棄し、国から出て行くことになれば!現国王の弟である貴方に王位は渡る、そういうことでしょう?」


「……」


ああ、そういやそういう設定にしたんだったっけ。


まず、僕、ミール・ストレンジャーの境遇について説明しよう。

僕は古代文明によって作られた世界破壊兵器であり、この国の初代女王が建国する際に手を貸した戦友である。約定によりこの国は僕のものでもある。建国記においてもそういうことになっている。しかし、その戦友に裏切られ、パーツをバラされて城の庭に埋められてしまったのだ。


それからだいたい800年後、僕は姉様……現国王の妹に掘り起こされた。そして、死んだと思われていた僕が生きていたことを知り、事情を把握した国の上層部の人たちは頭を抱え、ひとまず僕を当時の国王の息子とすることで手を打つことにしたのだった。僕もそれに同意して今の立場になっている。

姓は王家のコロネの方じゃなく、姉様と同じストレンジャーを勝手に名乗らせてもらっているけどね。


何、800年も埋められて辛くなかったって?HAHA、大丈夫さ。僕が前世の記憶を取り戻したのは埋められて700年ちょっとしてからだ。それまではロボットの理屈で動いてたから大したことなかったのさ。……ごめん、やっぱ100年近く状況も掴めず土の中は辛い。本当に辛かった。掘り起こしてくれた姉様が女神様のように見えたよ。


800年前の記憶はあったわけで、その記憶からこの世界は乙女ゲームの世界だと僕は推定したわけだ。一応ゲーム本編はやっていないが、キャラを使ったバトルゲーのソシャゲの方はやっていたので、設定には無駄に詳しいのだ。リロード画面とかキャラクター説明欄とかかなり読み込むタイプだったのが幸いした。そのため、この国の設定はしっかり頭に入っていた。まあ、本編をやってないから展開はさっぱりなんだが。


僕が前世何をしていたかって?100年の間に忘れたよ。ゲームの記憶を覚えていただけでも褒めて欲しい。


「これは困った。反論できそうにないな」


やれやれといった感じで首を振る。

国の上層部は当時と大分入れ替わったとはいえ、僕が本当は王子でもなんでもことは知っているし、これで僕が裁かれる根拠としては薄いことも分かるだろう。そもそもこの国は最初から僕の物なのだからそんなことをやる意味もない。


「それではお認めになるのですね?」


「……僕は君の方こそ怪しいと思うけどな」


「へ?」


レイチェルもさすがに予想外という顔だ。


「だってさ、そもそも僕は出自がほとんど不明な突然生えてきた王族だし、王位継承権なんてあってないようなものだ。冷静に考えてみろよ、アーノルドの王位がたち消えたら次が誰になるか?リード公子だろ?君の従兄弟だ。それに事の発端は君のいじめ……言うほどいじめかなぁ。まあそれだろ。そりゃ僕だってアーノルドくんにライムちゃんを紹介したけどさ」


「……」


僕も予想外の展開ではあったが、こうやって口で適当なことを言うのが上手いのだ僕は。

それが逆に胡散臭さにつながってるのでプラマイゼロどころかマイナスまであるが。現にパーティーに参加している面々は僕を疑いの目で見ている。

問題はあるがなんだかんだ人気のあるアーノルドくんと、剣技で人を黙らせられるライムちゃんが味方じゃなきゃ詰んでたぜ。


「いじめ?なんのことでしょう」


本気で分からないといった様子でレイチェルが首を傾げる。……確かにレイチェルがライムちゃんに暗殺を仕掛けるところを見てないな。

あれ?もしかして僕早まった?


「あれ?いじめじゃないの?え?じゃあなんで婚約破棄するんだい?」


とりあえずすっとぼけることにした。マジで状況を把握できていないアホを装ってやる。僕は知らないフリが得意だ。誰よりも上手いぞ。なんも誇れないけど。

おかげで周囲も本当にミール・レストレンジは何も知らないのか……?という雰囲気に持ち込むことができた。一応頭の良さで売ってる僕なのでちょっとプライドはズタズタだ。


「……俺はレイチェルのこと否定とかしたくないけど。でもさすがに食事に腹壊す程度の毒盛られたりとか、俺がめんどくさいだって言ったら剣術指導に剣聖連れてくるとか、普通に嫌だった」


目を逸らしながらアーノルドくんがボソッと言った。ああ、それを近くで見た僕がいじめだと思ったってことにしてくれる感じだろうか。ありがとう。


「それは、貴方のことを思って……!」


「知ってる。毒もお前のちt、ごほん、暗殺に怯えるだけの俺に発破をかけたかったんだろ?剣聖の件も俺に自信をつけさせたかったんだよな?分かってるよ、分かってるけどさ。……はあ。俺たちやっぱ合わねえよ」


アーノルドくんが嗚咽を漏らしながら言った。彼が小さい頃から見ているから分かるが、彼はとてもメンタルが弱いのだ。誰よりも自由人で、かつ他人を責めたりしないで抱え込むから分かりにくいだけで。良い奴とはさすがに言わない。ちょっと攻撃的すぎる性格……性質をしてるので差し引きマイナスですかね。

なお当たり前のように僕も怖がられている。悲しい。


「国王陛下がお呼びです」


王に事情を伝えた兵士が戻ってきた。



「───────以上が今回の処分とのことです」


宰相が国王の言葉を代弁した。

どうやら、アーノルドくんとライムちゃんが付き合うのは認める。国外逃亡は認めない。王位継承権放棄も認めるが、あと2年経ってから考えろと。そしてこいつは王位継承権を放棄するかもしれないがレイチェルは婚約したままでいいのか?よく考えておけということだった。


……やっぱ僕早まったかなぁ。


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