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4人目の攻略キャラ

「おはよう」


「!?……ああ、ストレンジャーか」


アーノルドくんに話しかけてみたら驚かれてしまった。後ろからこっそり近づいてみたからだろうか。


「魔法の研究は順調?」


「そうだな……順調、だと思う」


この答えは予想通りだ。アーノルドくんは見栄っ張りなので少しでも成果が出ていれば順調と答えるだろう。ちなみに、本当に順調だった場合は失望されるのを恐れて謙遜してくる。

そんなんだから友達が少ないんだぞ。僕が言えたことでもないが。


「ちょっとだけでいいからどんな感じか見せて欲しい」


「……分かった。振動魔法、1」


しぶしぶといった様子で鉛筆を立てて、手をかざし何かを呟いた。すると、机が揺れ、鉛筆が立った状態のまま、まっすぐスーッと前に進んだ。

……相変わらず器用だなぁ。


「え、それだけ?」


アーノルドくんがビクッとした。いや今のは僕じゃないよ。僕はちゃんとその凄さ分かってるから。

そもそも人間は悪魔と違って魔力……魔法を使うための通貨みたいなものだが、それが少ないのだ。炎を少し出すだけの魔法でも使える人間は限られている。

振り向くと魔王が覗き込んでいた。何、お前一応正体隠してるんじゃないの?王子かつ国有数の武力を誇るアーノルドくんの前に出て、しかも煽るようなことを言うとはなかなか神経座ってるな……。


「失礼なやつだな」


ああ、アーノルドくんも僕が言ったんじゃないと分かったらしい。魔王に対してちょっと怒っている。


「あーあ、これだから魔法エアプは。これが分からんとは」


さらに後ろから誰かが眼鏡を指で押し上げながら出てきた。背も高そうだ。というか高い。180cmくらいありそうな魔王よりも大きい。身長で目立ちそうなものだが見覚えがないな。先輩だろうか。


「これはこれは王太子殿下に王弟殿下。お見知り置きを、オスカー・エリックと申します」


……。エリックって宰相の息子かな?確か今年17歳になるとか言ってたっけ。


そういえば緑色の髪で眼鏡をかけていて宰相の息子と言うと、ソシャゲのプレイアブルキャラにいたような気がする。かなり面白い性能をしていた気もするが、僕はガチャ引いてないんだよなぁ。おかげで設定もよく知らないぞ。というかこんなに高身長だったのか。

目立つし攻略キャラなのかな?そう思ってよく観察するが、いわゆる美形の特徴としてありがちな、まつ毛の長さとかそういうのは見受けられなかった。


「無知蒙昧な我が友に教えてやろう、今の魔法はこの国の祖、ドロシー・コロネが得意としていたと言われる振動魔法に酷似している。彼女はこの魔法によって1つの国を滅ぼしたとも言われているんだよ、さすがに盛ってるとは思うけどな!と、違う違う。この魔法の凄いところは一部分を刺激しただけ、つまり一般的であろう火魔法で言うと火花を出す分の魔力か?でこの結果を生み出しているということだ。あ、もしかして結果自体が分かんない感じ?結果に方向性と距離を持たせるのってそれだけで魔力結構いるんだぞ?その過程を全て飛ばしているわけだ、ですよね!王太子殿下!」


「あ、ああ、そうだな」


さっきまでの無礼ですらあった慇懃な態度はどこへやらニコニコと早口でまくし立てるオスカーに困惑気味で答えるアーノルドくん。

表情も声色もほとんど変わっていないから、この変化は僕みたいに旧知の仲でもないと分からないだろう……何気にアーノルドくんが困ってるの珍しい気がする。


「でも凄いのは俺じゃない。さっきエリックが言った通り振動魔法は初代女王が使っていた魔法だ。詳細が記載されている本だってたくさんある。俺は王子だから、普通の人より多く読める。それを使わせてもらってるにすぎないんだ」


しかし、即座に事態を把握し、謙遜する。


「いえいえ、これは王家への侮辱に当たるかもしれませんが……今までの王族は誰も扱えなかった魔法です。それを解読して利用できるのはやはり殿下の才能に違いありません」


「そ、そうか?」


アーノルドくんがめちゃくちゃ嬉しそうだ。

これもまた珍しい。さすが宰相の息子、恐るべきコミュニケーション能力だ。


『どうだ、俺の友達は。すごいだろ?』


小声で魔王が僕に囁いてくる。

いや元はと言えばお前が怒らせたからだろ。


『確かにすごいね』


僕はとりあえず適当にそう返した。



魔王達がいなくなった。

オスカーは先輩で上の階に教室があるため、そこまで着いていくらしい。


「アーノルドくん、君ならこれを扱えると思ったんだ」


そう言いながら本を渡す。


「……。…………。これはっ!?」


「僕が苦労して復元した古代の魔法書だ」


さすがの僕でも大変だった。その本は破り捨てられて土に埋められていたのだ。おそらく僕が埋められたのと同じタイミングで。

つまり800年分巻き戻したのである。


「なんでこれを俺に?」


さすがアーノルドくん一瞬で冷静になった。


「何回でも言うけど、君ならこれを扱えると思ったんだ。その理由は読んでみれば分かるさ」



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