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プロローグ①

1年生2学期初めのパーティにて


「婚約破棄をしてもらえないか?」


そんな声が響いた。そこに立っていたのは黒髪の体格の良い男前、アーノルド・コロネ。この国の第2王子だ。隣には茶髪の少し童顔な少女、ライムがいる。平民なので姓はない。


もう知っているだろうが、この世界は乙女ゲーの世界である。結構有名なタイトルであり、ソシャゲが出ていて……この話は今じゃなくていいか。


アーノルドはそのゲームの攻略対象であり、世界で1番剣を扱いのが上手いと称される剣聖にも剣を褒められるほどの凄腕の剣士だった。ただお約束と言えるかもしれないが……少し欠点があった。強い剣士と見るや決闘を申し込む、血の気の多さがあった。


本作のヒロイン、ライムは諸事情あって隠しているが、そもそも剣の腕を見込まれて特待生として学校に入学している。そして、暴漢に襲われる同級生を見て、思わず暴漢を腰に下げていた剣で撃退してしまう。それを目撃していたアーノルドはもちろん決闘を申し込み……そしてヒロインは勝利してしまう。


ちなみに剣術ステータスを上げていないと普通に主人公が負ける。


そしてアーノルドは剣士としての名誉を傷つけられる訳だが、実は剣士じゃなくて魔法の研究がやりたかった彼はそれが目的で凄腕の剣士に喧嘩をふっかけていた。剣聖に認められてしまい魔法を勉強したいなんて言えなかったのだ。彼は今までの態度が嘘のようにヒロインに非礼を詫び、必ず貴女の強さに見合った名誉を約束しよう、と言った。ヒロインは剣士としての矜恃はこれから私がもらいうけると発言し、アーノルドは恋に落ちる。


「理由をお聞きしても?」


そう問いかけるのはアーノルドくんの婚約者であるレイチェル・ミーシアだ。栗色の髪に紫色の目で、顔は正直主人公以上に地味だ。1キャラルートのみの悪役に労力は裂けなかったのもしれない。


侯爵令嬢で、生まれた時から王妃(王子妃ではない)になるための教育を受けている。ここで婚約破棄をされると著しく名誉を傷つけられ、同情されるであろう立場だ。大変苛烈な性格で、婚約者を奪おうとするヒロインを本気で殺しにかかってくる。障害はは何をしてでも排除しろという家訓がある家だ。そういうこともあって選択肢を間違えるとヒロインは死ぬ。


まあセーブandロードのあるゲームは生存ルートが正史であるので、ライムちゃんの機転と脅威の身体能力により、暗殺の全てをかわすことに成功する。そしてレイチェルは婚約破棄イベントで全てを失い、失意のまま若くして死ぬ。お家取り潰しとかは特にない。

レイチェル実家で暗殺されたんじゃね?とか言ってはいけない。


「俺な、ライムのヒモになるわ」


アーノルドはなんの気なしにそう言った。


「……」


さすがのレイチェルも絶句だ。予想だにしていなかったという顔だ。


「ストレンジャーに言われてな、お前より強い女がいるから戦ってみろって。それで戦ってみると確かに俺よりずっと強い!俺ほんとは剣士なんてなりたくなかったんだ。というかぶっちゃけ戦いたくねえ。痛いしめんどくさいしつまんねえし……。そこに現れる女神!ライムはな、俺より強いし守ってくれるし可愛いし一生養ってくれるって言うし……俺もうなんも考えたくねえよ、魔法の研究だけしたい……」


どんどん声が小さくなって、隣にいるライムに縋り付くように顔を背ける。表情を見ると泣きそうな顔だ。


「何を言っているか分かっていますか!?これは貴方にとって不利となるのです。私と婚約破棄をすれば貴方は私の家との縁を失い、恥をかかせたとして立場を失うことにつながるのですよ!!?」


レイチェルが声を荒らげる。そりゃあそうだ。彼女も生死がかかっている。

ただ、生来の頭の出来か、鋭い発言だ。


「分かってる、だから俺とライムはこの国を出ていく。レイチェル、お前を俺に付き合わせるわけにはいかない。婚約破棄をしてくれるか?俺の勝手な願いだからお前の名誉が傷つけられることもない」


「そんなの、そんなの認められませんわ!……。そもそもなんでこんな目立つ場で仰るのですか?私に恥をかかせるだけじゃありませんか。それに、根回しをしておりませんよね。警備の人が慌てて王城に行くのを見ましたよ。国を出て行く前に国王陛下に止められるのが落ちではなくて?」


焦っていたレイチェルだったが、言葉の途中で突然無表情になり、冷めた調子で言葉を連ねはじめた。


「……それは大丈夫」


ライムがここで初めて口を開いた。


「私たちは駆け落ちする。私が倒す。だから問題ない」


正面を向く。意志の強さを感じる澄んだ目だ。まあいくら強くしたとはいえ1人じゃ国外逃亡までは厳しいと思うが。


「強いのはこれほどないくらい知っていますが、貴女1人じゃ無理でしょう。誰か後ろ盾がいますね……この状況で得をするのは、ああ、……そう。貴方ですね?ミール・ストレンジャー」


そう言ってレイチェルは咎めるように【僕】へ視線を向けた。



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