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彼とのキス。

作者: 瀬崎遊
掲載日:2023/09/27

 彼との初めてのキスは鼻の頭がぶつかった。

 触れただけの唇が少し離れて、目があって、二人して小さく笑って肩をすくめた。


 二度目のキスは『ちゅっ』と小さな音が鳴って離れて、唇の感触を感じたのは唇の端っこだった。

 きゅっと手を握られて、嬉しくて、恥ずかしくて叫び出したい気持ちになった。


 三度目のキスは唇と唇がしっかり重なって、離れていった。 

 キスしたことが恥ずかしくて、目を合わせられなくて、彼の肩にもたれかかった。

 ぎゅっと抱きしめられてもっと恥ずかしくなって、なおさら顔を上げられなくなってしまった。


 キスの回数が増える度にドキドキして、キスの前よりもっと彼のことを好きになった。


 何度キスを交わしたかしら?

 ドキドキが安心感に変わって、私には彼しかいないと思うようになった。



 初めて人前で触れるだけのキスをして、涙を流して、名字が同じになった。


 キスの回数が何百、何千回になった時、三人家族になり、四人、五人家族になった。

 

 子供達にも沢山のキスをして、彼と二人で幸せを噛み締めていた。


 見つめ合い、微笑みあって、幸せを感じた。


 何万回目かのキスをした朝、彼を送り出し、いつもより遅い夜、帰ってきた彼は、冷たくなっていた。


 歩いていたところを運悪く馬車を引いた暴れ馬が、彼を蹴り飛ばして、踏みつけて、馬車に轢かれた。


 不思議と顔には傷ひとつなく、綺麗な顔だった。


 すすり泣く声が聞こえる中、私は彼の頬に触れ、最後のキスをした。

 生気がない、冷たくてしょっぱいキスだった。


 眠る彼に蓋がされ、彼は長い眠りについた。



 私は三人の子供を抱きしめ、彼が埋まってしまった場所を長い間、見下ろした。

 そして彼に最後の約束をした。子供達をちゃんと育てると。


 彼の匂いが残るベッドに入ると、自然と涙がこぼれた。


 涙がこぼれなくなり、彼の匂いが薄れ、寂しさだけを感じるようになった。


 何度も彼の傍に行きたいと思った。

 でも、彼との最後の約束を思い出して、子供達に彼の分もキスを送った。



 子供達が結婚して、孫が生まれて、曾孫を三人抱いて、やっと彼の下に行く、眠りにつくことになった。

 私は夢を見た。

 彼が迎えに来てくれる長い長い素敵な夢を。 

 ベッドで眠るときと同じように彼の左側の地中で・・・。

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