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愛は全てを解決しない  作者: 火野村志紀
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7.私の大切な(ミシェル視点)

 セザールと出会ったのは、十年前。隣国の酒場を訪れた時だった。

 お父様の商談に着いてきたけど、特にやることもなくて王都を観光していた。

 そしてたまたま立ち寄った酒場で、酔い潰れている男を見付けたわ。


 今まで出会ったどんな男よりも、整った顔立ちをしていた。

 真っ赤な顔でテーブルに突っ伏す姿を見て、ぺろりと舌なめずりをする。

 この人を食べちゃいたい。


 店員に知り合いだと嘘をついて、酒場から連れ出して近くの宿屋へ向かった。

 その後は簡単よ。私の誘いを受けて断れる男なんていない。獣のようにギラギラした目で私を貪る彼は、とっても素敵だったわ。


 ピロートークの最中、お互いの素性を明かした。

 セザールは男爵家の当主だった。そして自分を取り巻く環境を疎んでいた。


「私はどうにか男爵家を再建しようとしているんだ。だが誰もそのことを理解してくれない……先日の事業だって、妻が余計なことを言わなければ……!」


 子犬のような目で私を見詰めてくるセザールに、私は無言で頷いていた。

 彼に同情する振りをしながら、どうやって彼を手に入れるかを考えていたの。

 だってこんな美形を逃すなんて勿体ない!

 それに、体の相性は最高。

 セザールは私が首輪を着けて、大事に飼ってあげるんだから。


 心が弱っていたセザールは、すっかり私を信用しきって男爵家を捨てると決意した。

 もう少し悩むと思っていたから、ちょっと意外だった。

 だから一応、「奥さんと娘さんはいいの?」って聞いてみたわ。

 そうしたら、


「私は妻と子供のために、自分を犠牲に出来ない……頼む。私を窮屈な世界から連れ出してくれ!」

「勿論よ。大好きなあ・な・た」


 こうしてセザールは全てを捨てて、私を選んだ。

 私たちの国へ亡命した後、お父様にお願いして架空の戸籍を作って結婚した。

 初めはお父様も渋っていたけど、二人で駆け落ちすると言ったら、慌てて動いてくれた。ふふ、ただの冗談だったのにね。


 そしてエルマも生まれて、私たちは幸せな日々を送っていたはずだったのに……!


「お父様! ちょっといいかしら!?」


 私が執務室に乗り込むと、ルシマール商会の重役たちが集まっていた。

 皆、一様に深刻そうな表情をしている。売上が下がって、お父様に怒られているのかしら。


「ミシェル、今は大事な話をしているんだ。後にしてくれ」

「こっちだって大事な話よ! セザール様をお父様の補佐に戻し……」

「そのセザールのせいで、うちの商会は大変なことになっているんだ!」


 お父様に怒鳴られるのは生まれて初めてで、私は思わず後ずさりをしてしまった。

 それに商会が大変って……一体何が起きてるの?

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