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愛は全てを解決しない  作者: 火野村志紀
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6.商談不成立

 アデラが帰った後、会長へ報告することにした。

 彼女が取り扱っているのはただの偽物であり、ルシマール商会には相応しくない。

 そのことを切々と訴えると、会長の顔はみるみるうちに歪んでいった。

 人工宝石のことを知らなかったのだろう。やはり契約を結ばなかったのは正解だった。

 そう思っていたのに、


「馬鹿者! 何故そのようなことを言ったのだ!?」

「な、何のことでしょう……?」

「人工宝石を偽物と言い切るとは……君に任せるべきではなかった!」


 会長は握り締めた拳で机を叩いた。

 わけも分からず非難され、私は思わず声を荒らげてしまう。


「私はこの商会のために、アデラとの契約を断っただけです!」

「彼女の宝石は、平民たちから絶大な人気を誇っているのだぞ!?」

「それは彼らが宝石の価値も分からないからです。あんなゴミ、貴族は認めませんよ!」


 そう叫んだ直後、右頬に痛みが走った。

 殴られたのだ。拳を震わせながら、会長が鬼のような形相で私を睨み付ける。


「君を信用した私が愚かだった。娘が選んだ男だからと大目に見てきたが……」

「わ、私が一体何をしたというのですか!」

「黙れ! 商談の前に、アデラや人工宝石のことを調べておかなかったのか!?」

「それは……」


 会長の詰問に、言葉を詰まらせる。

 自分で言うのもなんだが、私は宝石を見る目がある。

 商談でも、宝石を褒めちぎっておけば契約を結べると思っていたんだ。

 だが、人工宝石となると専門外だった。今まで興味すら持とうとしなかった。


「……もういい、出て行け」

「会長!」

「後はアデラ次第か……彼女がこの一件を公にすれば、うちの立場はかなり苦しくなる」

「なっ……それはどういうことですか!?」

「そのぐらい自分で調べろ!」


 結局、会長に許してもらえないまま執務室を追い出された。

 それだけではない。この日を境に、私は補佐を外されてしまった。


「あなた、一体何をやらかしたの?」


 部屋で項垂れている私に、ミシェルが心配そうに声をかけてきた。


「分からないんだ……どうして会長があそこまで怒っているのか……」


 商人との取引が失敗するなんて、よくあることだ。目くじらを立てなくてもいいじゃないか。

 さてはアデラが美人だからか?

 私が会長への不平をぶちまけると、ミシェルは真摯な表情で頷いた。


「お父様ったら大袈裟なのよ。私がちょっと文句を言ってきてあげる」

「本当か!?」


 やはりミシェルは、私にとっての女神だ。いつだって私を正しい方向へ導いてくれる。


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