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居場所

 修ちゃんが出ていって、何日、何ヶ月経っただろうか。季節は春になっていた。

相変わらず、夕方になるとベランダでつまみ片手にビールを呑んでいた。

子供達の声と、お他所の夕飯の匂いに包まれて。

自分では気が付いていなかったが、修ちゃんが居て始めて私の居場所だったようだ。

修ちゃんが出て行った当初は、我が家なのに訳の分からない違和感で居心地の悪い、落ち着かない、どしようもない状態に陥った。

 それでも生活があるので、なんとか希望の図書館での仕事を見つけ、私らしく暮らせるよう努めていた。


 しばらくすると、我が家に残る修ちゃんの気配にのおかげで眠れるようになった。

だから、独り身の私にはこの住宅はこたえたが、ここから引っ越す気にはなれなかった。

それでも家族連れを見ると修ちゃん、修也君、紗綾さん三人家族で仲良く過ごしているかと脳裏をよぎり、孤独で寂しかった。


 そんなある日、気が付いてしまった。マンションの前の公園で佇む修ちゃんの姿を、目の悪い修ちゃんは私に気づいてないようだった。

ベンチに座って、夕日が沈みきるまで我が家を見ていた。

 その姿を見ると直ぐにかけていって「お帰りなさい」と言ってあげたかった。


 表情こそ見えないが、苦悩が伺えた。

修ちゃんも苦しんでいるのかもと思うと、距離が縮まったようで嬉しかった。

また、近くにいると思うと、まるで修ちゃんと住んでいた頃の我が家のようにしっくりと馴染んだ。

 私はいけないと思いつつも、毎日修ちゃんの姿を待った。

そして修ちゃんを見つける度、「おかえりなさい」とつぶやいた。


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