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小春日和

 その日の夜にお通夜、翌日葬儀とあっと言う間だった。

遺影の中で微笑む彼は、私の知らない彼だった。きっと再婚してからのものだろう。


 若すぎる彼の急死は、多くの人々の悲しみを誘った。

皆一様に悲しみに暮れる様が逆に現実味を失わせ、私は自分の身の置き所に困った。

小さい修也君を連れた紗綾さんの姿だけが、悲しみの中一人たたずむ孤高の未亡人のようでリアルだった。


私は元妻なので目立たぬ様お焼香をして、そっと帰った。

実際、私の彼を見送る儀式は、我が家に帰ってきたあの最後の日済んでいた。




 自宅を片付けようとした時、修也君が寝た布団がそのままになっていた事に気付いた。

布団を干そうと持ち上げた時、修也君の匂いがした。

私はその場で布団を抱きしめて泣いた。

こんなかわいい子供を、遺していった修ちゃんの無念を思って涙を流した。




 その後、何日過ぎたか分からなかった。

日々、図書館と家を往復し、たまにスーパーへ。

まるで味の無いガムを、ひたすら噛み続けるような日々を送っていた。


 気が付くと朝晩と肌寒い季節になっていた。

紗綾さんから、四十九日の法要、納骨式の案内がきた。

私は、遺骨になった修ちゃんを知らない。

火葬場には行かなかった、、、行けなかった。

修ちゃんが骨になるのを待つだけの時間なんて、冗談のようだったから。

 

 それなのに、今更、遺骨になった修ちゃんと対面するのも如何なものかと出席を迷ってた。

そんな時、紗綾さんから電話がかかってきた。

「ごめんなさい。急に電話して、用件は他でもないの。

修一さんの四十九日の法要なんだけど、出席して貰える?」

私は、欠席するつもりでいた。

でも、脳裏に夢で逢った修ちゃんの

『修也と紗綾さんの力になって貰えると安心です』との言葉が過ぎった。

「ええ、出席させて貰うわ。」と答えていた。


              


 明日は納骨だ。週末で体は疲れていたのに、なかなか眠れなかった。

ふと、最近忘れていた夜のビールを思い出した。

上着を羽織り、ビール片手にベランダのサッシに腰をおろした。

身震いする寒さだったが、修ちゃんが亡くなって以来、不抜けていた私は正気に返ったようだった。

私は顔を上げ、空を見上げた。雲一つない星空だった。


 当日は小春日和だった。

久しぶりに逢う修也君は、以前より語彙が増えていた。

紗綾さんは、こちら不安になるほど痩せ細っていた。

しかも、気丈にに振る舞う姿が痛々しかった。

紗綾さんに話し掛けたかったが、親戚への挨拶で追われる紗綾さんに挨拶程度しか交わす事が出来なかった。

修也君は、紗綾さんの側を片時も離れなかった。


 法要の数日後、やはり紗綾さんの様子がどうしても気になった。

私は、樹雨を訪ねてみることにした。

お店は開いていたが、紗綾さんの姿が無かった。

勇気を出してオーナーで紗綾さんのお母さんに、声を掛けた。

「ごめんなさいね。せっかく訪ねてくれたのに。

修一さんが亡くなってから、気持ちが沈んでなかなか店に出られないの。

私は店があるから側について居てやれず、心配してるのよ。」


私はお礼を言って店を出た。そして直ぐに紗綾さんに電話をした。


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