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彼女の懺悔

 朝、目が覚めたら、家の中に紗綾さんの姿が見当たらない。

紗綾さんの鞄も、靴も無ない。電話を掛けたが出ない。嫌な汗が頬をつたう。


 取り敢えず、修也君を連れて病院へ急いだ。

修ちゃんは相変わらず、目を閉じたまま深い眠りについていた。

 ナースステーションで紗綾さんが立ち寄った事は確認できた。


 病院の敷地内を探していたら、中庭のベンチに紗綾さんを見つけた。

紗綾さんは、私の顔を見た途端、声を出して泣きだした。

「修一さん、ずっと疲れた顔してたの。夜中眠れずにソファに座っている姿を幾度も見たのに。

一緒に住みだしてから、いつも落ち着かない不安そうな顔してた。

いつか彼が壊れるのではないかとの心配していたの。

でも、いつも私達の事大事にしてくれてたから、側にいて欲しくて気が付かないふりをしてたの。

もっと早く話合っておけば良かった。」


「修ちゃんは二人のことをとても愛していたと思うの。だから先に去る準備なんか出来てないのよ。早々に眼を覚ますわ。その時は、叱ってやろう!こんなに皆に心配かけてさ。」


 紗綾さんは私の手を強く握りしめた。 

「もしかして、とは思ってた。でも、昨夜有加さんの家に行った時に確信したわ。

修一さんはここに戻りたかったんだって。

もっと早く、無理にでも有加さんのとこに返していれば良かった。」


「紗綾さんが責任を感じることではないよ。

きっと紗綾さんが突き放しても彼は二人の側を離れなかったと思うわ。

貴方が愛した彼はそんな無責任な人ではないでしょ。」


「私が有加さんから、修一さんを引き離さなければ、こんな事にならなかった。

私の我儘が招いた結果よ。誤って済むことことじゃないけど、本当にごめんなさい。」

私は、彼女の後悔とも懺悔ともとれる言葉を聞いた。


「紗綾さん、あなたは修也君という宝物を彼に与えてくれた。

彼は結婚前から子供のいる家庭が欲しいって言ってたの。

これは私には絶対できなかったこと、私は不妊症で子供が望めなかったの。

彼は私のせいじゃないと言ってくれたけど、原因は明らかに私にあったの。」

話ながら不器用だけど、優しかった修ちゃんを思い出していた。


「何度か流産を繰り返し、悲しむ私に不妊治療をやめようと言い出したのは彼だった。

私を気遣い二人でも幸せだよって、言ってくれたけど、ずっと心苦しかった。

だから、修也君の事を聞いた時、心のどこかでホッとしたのよ。

だから私に罪悪感を感じることは無いわ。

罪悪感を持つべき人は、修ちゃんよ!こんな良い女二人をこんなに悩ませ、心配させて。」



 その時、看護師さんが走ってきた。

「渡辺さん!ご主人の容態が急変しました。早く来て下さい。」

走っていく紗綾さんの背中を見ながら、永遠に修ちゃんを失うかもしれない恐怖で震えて脚が前に出でなかった。


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