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1.おかしな依頼

お久しぶりの死霊術師です。今回は墓室の中で発見された不審な屍体の解明に主人公が挑みます。四話構成です。

「墓ん中に屍体があった? 別におかしな話じゃねぇでしょう?」

「その屍体の()(もと)が不明という点を除けばな」

「はぁ?」


 ギルマスが妙な事を言い出したんでこっちも面喰らっちまったが、詳しく聞かせてもらって納得した。


 ……そうだな。話のついでだから、この国における葬制ってやつについて(ひと)(くさり)説明しとくか。ま、お復習(さら)いってやつだと思って聴いてくんねぇ。


 死んだ後のホトケさんをどう始末するかについちゃ、この国じゃ大体二つに分かれる。簡単に言やぁ。火葬(やく)土葬(うめる)かだな。

 国やお偉方は、疫病やアンデッド化を防ぐために火葬を薦めちゃいるが、余計な手間暇や金がかかるってんで、嫌がる(もん)も多いのよ。火葬しなかったからって、別にお(とが)めを受けるわけでもねぇしな。あぁ、信仰上の理由とかで、火葬を拒む連中もいるぜ。何でも、死後の復活のために肉体が必要――とか言ってよ。……例によって「賢者」のやつは、キリスト教だとか騒いでやがったが……


 ま、何にせよだ。ちゃんと墓が作ってもらえるなぁ幸せ(もん)だ。冒険者なんかだと屍体が見つけてもらえねぇとか、そもそも死んだのかどうかすら判らねぇ事も多いからな。行き倒れなんかも、適当に埋められたり焼かれたりしてそのまんまだしよ。


 まぁともかくだ、土葬にするったって、そんじょそこらに勝手に埋めちまうわけにはいかねぇ。んな事すりゃあ、手が後ろに回っちまうからな。で、墓場に持ち込んで埋めるって事になる。埋めたホトケさんがアンデッドになっちまったら色々と(まず)いんで、墓場にゃ墓守を置く事になってる。……この事ぁ前にも話したよな?

 ところがだ、墓場の広さってのは限られてるから、そう無制限にホトケさんを埋める事ぁできねぇ。んじゃどうすんのかってぇと……屍体が骨んなった頃合いを見計らって掘り出してな、骨壺に収めて改葬すんのよ。納骨堂ってやつだな。あぁ、火葬にしたやつは、最初っから納骨堂に収められるぜ。


 で、この納骨堂なんだがな……墓園が管理してるもの以外に、一族で保有してる納骨堂ってやつも結構あるんだな、これが。



・・・・・・・・



「……つまり何ですかぃ? どっかのお貴族さまが新骨(にいぼね)を収めるために久方ぶりに納骨堂を開けたら、中に屍体が転がってた――と?」


 ギルマスが〝墓〟だなんて言うから、てっきり土葬にされた棺桶か何かの話だと思ったじゃねぇかよ。納骨堂なら納骨堂と言ってくれりゃ……


「あぁ……まぁ、間違っちゃいねぇんだが……お(めえ)の考えてる〝納骨堂〟たぁ少し違うと思うぞ、多分」

「……はぁ?」


 俺が考えてたなぁ、石造りの小屋みてぇなやつなんだが……仕事で行く墓場の納骨堂もそんなんだしな。けど、ギルマスの話によると違うらしい。


「何でも地所がそこまで広くねぇとかで、異国風の墓室(はかむろ)をこさえる事にしたらしい。墓石の下に小さな地下室みてぇなもんを造って、そこに骨壺を収めてるそうだ」

「はぁ……」


 ……どうも()く解んねぇな。以前に「賢者」が話してくれた「ニホン」とかいう国の墓に似てるような気もするが……あの時も結局は、言葉だけじゃ解らねぇって話で終わっちまったからなぁ……


「ま、その辺りは向こうへ行ってから現物を見てくれ。口だけじゃ上手く説明できねぇからよ」

「……俺が行くなぁ決まってんですか?」

「修道会と領地貴族、おまけに領兵本部の共同指名依頼だぞ? 断る度胸があるってんならそうするが?」

「……行ってきます……」


 ――てなわけで、俺ぁトボトボと現場に出向いたわけだ。……あぁ、遙々(はるばる)ショックレー騎士爵領とかいうところにな。


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