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まずはこの膨大な瘴気を祓わなくては。私は持っていた団扇を少女に向って煽ぐ。一振ではとても祓えない。もう二、三度煽ぐ。すると元の少女の気配が顕になる。
成程。周りの禍共が好みそうな強烈な霊気。私から見てもとても魅力的。思わず理性がぐらつく。そんな邪な心を叩き落とすように、頬を叩いた。此処でこの子を喰らえば、本末転倒だ。この禍達と大して変わりはしない。
彼女の背中と膝に腕を入れると胸元まで抱き寄せた。横抱きの状態だ。見ず知らずの男に抱えられるのは、あまり良い気分とは言えないだろう。だから例え聞こえていなくとも、謝罪をしなくては。
「ごめんなさい。暫くご辛抱なさって下さい」
――バサリっ。
巨大な鳥類のような羽を広げると、私は地面を蹴り上げた。高く高く飛翔して、立ち並ぶ家達が小さな模型のようになるまで、駆け上がる。そこで一度辺りを見回した。
この子をあんな道端で放る訳には行かない。せめて家の前まで送り届けてあげなくては。神通力を使い、彼女の気配が色濃く残る家を探す。すると一点、この子の気配と同じ家を発見した。
翼をはためかせ、急降下。あまり遠くないようで良かった。
「もう、大丈夫」
冷たい地面に降ろすのは可哀想だが、私がしてあげられるのは此処まで。そっと少女の体躯を降ろし、出来るだけ優しい声で伝えた。
影響を受けたのは、海外の恋愛小説。
こういった恋愛もあるんだ!!
と思っていた時代が懐かしいです。