初対面
それから数日の事である。彼が隣に越してきたのは。
ある日突然、隣の家に道を占領する大きなトラックが止まっていた。私の隣の家は一軒家。廃墟と言うには綺麗すぎる。そんな一軒家だった。庭も付いているが、人が居着かない為に何も植えられて居ない。そこに一人の若い男が越してきた。
運び出される数多のダンボール。そして本棚。箱の中身もほぼ本なのかも知れない。そして幾つかの家具。ソファや机など丁重に運び出されていた。
何度か登下校中に目が合って、会釈をしたことがある。間近で見た訳では無いが、品のある大人だった。
それからすぐの事である。彼と顔を合わせて話したのは。
彼は越してきた数日後に挨拶に来た。家のリビングで寝転んで漫画を捲っていると、突然インターホンが鳴った。誰だろう。
家に私しか居ない時には、居留守を使う事が多い。見ず知らずの人と話をしたくないからだ。厄介な勧誘など受けたら追い返すのだって一苦労。だから今回もそうやって無視を決め込もうとしていた。
またインターホンが鳴る。二度目ともなると流石に気になって、カメラ越しに確認してみる。現れたのは隣に越してきた男性。確か家の表札には『崇島』と記載されていた。
ご近所さんを追い返す訳にもいかず、恐る恐る玄関を開けると、彼は黙ってそこに立っていた。私の姿を確認すると、顔を綻ばせて笑顔を浮かべた。
「こんにちは。隣に越してきた崇島です。これからお世話になります」
常にニコニコ崇島さん。
性格も優しさよりも品に重きを置いてます。