社への回帰
ある日、鏡の前で自分の顔を見詰めると思わず絶句した。昨日と比較して明らかに髪が伸びている。幸い、庭に植えた藤袴が魔除の効果を保っているのか、何時もよりも抑制されていた。お陰で前までは肩より少し上程度だったものが、今は肩甲骨の辺りまで。だが油断は出来なかった。
.......月蝕が近い。霊力が何時もより強くなって、自分で制御下に置けていない。このままではいけない。観察眼の鋭い人ならば、すぐにでも異変に気が付くだろう。
だから私は洗面台の上にあった剃刀を握る。乱暴に後ろ髪を纏めあげ、そのまま刃を入れる。左右に振るほど悲鳴を上げ、切られる事を拒んでいるようだった。それでも止めることなく、切り落とした。残るのはひと房の髪。私から千切られた毛の束。
思わず溜息を着いた。髪を長く伸ばしていると辛い過去を思い出す。自分の気持ちを理解されず、六道に戻ることを辞めたあの日。ただただ悲しくて、怒りが込み上げて、世を呪ったこと。
その思いから断ち切る為に、現在は少々乱暴な手つきで切り離して居るのに、何故こんなにも苦しいのだろう。
私は髪の束を握り締めると、脱衣所を後にした。居間のソファに腰を掛けると、ゆっくりと目を閉ざす。微睡むように意識を霞ませると、目に入るのは馴染みの境内。どうやら正常に繋がったようだ。
この六道ネタは完全にオリジナル。
そしてざんばら髪の理由です。
感の良い方は、とある方を思い浮かべてそうです。




