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転生(?)初日

閲覧注意です。

さて、結局わたしは別世界に転移し、人類の敵となることを引き受けたわけだ。


さしあたり重要なこととしては、ダンジョン構築のいろはやこの世界の常識を知らないわたしのために、専属のナビゲーターがつくことになった。なぜかスマホのメッセージアプリの形式で。

あの管理者といいこのナビゲーターといいなぜこのメッセージアプリの形式にこだわるのだろうか。趣味か?


ちなみに些事ではあるが、娯楽のない生活は退屈で死んでしまうとごねた結果、生前わたしが愛用していたそこそこいいヘッドホンと、(一部アクセス制限が設定されているらしいが)ネットへの接続権をせしめることに成功した。これらの維持費用はダンジョンの核からの支払いとなったが。

なにせ音楽は入院していたわたしの暇を潰す最後の砦だったのだ。これは譲るわけにはいかなかった。


現状把握。

今手元にあるのがダンジョンの核らしい。

核の見た目はこぶし大ほどの透明なクリスタル?結晶?のようなものだ。

触ってみると、核がひとりでに空中に浮き、核から光が投射され、部屋の白い壁をスクリーン代わりにして現在のダンジョンの簡易的なマップ、および右側に

「〇:0 / □:5 / ◆:25 / BE:494 / G:1000」

という謎の数値を映し出した。

映像によるとこのダンジョンは3階層からなり、現在はそれぞれの階層にゴブリンやバットといったいかにも雑魚っぽい魔物のデフォルメされたイラストが数個存在するのみで、ほかに何ら表示はない。

また、表示されるのみで具体的な操作方法はわからない。


仕方がないのでナビゲーターに聞くことにした。


「核の操作方法がわからない」


Nナビゲーター:「ダンジョンの設定・増改築についてのチュートリアルを開始します。


N:「まずは核に触れ続け、映像の枠が黄色くなる編集待機状態にしてください。この状態では、思考することでダンジョンの構築の編集・保存が可能になります。


N:「魔物をダンジョン内に配置するには、ダンジョンの地図の下部に表示される所持魔物のアイコンから配置したい魔物を選び、ドラッグ&ドロップしてください。通常のサイズの一つの部屋には最大5匹までの魔物を配置できます。所持魔物がない場合には下部には表示されません。

魔物の生成方法については別途お尋ねください。


N:「罠を設置する場合には、BEまたはそれに代わる木材/石材(□)・金属資源(◆)を消費して罠を作成する必要があります。罠を設置する場合には表示されるリストから設置したい罠を選択して作成し、次に設置したい部屋を選ぶことで設置が可能です。

罠は通常一つの部屋に一つまで設置できます。部屋の間の罠の入れ替え、および設置した罠を資材・資金(G)を用いて強化することが可能です。

すでに罠を設置済みの部屋に罠を新たに設置する場合、新たに設置する罠へ上書きされることになり、強化値も引き継がれます。現在は罠を作成後必ずどこかの部屋に設置する必要があります。罠を撤去することも可能ですが、その場合使用した資材は返還されません。

罠が破壊された場合でも、資材を消費せずとも時間経過により自動的に罠が修理されます。


N:「ダンジョンの部屋の数・階層の数に変更を加える場合にはもう一度核に長く触れ、映像の枠が赤くなる階層変更状態にしてください。この状態でBEを消費することで新たに部屋の追加・階層の追加をすることができます。


N:「編集が完了しましたら保存と念じてください。保存することによってダンジョン構築の変更が即座に完了します。


以上でチュートリアルを終了します。」


なるほど。使いやすそうかな?


では肝心の質問をしようか。


「核は動かせるか?」


N:「現在の部屋から動かすことは不可能です。」


「核が移動した場合は?」


N:「何らかの事故や外的要因により核がダンジョン外部に破壊されることなく持ち出された場合、その時点でダンジョンは消失し、マスターへのBEの供給が停止され、マスターが新たにダンジョンの核を操作し新規ダンジョンを立ち上げない限り、72時間後に気絶し、やがて死亡します。」


直ちに死ぬわけではないと。なら可能性がある。


じゃあやってみるか。

わたしが死なないためにも。


おっと最後にこれも聞いておくべきか。


「武器の作成方法は?」


N:「核を操作し編集待機状態にしたのち、□または◆のメニューを展開してください。

木材または金属資源を用いて武器や防具を作成することができます。」


ほうほう。

わたしは核に触れ、武器の作成を選んだ。


―――――――――――――――

▽現在作成可能な武器

・木剣

・石剣

・ダガー(鉄)

・片手剣(鉄)


・槍(木)

・槍(鉄)


・メイス(石)

・メイス(鉄)


・弓(木)


・杖(木)

・杖(石)

―――――――――――――――


そしてダガーを選ぶ。

すると「粗悪/劣/並」の3つの中から品質を選ぶ必要があるようだ。並を選ぶと◆1につき3本のダガーが作れるらしい。それよりも品質の劣るものを選ぶと作ることのできる本数が◆1につき4本、5本と増えるようだ。代わりに鉄の品質が落ちるのだろう。

ここで品質の悪いものを選ぶ理由もないので並を選ぶ。すると核から装飾のないダガーが3本落ちてきた。刃渡り30センチほど、よく切れそうなダガーだ。


さて、わたしがこれからやろうとしていることの準備が整った。いや、整ってしまったというべきか。

向こうの世界では日常的に感じていたこととはいえ、この世界、この体においては初めてのことだ。


わたしは覚悟を決めると、着ているシャツを脱いでねじって布の轡としてそれを噛んだ。

そして右手にダガーを1本、左手に今なお光っているダンジョンの核を握ると、


心臓や重要な血管を傷つけないよう慎重に、しかし思い切りダガーを右胸に突き刺した。


「ーーーーーーーーーーーっっっつ!!!!」


右胸に激痛が走る。そして体の中に刃が存在するというぬぐえぬ異物感も。悲鳴を上げそうになるのを轡を噛んでこらえた。

痛みのあまり気絶しそうになるが、まだ気を失うわけにはいかない。

むしろ本番はこれからだ。


涙がボロボロとこぼれ、にじむ視界の中で傷口を少し広げるようにしながらダガーを引き抜く。血が噴き出すのもかまわず、そのまま左手に持っていたダンジョンの核を傷口にねじ込んだ。


再び走る激痛。


線状の傷口に厚みのある核をねじ込むわけだから当然すんなりと入るわけもなく、無理やり傷口を広げるようにするほかなかった。


吹き出す血にまみれ、滑りそうになるも、しっかりと核を握りなおし、ねじ込み、大胸筋を押しのけ、肋骨を押し広げながら、やがてこぶし大ほどのダンジョンの核を全て体内に押し込めることに成功した。


客観的には1分未満、主観的には数時間にわたるこの乱暴な外科手術を終えたわたしは、スマホがけたたましくアラートを鳴り響かせているのを横目に、そのまま気を失った。


「わたし」がこのような奇行に走った理由は次回。

お読みいただきありがとうございます。


2021/8/14 核が移動した場合の説明を少しだけ修正しました

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