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『ビストロ KONISHI』


木製の扉。すぐ隣にはイーゼルにのせられた黒板。

準備中の小さな札が申し訳なさげにぶら下がっていた。


取っ手に手をかけ、扉を開ける。

勝手に入っていいのか迷ったけど、見たところお店にはインターホンはない。

ノックしたところで中に聞こえるかどうかもあやしい。


「こんにちわ〜。」


重い扉を開けると、合図のようにカランカランと音がした。


「いらっしゃい。」

カウンターから小西さんが顔を出した。

「こんにちわ。」

「よく来たね。もうちょっとで終わるから、そこにかわいらしく座ってて。」


カウンターの向こうはキッチン。

おいしそうな煮込み料理の湯気…。

小西さんは手際よく、何かを刻んでいるようだ。

それにしてもかわいらしくって…。


「で、具合はどう?今日はマシだけど、やっぱり顔色悪いんじゃない?」

「元気ですよ〜。顔色は昔からこんな感じなんです。」

「そっか。」

「あ、これ。この前のお礼って言うか…。」

カウンターに小さな赤い紙袋を置く。

袋には金色の文字でお店の名前と犬のイラストがついている。


手土産は結局、お気に入りのお店で買った。

たっぷりのナッツにキャラメルのかかった焼き菓子。

小西さんの好みはわからないけど、お店にはデザート的なスイーツがあるだろうから。

焼き菓子は無いだろうな〜っと。


「いや〜。そんな気を使わなくてもよかったのに。もう終わるから。そっちで一緒にお茶しよう。」

小西さんがテーブル席の方を指差していった。


それじゃあっと移動しようとした時、

「…!」

やばい。お店の湯気と匂い…。

なんか気持ち悪い…。


荷物を全部置いたまま、トイレの方へ走る。

片手でちからいっぱい口をふさいで。


トイレに駆け込んだ。


吐き気はあってもさして吐くものが無い。

体の変化は、どうしてこんなに苦しい思いをさせるのだろうか。


トイレから出ると、小西さんがタオルを持って立っていた。

「のんちゃん…。妊娠してるんじゃないの…。」

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