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「センターに問い合わせてみよう。」
そう思って作業してみたけど、結果は変わらなかった。
『0件』
あぁ。これで本当にひとり。
何もかもひとりで決めなくちゃいけないし、ひとりで何でも決められる。
最初からそのつもりだったんだから、大丈夫。
これからの事をゆっくり考えよう。
薄くてぬるいコーヒー。
ひとくち含んで、飲み下す。
用も無いのに、携帯の電話帳から名前を探す。
『佐藤 恭一』
佐藤くん。そんな薄情な人には見えなかったのになぁ。
私には、男を見る目がなかったってことかぁ。
…そこだけちょっとショックかも。
バッグから手帳を取り出す。
マンスリーの手帳で、1ヶ月分が見開きになっているものだ。
私はあまり細かく書き込むタイプでは無いが、妊娠がわかってからは書き込む事が増えた。
これからはひとりで、子供を産み育てなくてはならない。
しっかりとした計画を立てなくては。
妊娠がわかった時、私には2つの選択肢があった。
当然、片方を選ぶつもりでいた。
もう片方など、選ぶわけがないと。
私は生涯ひとりでいようと決めていた。
結婚生活に憧れが無いわけではなかったけど。
損得を天秤にかけたら圧倒的ないきおいで、天秤は傾いた。
他人にとってはどうだか知らないけど。
得の部分を考えても、それは精神的なもので本当に得かどうかはあやしい。
だから子供なんて考えてもみなかった。
だけど…。
私は産むことに決めた。
無責任だと言われようと。