表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/30

4

翌朝。


カーテンの隙間から射す日差しが心地よくて、窓を開けた。

ふうわり、ふわり。

秋風がカーテンを揺らす。

涼しげな風がすっぴんの肌を撫で、私の長過ぎる髪を通り抜けた。


「気持ちい〜っ。」

思いっきり腕を伸ばし、大きく背伸びをする。


昨日は小西さんのお店から帰って、夜を待たずにそのまま寝てしまった。

長い睡眠時間のおかげで、心身ともにスッキリしたようだ。


冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出す。

マグカップに半分注ぎ、やかんにも注ぐ。

最近どうも、体が水道水を受け付けない。

やかんを火にかけ、マグカップのミネラルウォーターをゆっくり飲む。

カラになったマグカップにインスタントコーヒーをいれ、やかんのお湯を注ぐ。

『コーヒーは妊婦に良くない』

そんな話を以前どこかで聞いたような気がして、大好きなコーヒーは薄め。

猫舌だからお湯も完全には沸騰させない。


ベッド、小さなローテーブル、奥行きのじゃまな古いテレビ。

一人暮らしの小さな部屋には必要なものしか置いていない。

『いるものといらないもの。』

その区別ができれば、お金も物もたいして必要ないのかもしれない。

洋服だって、本当に自分に似合うものはそんなにたくさんは無いのだから。

コーヒーをひとくち飲み、マグカップをテーブルに置いた。

「パンも食べようかなぁ」


冷蔵庫の横には白いカラーボックスに扉を付け改造したボックスが置いてあり、『食』に関係のあるものは全てそこにいれてある。

私はそこからクロワッサンを取り出し、冷蔵庫からバターを取り出す。

あらかじめ薄くカットしておいたバターを、クロワッサンに挟む。


「絶対カロリーオーバーだよね。」


カサカサとしたクロワッサン。

冷たくて少し硬いバター。

私はバターが好きだ。

本当はチーズみたいに食べてみたいけれど、それをやってしまうのは何だかタブーな気がする。

だからしょうがなくパンと一緒に食べる。

割り合いは一般的ではないけれど。


ベッドを背もたれに、テーブルの前に座る。

ぬるくて薄いコーヒー。

しっかりとバターの挟まれたクロワッサン。

風は、相変わらず窓から吹き込みふうわりとカーテンが揺れていた。


ふと、伸ばした手。

指先に何かが触れた。


バッグ。


昨日、帰ってから手付かずのまま。

電源を切ったままの携帯が眠っている。


多分、佐藤くんからの着信とメール。

見たくないけど、気になる。


バッグから取り出す。

電源の切れた携帯はいつもより存在感を増している。

PWRのボタンを長めに押す。


急に色を取り戻す画面。

『HELLO』


私は我が目を疑った。


着信どころか、メールすら届いていなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ