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「のんちゃん。僕との結婚、考えてくれてる?」
「えっ!」
それ冗談でしょ。
「僕は本気だよ。」
小西さんは笑ってなかった。
「なんか、違うと思います。小西さんは私にはもったいない人だと思うし。それに…。」
「それに?」
「良い条件とかなんか…。そういう事で決めるのは失礼だと…。」
「じゃあ、なんで佐藤くんは最初からダメだと決め付けたの?佐藤くんの話を少しでも聞いた?佐藤くんのことも条件で決めたんじゃないの?」
なんで。
この人は、こうも簡単に人の事を見破ってしまうのだろうか。
ぼんやりとした天井を見上げる。
泣きそうな気分だ。
今まで誰にも言わなかった事を、今日はしゃべり過ぎている。
気を張りすぎて目が痛い。
深く深呼吸をする。
もうここまでしゃべったのなら、全部しゃべったようなものだ。
「私、きっと佐藤くんの事が好きなんだと思います。大学に入って、恋愛とか避けていたのに。佐藤くんは多分、特別だったんです。」
「だったら…。」
優しい佐藤くん。
ハウスメーカーの白い家。
次男坊。
「佐藤くんのお家ってね。ヒロの実家とよく似てたの。次男だしね。佐藤くん優しいから、お母さんも佐藤くんの事をすごく思っているよ。きっと。」
…ヒロのお母さんみたいに。
小西さんが近づいてきた。
私の頭に手を伸ばし…。
「子供のくせにごちゃごちゃ悩むなよー!」
「いやー!」
髪の毛をぐしゃぐしゃにされた…。
「何でもひとりで不幸、不幸ってしょって生きていかないの!前しかないんだから、前を向きなさい。佐藤くんが好きならちゃんと話し合いなさい!」
「だって…。」
「だって?」
小西さんは腕組みをしてこっちを見ている。
なんか、怒られてるみたい。
「髪の毛ぐしゃぐしゃだし…。佐藤くん…。」
「何?」
「…全然。連絡。くれないし…。」
あの日、別れて以来何の連絡もない。
「あ…。言うの忘れてたんだけど。のんちゃんと初めて合った日、佐藤くんここに来たよ。」