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「その後の高校生活を、ほとんどひとりで過ごしたの。すごいでしょ?お弁当だって屋上とか、誰もいない所でゆっくり食べてたの。ヒロはずっと心配してくれていたんだけど…。迷惑かかっちゃうの、嫌だから…。」
友達だった人達のことは、もう恨んでいない。
きっとどうすればいいか、わからなかっただけだったんだ。
受験も重なって、みんな余裕がなかっただけだと。
「だから。私はひとりでも大丈夫なの。」
笑顔でそう言った。
「のんちゃん。」
小西さんが口を開いた。
「僕と結婚してくれないか。」
こんな時にこんな冗談。
笑わそうとしてるの?
「僕の周りには、のんちゃんの過去をとやかく言うような人間はいないよ。両親だってもう他界しているからね。」
「そんな冗談…。」
小西さんの顔は笑っていなかった。
「僕も、もういい年だからね。30歳過ぎた大人は、付き合った年数なんか気にしてたら結婚できないよ。」
小西さんと結婚。
「いい条件だと思うよ。うるさい親もいないし、ちゃんと働いてるし。何より産まれてくる子供に父親ができる。」
小西さんは良い人だし。
そこそこカッコイイ。
何の心配も無く子供が産める…。
良い条件かもしれない。
なんて…。
ねぇ、佐藤くん。
小西さんからのプロポーズ。
どうして私の心は揺れてしまうのだろう?
佐藤くんと小西さん。
良い条件って?
私は何を考えて…。
小西さんを見る。
「のんちゃん。わかった?そういう事でしょ。きみがこだわっているのは。」