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『秘密』


自分のは知られたくないのに。

ひとの秘密はどうしてこんなに…。


小西さんはきっと私の秘密を知っている。

秘密を知った人はもっと知りたくなる。


興味本位。

好奇の目。


結局、私も同じなんだ。

秘密の2文字に惹かれてやってきた。


重い扉。

開く前に深呼吸。


カランカラン。

いつもの音が鳴る。


「いらっしゃい。」


笑顔の小西さん。

でも、今日は何かが違ってみえる。

Tシャツにストライプのシャツをはおった、ラフな服装。

私服の小西さん。

今日はテーブルに座っていた。

私は手招きに応じて、向かいの席に座った。


「何だか今日の小西さん。女の敵みたい。」

「なんだ?それ。」

「ちょっと優しくてカッコイイけど、二股とか何股かかけて平気みたいな?」


嘘ついても平気みたいな…。


「ははっ。のんちゃん言うね〜。でも、僕は二股どころか彼女もいないよ。それに嘘はつかないよ。今回の事は偶然。」

「だってヒロの事知ってたじゃん。」

「あれはこの店の常連だよ。深夜にやってきては愚痴をこぼしていく…。まぁ良い奴だよ。」


小西さんの手が伸びる。


「のんちゃんとヒロが幼馴染みで良かった。」


ポンポンと頭を撫でられた。


「…小西さん。ヒロから聞いてるよねぇ…。」

「ん?」

「だから…。」

「お姉さん。亡くなってたんだね。」

「うん…。」

「でもそれはお姉さんの人生で、のんちゃんはのんちゃんだよ。」

「でも…。」


深くため息をついた。

感情的になりたくはなかった。


「姉は、人の好意は当たり前だと思うような人だったの。」


色白で病気勝ち。

大きな目と通った鼻筋。


「機嫌が悪くなると熱を出したり、喘息の発作のふりしたり。両親はいつもかかりっきりで、私はいつもひとりで遊んでたの。」


夕方になっても誰も迎えに来なくて、家に帰ってもだれもいなくて。

ぼんやり空を眺めていた事もあった。

両親は発作をおこした姉さんの病院に行ってて、私のことを忘れていた。


「夕方は退屈しないの。空を見てたらどんどん景色が変わっていくから。」


綺麗な夕焼け。

忍び寄る暗闇。


「でも、友達もいたから寂しくなかったよ。カワイイお姉ちゃんでうらやましいって。」

「のんちゃんもカワイイじゃないか。」

「あの頃は、髪も短くて日焼けしてたの。健康的な子供ってかんじで。」


活発な明るい女の子だった、外では。


「姉妹の仲は悪くなかったの。だって家は一緒でも、生活は別々だったの。姉はいつも部屋にいたし、食事も太りたくないってほとんど食べてなかったの。食卓を囲む事もなくって、いつも母さんが食事とかお菓子とか運んでたもの。」


わがままなお姫様。


「姉さんはずっとキレイ、カワイイって言われてモテてたの。でも、誰とも付き合わなかった。結局、最初にできた彼氏が、最後の彼氏になっちゃったんだけど。」


姉さんは、あの男の何がそんなに好きだったんだろう?

『須藤先輩。』

姉を男にしたような美人な男。

2人が歩く姿は、人目を惹くほどだった。

薄桃色の唇、小さなほくろ。

あれはきっと悪い男のしるしだ。


「ふたりがどんな風につきあっていたのか、どんな風に別れたのか私は知らない。でも、姉さんにとっては初めての挫折だった。思い通りにはならなかったの。そこから姉さんは…。」


「おかしくなっていったの。」


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