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泣き疲れて、眠ってしまったみたいだ。

時計の針がさっきよりも、進んでしまっている。

洗面所に向かう。

顔を洗ってしっかりしなければ。

鏡に顔を映す。

青白くてとがった顔。

あの頃にようちゃんみたいだ。


顔を洗おう。


私はようちゃんとは違う。

亡霊の面影。

早く洗い流してしまいたい。


「お腹大きくならないかなぁ。」


早くお腹が大きくなればいいのに。

妊婦さんは誰も幸せそうだもの。


「何か食べよう。2人分食べなきゃ。」


キッチンに置かれたままの赤い紙袋。

りんごとグレープフルーツ。

グレープフルーツを取り出す。

ナイフで半分に切って、お皿にのせる。


テレビをつけてグレープフルーツを食べる。

しゃくしゃくスプーンですくうと、柑橘類のすっぱい香り。

苦くてすっぱくて、瑞々しい。


小西さんはどうしてこうも気が利くのかしら?


「あー。」


お皿を置いて携帯電話を取り出す。

今日こそ電話しなくては。


お店はまだオープン前だ。


番号を入力してボタンを押す。

コール音が聞こえてきた。

5コール目で小西さんに繋がった。


小西さんにフルーツのお礼と、手短に忘れ物の話をした。

「…えっ!!」


カメラの忘れ物の有無。

それが知りたかったのに、返ってきた答えはそのどちらでもなかった。


カメラは確かに、小西さんのお店に忘れていた。

でも、カメラはそこには無い。


カメラは小西さんが持ち主に返していた。


小西さんはカメラが誰の物か知っていた。


カメラの持ち主は小西さんの店の常連さん。


つまり、小西さんとヒロは知り合いだった。


しかも、今回の事でヒロと私の関係もバレてしまった。


電話の向こうで声がする。


「のんちゃん。僕は、まだきみに言わなきゃいけない事があるんだ。きみに秘密があるように、僕にも秘密があるよ。そして、きみの彼氏にもね。」


声が続く。


「ねぇ。のんちゃん。知りたくないかい?彼氏の秘密。明日は店が定休日なんだ。でも、のんちゃんの為に特別あけておくよ。何も知らないで逃げるより、全て知ってから逃げても遅くないだろ?」


辛うじて、返事ができた。


秘密。


自分の秘密は知られたくなかったのに、人の秘密は知りたい。

「…矛盾してる。」


秘密という誘惑には勝てない。


明日の約束。


私は間違いなく行くだろう。


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